債権譲渡とは?対抗要件や通知書、ひな形の入手先と作り方、債権譲渡登記制度の概要から譲渡までの流れ
この記事では、上記のような疑問・お悩みを解決します。
債権譲渡とは、債権者が持つ債権を第三者に譲渡することです。
債権者にはその権利がありますが、債務者が知らないまま不利益になる恐れもあります。
そうならないために、譲渡人は債務者に対して債権譲渡の旨を通知しなければなりません。
契約書ではないものの、重要な書類となる債権譲渡通知書の作成は十分に注意する必要があります。
そこで今回は、債権譲渡の流れや通知書作り方、対抗要件や債権譲渡登記制度の概要について詳しく解説していきます。
債権譲渡はどんな時に有効なのか知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
- 第三者に債権を譲り渡すこと
- 債権の回収方法が増え期間も短くて済むメリットがある
- 第三債務者と第三者への対抗要件を取得しなければならない
- 債務者に対抗するためには債権譲渡通知書を送付する必要がある
目次
債権譲渡とは?債権を第三者に譲る行為のこと
債権譲渡とは、簡単にいうと「債権者が持っている債権を第三者に譲る行為」のことです。
例えば、自社がA社に対して売った商品の代金が未回収だったとします。
この時、A社に対する売掛金を持っていると仮定すると、A社は自社にとっての債務者となります。
さらに、A社は取引先のB社に対してお金を貸しつけており、賃金債権を持っていると仮定します。
自社は、A社から売掛金の回収をしなければなりませんが、A社が資金不足に陥っている場合には、直接回収することができません。
このような際に、A社がB社に対して持っている賃金債権を譲り受けることで、自社はB社に対して取り立てを行うことができます。
この行為を債権譲渡と呼び、債権者側から見ると直接取引を行っていない第三者が債務の弁済相手になります。
一般的に債権譲渡は、企業が債権を回収する方法として広く用いられており、譲渡する側から見れば資金繰りが大変な時には非常に大きな助けとなる制度です。
ただし、債権譲渡をする際には、内容を変えることなくそのまま譲らなければならない点には注意してください。
債権譲渡通知書とは?債権者が変更された旨を債務者に通知する書類
債権譲渡通知書とは、債権者が変更された旨を債務者に通知する書類のことです。
譲渡した人は、債権を譲渡したことを債務者に通知しなければ、債務者に対抗はできません。
さらに、証書によって通知をしなければ、債務者以外の第三者に対抗できないとも明記されています。
通知をしっかりと行うことは、債務者に対して新たな債権者を認識させる役割があるだけでなく、債務者が二重弁済する危険を回避するための意味もあります。
債権譲渡通知書に印紙税は不要
契約書などを交わす際には印紙税がかかることが多いですが、 債権譲渡通知書では印紙税は不要です。
なぜなら、債権が譲渡されたことを債務者へ報告する通知書であり、新たに契約が交わされる書類などではないからです。
ただし、譲渡する側とされる側では新たな契約が交わされるため、債権譲渡契約書には印紙税が必要なのでその点には注意してください。
債権譲渡通知書は確定日付のある証書で送る
債権譲渡通知書は、確定日付のある証書で送らなければなりません。
確定日付のある証書とは、郵便局が扱う内容証明郵便や公証役場で公証人が日付印を捺印した文書のことです。
公的な立場の第三者が、確定された日に書類がしっかりと存在していたことを証明する書類のため、仮に債権の二重譲渡が行われていても対処できます。
また、債権譲渡通知書は譲渡人が債務者に対して出す必要があります。
その理由は、関係のない譲渡人から通知がきても債務者はその内容が本当かどうかわからないからです。
ただし、譲渡人から委任された場合もあり、譲受人が譲渡人の代理として通知を出すケースもあるので注意してください。
債権譲渡通知書のひな形はどこで入手できる?
