人材確保等促進税制とは?所得拡大促進税制との違いや国税庁の別表、気になるQ&Aをわかりやすく解説
この記事では、上記のような疑問や悩みを解決します。
人材確保等促進税制とは、 企業が新卒や中途採用などで新しい人材を外部から雇用したり、雇用した従業員の育成のために行なう積極的に投資を推進することを目的とした税制 です。
これらの取り組みを行った企業は、 法人税や所得税の控除を受けることができます 。
人材確保等促進税制を適用すれば、 支払うべき法人税や所得税などを減らることができるため、効果的に節税を行なうことが可能 です。
この記事では、人材確保等促進税制について、わかりやすく解説していきます。
この記事を読むことで、人材確保等促進税制がどのような税制度であるのかを理解できるようになり、所得拡大促進税制との違いを踏まえて、 効果的な法人税及び所得税の節税ができる ようになります。
- 人材確保等促進税制は青色申告を行っている全企業が適用できる
- 人材確保等促進税制を活用することで法人税及び所得税を節税することができる
- 中小企業向け所得拡大促進税制との併用はできない
目次
法人税の税額控除が受けれる「人材確保等促進税制」とは
人材確保等促進税制とは、
新卒・中途採用による外部人材の獲得や人材育成への投資を積極的に行う企業に対して、法人税などの税額控除措置を受けられる制度
です。
簡単に言えば、人材獲得や育成に投資をしている企業は、支払う税金が少なくなる制度となっています。
もともと人材確保等促進税制は、2013年度の税制改正によって創設された「所得拡大促進税制」から発展したものです。
所得拡大促進税制は、2018年度の税制改正によって、さらに「賃上げ・投資促進税制」に改組されました。
最終的に、2021年に「人材確保等促進税制」にさらに改組されて、現在(2023年)に至っています。
人材確保等促進税制は、2021年4月1日から2023年3月31日までの間に開始する各事業年度が適用時期となりますので注意してください。
以下では、人材確保等促進税制の適用要件と税額控除について解説していきます。
人材確保等促進税制の適用要件と税額控除
人材確保等促進税制は、 青色申告書を提出する全企業が適用可能 です。
したがって、 中小企業であっても、青色申告書を提出している企業であれば、人材確保等促進税制を利用することが可能 です。
人材確保等促進税制の適用要件と税額控除額は以下の表のとおりとなっています。
適用要件 | 税額控除額 |
---|---|
通常要件:新規雇用者給与等支給額について前の年度よりも2%以上増えていること | 控除対象となっている新規雇用者給与等支給額の15%を法人税額等から控除することができます |
上乗せ要件:教育訓練費の額が前の年度よりも20%以上増えていること |
控除対象となっている新規雇用者給与等支給額の20%を法人税額等から控除することができます ※ただし税額控除の額については、法人税額等の20%が上限です |
人材確保等促進税制を適用するためには、法人税の申告の際に、確定申告書等に対して、適用額明細書と、税額控除の対象となる控除対象新規雇用者給与等支給額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細書の添付が必要となりますので注意してください。
中小企業向けの「所得拡大促進税制」とは
中小企業向けの「所得拡大促進税制」とは、
中小企業者等が、前年度より給与などを増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度
です。
2022年4月の改正以前は、この税制は所得拡大促進税制と呼ばれていて、令和2021年4月1日から2022年3月31日までの間に開始する事業年度が対象でした。
2022年度の税制改正の際に、名称が賃上げ促進税制に変更となり、2022年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する各事業年度が適用期間となっています。
なお、個人事業主については、2023年から2024年までの各年が適用期間です。
以下では、まず、令和3年度(2021年度)の所得拡大促進税制について解説し、その後、令和4年度(2022年度)から開始となった賃上げ促進税制について解説していきます。
- 令和3年度(2021年度):所得拡大促進税制(人材確保等促進税制)
- 令和4年度(2022年度):所得拡大促進税制(賃上げ促進税制)
令和3年度、改正前の所得拡大促進税制の適用要件
令和3年度(2021年度)に税制が改正されたことに伴い、所得拡大促進税制が改組されました。
もともと、所得拡大促進税制は、 企業の労働分配を促しつつ、個人の所得を拡大することで、個人の消費の活発化を目的とした税制として、平成25年度(2013年度)の税制改正で導入された ものです。
所得拡大促進税制は、導入当初、3年間の時限措置として導入された税制であったものの、平成26年度(2014年度)、平成27年度(2015年度)の税制改正によって、要件緩和が緩和されると同時に、2年間の期限延長がなされて、合計5年間の措置となりました。
その後、さらに平成30年度(2018年度)の税制改正において、さらに所得拡大促進税制が拡充されたことで3年間期限が延長されました。
これと同時に、大企業向けの賃上げ・生産性向上のための税制も導入されたことから、所得拡大促進税制は 中小企業向けの税制として残ることになりました 。
