投資の決め手はビジョン、ロジック、そしてパッション!想いで受けた総額10億円の第三者割当増資。税理士向けクラウド税務・会計・給与サービス【A-SaaS】のアカウンティング・サース・ジャパン株式会社/代表取締役社長CEO 佐野徹朗氏

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外資系戦略コンサルティング会社で修行をしていた佐野社長が選んだ会社は、60歳を過ぎたパワフルなシニア起業家が創業した、クラウド会計税務サービスを提供する会社だった。会社を変えてきたもの。それは、佐野社長の過去の歴史と会社が創る未来への想いだった。

ようやく見つけた自分の学んできたことを実現する場所

2014年に会社へ参画したきっかけを教えて下さい。

ロゴと佐野徹朗私の生い立ちから話をすると、私の親が小さな運送業者をやっていて、従業員も10人~20人の”The中小企業”でした。1970年代後半から80年代半ばの話ですが、世の中はバブルで勢いがついている中で、一番関係があった会社とビジネスの関係が切れてしまいました。そこから一気に経営状態が悪化したんですね。そんな時、私の親が懇意にしていた顧問税理士がいて、非常に会社を助けてくれました。結局は清算することになったわけですが、親たちが苦労をしているのを見ている中で、専門家という存在が大きいなと思いました。特に経営を間近に見ていたので、商いやお金の大事さをすごく感じました。そういうところをきっかけにして会計を学びはじめたんです。

さらに会計士として監査を行っている中で、もっと意思決定に関わっていきたい最終的には経営のところへ行きたいと思いながら、修行的な意味合いでコンサルティングの会社に入りました。実際、コンサルティングは意思決定できるのですが主役ではありません。自分自身の過去の経緯から、自分の力を発揮できるところはないかなと、私の知り合いや会社の先輩に相談をしているところに、面白い会社をやっている人がいると聞きました。

その面白い会社とは、創業した方が森崎氏という60歳過ぎのパワフルなシニア起業家の経営する会社でした。税理士の方を元気にすることによって、その先にいる顧問企業をもっと活性化して、中小企業からボトムアップをしていきたいというところで、さらにクラウドにも取り組んでいて面白いなと思いました。森崎氏と何回か飲みに行って話を聞いていると、彼自身も取り組んでいることに間違いは無いのですが、ベンチャーは新しい価値を提供していくので、新しい市場を作っていかなくてはいけない。今まで業界大手の会社で働いていたため、出来上がった市場の中でやることには長けていたが、新しくやっていくやり方がわからなくて自分自身も高齢で難しい。そのため、託せる人間にお願いしたいという話でした。

彼自身も私のバックグランドが、会計税務を詳しくわかっていながら、最新のビジネスの手法をわかっているというものであり、私も、まさに両親の会社が同じような形で税理士に助けてもらった。そこに最新のテクノロジーがあったら結果が違ったのではというところで、ビジネスモデルや機会も魅力的ですが、それ以上に自分自身の原体験に重ねてみた時に、この会社は自分の学んできたことを活かせる場所なんだなと思って、迷わず入りました

 

大学で会計学を学んでいた時と業務を行った時に感じたギャップはありますか?

監査人としてキャリアをスタートして、だんだん監査の社会的意義と自分のやりたいことがずれているなと感じていました。それは何かというと、会計監査というのは企業自体がアクションをして、考えて行動して出た結果が数字として反映されたものです。それが数字として正しいかどうか常に見ている作業です。でも、一番世の中にインパクトを与えるのは、考えて行動するところなので、我々の場合は出た数字をひたすら見ていたんですが、「何でこれはこんな行動を取ってしまったのだろう」とか、「何でこんな結果になることを事前に察知できなかったんだろう」とか、企業の意思決定についていろいろと思うところがありました。

監査をやっていた段階では我々の範囲外なので、自分自身が数字を見るプロとしてやっていた中で、会社の意思決定に影響を与えていくという重要なことをしたいと思い、最終的にキャリアチェンジを決断しました。そして、戦略コンサルティング会社での経験を経て、事業会社にやってきたんですね。事業の方に来て一つよくわかったことは、世の中は結構いい加減、不確実なもので成り立っているということです。つまり、数字として、ここをこうやったらこういう数字になるはずなのにならないとか、思った以上になったとか。そこをかたどっているファクターは会計やファイナンスを超えた、人間対人間の付き合い、最終的には人との関係が勝負を決定することなのだなと感じました。

 

コンサル時代に持っていたノウハウが適用できたものとできなかったものは何でしょう?