債権譲渡通知書のひな形は、インターネット上で入手できます。
例えば「Moneyforward」や「マイ法務」などでダウンロードが可能です。
また、 債権譲渡通知では譲渡の目的となった債権を特定しなければなりません。
債権は、利息・担保付きの場合であったり、一部返済済みの場合だったりとさまざまなケースが考えられます。
譲渡債権の内容次第では、今回ご紹介したひな形の入手先では記載内容が不足している可能性もあるので注意してください。
また、債権の性質上、扶養請求権などの譲渡ができないものもあります。
債権譲渡通知を作成する際には、一度専門家に相談しておくと安心です。
債権譲渡通知書の作り方
債権譲渡通知書は契約書ではありませんが、債務者へ対抗要件を取得したことを証明するための大切な書類です。
公的な書類としてしっかり提示できるように、押さえておくべきポイントが4つあります。
・内容は、手書きでもパソコンでも可能
・住所、署名は自筆にする
・押印は実印で行う
また、一般的には以下のような内容を含めて作成します。
- 譲渡した事実
- 譲渡人の氏名
- 譲渡する債権
- 譲受人の氏名
- 日付
特に、譲渡された債権に関しては、 債権額や契約内容、種類、債権が発生した期日など詳細に記載し、なるべく債権が特定できるようにしてください。
通知は、法的効力は発生せず一定の事実を相手に伝えるものですが、準法律行為である「観念の通知」として認識されています。
債権を譲り受ける譲受人にとっては、債権譲渡通知書の作成は非常に重要な書類です。
債権譲渡登記制度とは
債権譲渡登記制度とは、債権が譲渡された記録を登記する制度のことです。
法人がする金銭債権の譲渡や金銭債権を目的とした登記により、債権譲渡の第三者への対抗要件を備えることができます。
つまり、債権譲渡の登記が完了したということは、第三者への対抗要件を取得したことになるのです。
そのため、わざわざ内容証明郵便を利用する必要はありません。
債権譲渡登記制度を利用する場合は、対象となるのが金銭債権の譲渡に限る点や、登記の登録免許税が1件あたり7,500円かかる点などに注意が必要です。
債権譲渡のメリット
債権譲渡にはさまざまなメリットがあり、債権回収によく用いられている制度です。
債権譲渡を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
- 債権の回収方法が増える
- 債権回収までの期間が短くなる
- 担保があれば取引先が破産しても支払いを受け取れる
債権の回収方法が増える
債権譲渡の一番のメリットといえるのが、債権の回収方法が増えることです。
債権の回収は非常に難しく、取引先が常に資金を十分に確保しているとは限りません。
取引先の資金繰りが大変になると、支払いの督促を行なったり、内容証明郵便で請求書を送付したりすることにもなります。
催促をしても支払いが滞るようであれば、訴訟を起こして強制執行となってしまうケースもあるのです。
最終的にこのようなケースになると、膨大な手間と費用がかかるだけでなく、相手先に資産がなければ金銭を受け取ることすらできなくなってしまいます。
債権譲渡を受けることができれば、取引先以外の第三債務者に取り立てることが可能です。
経営状態がより良い企業から債権の回収ができるようになり、債務者にしか催促できない状況よりも債権回収できる可能性が高くなります。
債権回収までの期間が短くなる
取引先の資金繰りが大変になってくると、支払いを待ってほしいと滞りがちになります。
このような依頼には、第三債務者から入金があるまで待って欲しい、という意味合いが込められているケースであることが多いです。
ただし、第三債務者から支払いがあっても、すぐに自社の弁済に充ててくれるかどうかは保証できません。
資金繰りに苦しむ会社の多くは、たくさんの取り立てを受けていることが多く、ほかの業者へ先に支払いをする可能性もあるからです。
債権譲渡を行なった場合には、自社への支払いが後回しにされても直接第三債務者へ請求することができ、債権回収までの期間が短くなります。
そのため、取引先に取り立てをするよりもスムーズな回収が可能です。
担保があれば取引先が破産しても支払いを受け取れる
仮に、取引先が破産してしまっても担保があれば支払いを受け取ることができます。
取引先の破産は、経営者にとって非常に大きなリスクとなり、支払いを受けることができなくなるケースが多いです。
そのため、相手に破産されてしまったら終わりだというのがビジネス上の基本的なルールと考えられています。
ただし、 事前に取引先の債権を担保にとっていれば、自社から第三債務者に直接債権を回収することが可能です。
取引先の破産は最大のリスクですが、債権譲渡をすることで回避できるため非常に大きなメリットのひとつといえます。
とはいえ、取引先の破産申立が迫っているような段階で債権譲渡をすると否認される可能性も十分にあります。
債権譲渡担保の取引は、あらかじめ準備しておくことが必要であり、債権を回収したいと思ってもすぐに手続きが行えるわけでないので注意してください。