中小企業向けの税制となった所得拡大促進税制は令和3年度の税制改正時に抜本的に見直され、人材確保等促進税制へと改組されて現在に至っています。
この人材確保等促進税制(令和3年度改正前の所得拡大促進税制)は、令和3年(2021年)4月1日から令和4年(2022年)3月31日までの間に開始される各事業年度のみ適用することが可能な税制です。
適用要件と税額控除は以下の表のようにまとめることができます。
旧制度(人材確保等促進税制)の概要 | |
---|---|
適用要件(通常) | 通常要件:新規雇用者給与等支給額が前年度より2%以上増えていること |
税額控除 | 控除対象新規雇用者給与等支給額の15%を法人税額等から税額控除 |
適用要件(上乗せ) | 控除対象新規雇用者給与等支給額の15%を法人税額等から税額控除 |
税額控除 | 控除対象新規雇用者給与等支給額の20%を法人税額等から税額控除 |
なお、税額控除額は、法人税額等の20%が上限となっているので注意してください。
令和4年度の税制改正により「賃上げ促進税制」になった
上で説明した所得拡大促進税制(人材確保等促進税制)は、令和4年度(2022年度)税制改正によって新制度となり、それに伴って 名称が「賃上げ促進税制」へと変更されました 。
賃上げ促進税制の適用要件と税額控除は以下の表のようにまとめることができます。
新制度(賃上げ促進税制)の概要 | |
---|---|
適用要件(通常) | 雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加 |
税額控除 | 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額又は所得税額から控除 |
適用要件(上乗せ) |
①雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加 ②教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加 |
税額控除 |
①税額控除率を10%上乗せ ②税額控除率を15%上乗せ |
令和4年度(2022年度)の税制改正による税制改正のポイントは以下のとおりです。
- 上乗せ要件を簡素化し、控除率の引き上げ
- 教育訓練費増加要件に関する明細書が「添付義務」から「保存義務」へ
- 経営力向上要件が廃止
①に関して、旧制度(人材確保等促進税制)では25%だった控除率が、最大40%となり、上乗せ要件が簡素化されると同時に、控除率が引き上げられたことで、より多くの方が賃上げ促進税制の恩恵を受けられることになりました。
また、②に関して、令和4年度(2022年度)の税制改正によって、 確定申告時に教育訓練費の明細書を添付しなくても良くなりました 。
令和4年度(2022年度)の新制度(賃上げ促進税制)からは、教育訓練費の明細書は添付せずによくなったものの、保管する義務があるので注意してください。
なお、明細書には、実施年月(「日」については任意)、実施内容、受講者名、支払証明(領収書のコピーなど)を明記する必要があります。
最後に、③に関して、 新制度への変更に伴い、経営力向上要件が廃止 となっています。
旧制度(人材確保等促進税制)においては、適用年度の終了の日までに、中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたという証明がなされることが必要でした。
しかし、 新制度(賃上げ促進税制)と改正されてから、この経営力向上要件は廃止となり、より多くの方が適用を受けやすい環境が整備されています 。
人材確保等促進税制と所得拡大促進税制の違い
人材確保等促進税制と旧来の所得拡大促進税制は、大企業および中小企業等において、一定の要件を満たしたうえで、前年度より給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部について法人税等から税額の控除ができる制度です。
どちらの税制度も、青色申告で確定申告を行っている全企業を対象としており、法人税等から税額の控除ができる制度であるという点は変わりません 。
人材確保等促進税制と所得拡大促進税制の違いについては、以下のようにまとめることができます。
人材確保等促進税制 | 所得拡大促進税制 | |
---|---|---|
適用対象 | 青色申告書を提出する全企業 | 青色申告書を提出する全企業 |
適用期間 | 令和3年4月1日から令和5年3月31日までの期間内に開始する各事業年度 | 令和3年4月1日から令和4年3月31までの期間内に開始する事業年度 ※なお、個人事業主については、令和4年が対象です。 |
適用要件(通常) | 新規雇用者給与等支給額が前年度と比べて2%以上増えていること | 雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増えていること |
税額控除(通常) | 控除対象新規雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額又は所得税額から控除 | 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額又は所得税額から控除 |
適用要件(上乗せ) | 教育訓練費の額が、前年度より20%以上増えていること |
雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加しており、かつ次のいずれかを満たすこと ①教育訓練費が前年度と比べて10%以上増加していること ②適用年度の終了の日までに中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けていて、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことが証明がされていること |
税額控除(上乗せ) | 控除対象新規雇用者給与等支給額の20%を法人税額又は所得税額から控除 | 控除対象雇用者給与等支給増加額の25%を法人税額又は所得税額から控除 |
税額控除額の上限 | 法人税額または所得税額の20%が上限 | 法人税額または所得税額の20%が上限 |
うえの表を確認すると分かる通り、 人材確保等促進税制と所得拡大促進税制の最も大きな違いは、所得拡大促進税制の適用要件が、従来から雇用されている全従業員(雇用者給与等支給額)であることに対して、人材確保促進税制の適用要件は、新規雇用者(新規雇用者給与等支給額)であるという点 です。
人材確保等促進税制は、 新規雇用者を対象にした所得の改善を目指した税制 となっていますが、所得拡大促進税制については、 全雇用者を対象にした所得改善を目指した税制 となっているという違いがあります。
人材確保等促進税制と所得拡大促進税制の併用はできない
人材確保等促進税制と所得拡大促進税制を 併用することはできません 。
うえで説明したように、人材確保等促進税制も所得拡大促進税制も、青色申告を行っている全企業が対象となりますが、税制度の目的が異なるので、両方を適用することはできません。
人材確保等促進税制か、所得拡大促進税制の どちらか一方のみを選択して適用する必要があります 。
どちらの税制を適用した方が法人税等の控除額が大きくなるかは、適用を受けようとする法人の状況次第です。
人材確保等促進税制に関するQ&A
人材確保等促進税制を適用する中小企業の事業者の方からよく寄せられる質問は次のとおりです。
- Q:人材確保等促進税制の計算方法が知りたい
- Q:人材確保等促進税制は退職した場合でも適用されますか?
- Q:人材確保等促進税制で国税庁が出している別表が見たいです
人材確保等促進税制の適用を考えている中小企業の事業者の方は参考にしてください。
Q:人材確保等促進税制の計算方法が知りたい
人材確保等促進税制は、基本的に、 新規雇用者給与等支給額が前年度より2%以上増えていれば、法人税もしくは所得税の控除を受けられるという制度 です。
したがって、人材確保等促進税制について、たとえば、前年度の新入社員に対して支払った給与の合計が2,000万円であって、今年度の新入社員に対して支払った給与額が合計2,040万円以上であれば適用対象となります。
このケースで上乗せ要件は満たさず、通常要件を満たしていると考えれば、給与額(新規雇用者給与等支給額)である2,040万円の15%を、法人税額または所得税額から控除することが可能です。
そのため、納めるべき法人税額(もしくは所得税額)が4,000万円であると仮定すると、2,040万円×15%=306万円となるので、4,000万円-306万円を控除して、3,694万円が納めるべき法人税額または所得税額となります。
Q:人材確保等促進税制は退職した場合でも適用されますか?
人材確保等促進税制は退職した場合には適用されません 。
人材確保等促進税制の適用を受けるための要件の一つとして、新規雇用者給与等支給額がありますが、 新規雇用者とは、国内新規雇用者のうち雇用保険の一般被保険者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額のこと を言います。
したがって、退職した方については、この要件定義を満たさないので、新規雇用者給与等支給額に原則として含めませんから、退職した場合には人材確保等促進税制の適用はありません。
Q:人材確保等促進税制で国税庁が出している別表が見たいです
令和3年(2021年)年4月から令和4(2022年)年3月のあいだに国税庁が提供した法人税等各種別表関係についてはここでまとめられています。
このうち、人材確保促進税制で必要となる別表は、別表6の27「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」と呼ばれるものです。
以下の表では、別表6の27の様式と記載要項をまとめておきますので参考にしてください。
人材確保等促進税制のまとめ
人材確保等促進税制は、
青色申告で確定申告を行っている法人であれば適用できるので、幅広い企業が適用できる税制度
です。
国としては、法人による人材への積極的な投資を通じて、国民の所得を向上させる狙いがあります。
人材確保等促進税制を上手に活用すれば、会社としては法人税や所得税を少なくすることができ、効果的な節税を行なうことができます 。
企業の積極的な人材への投資を促進するために、人材確保等促進税制は改組を続けられており、今後も適用要件が緩和されたり、控除額が大きくなったりする可能性が高い です。
税制が変わるたびに、適用要件や控除額などが細かく変わるので注意してください。
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