債権譲渡のデメリット・注意点
債権譲渡はメリットばかりではありません。
デメリットや注意点もあるので、しっかりと確認しておいてください。
- 二重譲渡にならないかチェックする
- 債権譲渡禁止特約がないか確認する
- 弁済済みの債権ではないかの確認
- 時効は迎えていないか
二重譲渡にならないかチェックする
債権が二重譲渡ではないかどうかを確認してください。
取引先が自社以外にも債権譲渡を行なっている可能性もゼロではありません。
もしも、 二重譲渡である場合には、先に第三者対抗要件を取得した方が優先になるというルールが設けられています。
自社への譲渡については、他社よりも早い日付を獲得できるかどうかが大きなポイントです。
そのため、早い段階で譲渡内容を確認することをおすすめします。
債権譲渡禁止特約がないか確認する
取引先と第三債務者との間に、債権譲渡禁止特約が交わされていないかもチェックしてください。
債権譲渡禁止特約があっても債権譲渡が可能なケースもありますが、不可能なケースもあるため前もって確認しておくと安心です。
弁済済みの債権ではないかの確認
債権譲渡を行うのであれば、弁済済みの債権ではないか確認しておくことも重要です。
もしも、弁済されている債権を譲渡されてしまった場合、債権自体が消滅しているため債務者に支払いの義務はなくこちらからは取り立てもできません。
このような事態にならないように、可能な限り債務者と譲渡人の取引内容をしっかりと確認しておいてください。
時効は迎えていないか
債権には時効があり、過ぎてしまうと返済義務がなくなってしまいます。
債権譲渡を行う際には、時効を迎えていないかもしっかりと確認してください。
債務の内容にもよりますが、原則として5年以内に消滅します。
第三債務者から時効による消滅を主張された場合、債権回収はできません。
債権譲渡を行う際には、いつ債権が発生したのか、その後と取り立て状況など時効に関する事項を確認することが重要です。
また、 債権譲渡をスムーズに進めるために、状況によっては債権の時効を中断することも可能です。
内容証明郵便で催促の書類を郵送することもできますが、裁判所を介して請求する方法が一番確実といえます。
ただし、裁判所に申立を行なった時点で時効の消滅期間は中断されますが、手続きが不成立となった場合、時効の延長はされませんので注意してください。
債権譲渡の流れ
債権譲渡を行う流れについて、3つのステップで解説します。
債権譲渡の流れがよくわからないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
STEP1債権譲渡契約の締結
まずは、債権譲渡契約の締結を行います。
自社の取引相手である「譲渡人」と自社の「譲受人」同士が合意した上で、契約を結ばなければなりません。
そのためには、当人の利益や権利を守るための書類である契約書をしっかりと作成する必要があります。
効力を発揮するためには法的な問題点にも十分に考慮しなければならないため、作成は専門家に依頼すると安心です。
STEP2 第三債務者へ対抗要件の取得を行う
原則として、債権譲渡契約は譲渡人と譲受人の間だけで有効だということに注意してください。
したがって、いくら譲渡人と譲受人だけでしっかりとした契約を締結しても、第三者債務者には関係がなく第三債務者への取り立てはできないことになっています。
そのため、 譲受人が確実に債権回収するためには、第三債務者への対抗要件を取得しなければなりません。
譲受人が取立権限をもっていると主張するためには、債務者への対抗要件は重要な条件のひとつです。
第三債務者への対抗要件を備える方法は以下の2つです。
STEP3 第三者へ対抗要件の取得を行う
最後に、第三債務者だけでなく、第三者への対抗要件も取得しなければなりません。
債権は目に見えるものではないため、支払いに困った取引先が自社以外にも同じように債権譲渡の提案をしているケースもあるからです。
第三債務者に対して取り立てする権利を、一体誰がもっているのかを証明するためには、第三者への対抗要件を取得する必要があります。
第三者への対抗要件を取得する方法は以下の2つです。
取得方法は2つあるものの、 債権譲渡登記制度は担保目的で利用されることが多いのが現状です。
そのため、債権を回収する場合には内容証明郵便を送付する方が一般的といえます。
債権譲渡のまとめ
債権譲渡は、債権者が持つ債権を第三者に譲渡することで債権者と譲受人との間で契約が成立します。
しかし、債務者を保護するという観点からも、債権者は債務者に譲渡したことを通知しなければ債務者に対抗することはできません。
そのためには、 確定日付のある証書で債権譲渡通知書を作成することが重要です。
債権譲渡にはメリットも多くあり、会社が債権を回収する方法として広く用いられています。
しかし、譲渡を行うためにはいくつかの手順を踏まなければならず、譲渡人は法人に限られるなどの注意点も確認しておくことが重要です。
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