佐野徹朗適用できたことは、物事を整理して課題を特定し、その解決策としての組織の仕組みやプロセスを構築していくことです。私が入った時は、勢いのあるシニア起業家が作った会社だったので、きれいなプロセス化、数値管理、どこを伸ばせば最終的にはどこが伸びるといったシステマチックな分析ができていませんでした。広報PRで認知拡大して、マーケティングでリードと呼ばれる潜在顧客を作って、インサイドセールスで商談を取って、フィールドセールスで受注するという一連のプロセスでKPIを置くといったことは正に今までやってきたことだったんですね。

コンサルと全く関係が無いと思ったところは、想いという部分でした。たとえば、いくらこういうことをやっても、最終的に受注するかどうかは損得で動いていないんですね。何度もお客様を訪問することで、「よく顔見せてくれたから話を聞いてやるよ」というのが本当にあるんだなと思いました。会計士やコンサルタントとして働いていたころは、このようなことは正直ある種ナンセンスだと思っていました。でも実は最後売り上げが伸びていくというところは、人と人との付き合い、気にかけて電話するといったちょっとした思いやりの積み重ねが、ものすごくでかいなと思いました。お金やキャンペーンでは動かなくて、税理士の方々に対して、「自分たちがどうしてこんなことをやっているのか、税理士の方たちにもっと明るい未来を一緒に作っていきたいんです。」ということを伝えると、自分の仲間を紹介して、そういう未来を作ろうよと言ってくれるんです。

 

世界を引っ張る中心的な存在になりたい

会社との連携を広げていますが、どういう意図がありますか?

最終的なビジョンの考え方として、例えば情報やデータはすべてオンライン上でつながっていて、使う人がそこにアクセスをしながら、全員がリアルタイムで同じことができるという考えを作っていきたいというものがあります。それは一社だけでは無理なので、自分たちがそこまで広げていくと、やりたいようにはできないエリアには、同じ考えを持っている会社の方々と一緒にやっていくつもりです。クラウドというオンライン社会になっていく中のエコシステムを一緒に作りたいという感じです。連携は、積極的に我々が働きかけているケースが大きいですね。自分たちが中心的な存在になりたいという思いがあります。受け身ではなくて、どんどん世界を引っ張っていているんだと認知してもらいたいというのはありますね。

 

システムをお客様の使いやすいようにするための工夫はどういった点でしょうか。

税理士の方の声を徹底的に聞いています。税理士の方から出資を受けているということからもわかるように、何に困っているのか、今までのシステムで満足していること、実はもっとこんなことをしたいと、心の中で眠っているようなことを取り出して、クラウドだから解決できるという仕組みを作っています。カスタマーセンターに来た声はデータドリブンで取り込めるような形を作っています。A-SaaSは税理士の方に提供できる価値が三段階あって、まずは基本的な税理士業務を行うための機能。次にクラウドだからこその利点として、税理士業務の生産性を高めていくこと。さらに、税理士を超えた中小企業に対して価値を出していくためのアドバイザーという存在としてできるようなものです。その土台はものすごく重要で、基本的に税理士の方がどんな動き方をしているのか、税理士業務に対して基本的な部分は何なのかはここからあぶりだしています。ここから先は、そもそも税理士の方もわからない世界に入ってくる。この部分は、税理士の方でもITというものに対して自分たちで取り組んでいて、新しい世界観を作っていこうという先生たちとアドバイザー契約をして、その方とピンポイントで意見交換しています。ユーザーから来た声全てをそのまま聞くことは、たとえばこれは選挙みたいなもので、選挙は皆さんから投票を受けると、普通の人たちの意見がマジョリティになってしまうんですよね。それって新しい価値でも何でもなくて。ただ、もちろん、それでも基本業務を行うためには非常に参考になります。

 

VCは一緒に成長するための仲間

VCと付き合うことになったきっかけを教えてください。

私が入ってきた時は、もともとシリーズAが完了していました。VCの方々の業界はネットワーキングが一番生きるビジネスなので、シリーズB投資家もシリーズA投資家の方の紹介から入ってきています。我々からコンタクトを取ったところで、あたたまり感も結構違うと思います。自分が知っているVCの方が入っていて、さらに「ここいいよ」と言ってくれていることは大きいなと思います。VCが最初に入った時は、クラウドの会計分野に取り組んでいる最初の会社だったので、ポテンシャルの大きさは非常に買ってもらえました。

 

社外取締役として外部から入ってきたことによるメリットは何でしょう。

この半年間くらいは一週間に一回経営ディスカッションをしていて、アジェンダ自体は、進捗や今後やっていくことを一緒に話しています。何かを持ち寄るわけではないのですが、投資家としていろいろな会社を見ているので、非常に視点が高いんです。私自身、事業をやっているので、どうしても目の前のこと – 明日の売り上げがどうなるかとか、いかに費用を削減していくかみたいな話 – を考えていると、非常に目線が下がっていってしまいます。そこをディスカッションすることによって、目線をぐっと上げてもらっていますね。今やっていることって、一体何につながっているのか、今月の売り上げを積み上げることを一生懸命考えることと、この二、三年後の売り上げのために自分の売り上げを伸ばすことと、どっちを今はやるべきか。自分の会社としてどこにフォーカスすべきかというところを、ディスカッションパートナーとなってもらったことは大きいですね。そこはすごく投資家に恵まれたかなと思っています。目の前のことに追われている時に、まず一旦冷静になって、会社がどこに行くのかをちゃんと考えようよと言ってもらえる事は大きなところですね。

 

資金調達をしたお金を使う上で、気をつけておいた方がいいポイントはありますか?

そのお金は自分たちのお金ではないということを自覚することで、成長するためにどこにかけるべきか、きっちり考える必要があるなと思っています。お金をもらったからって売り上げが伸びるわけではなくて、売り上げを伸ばすための絵を描いて、自分たちが当初計画していたことに対して、ブレずにお金を使っていくことが重要かなと思います。大金が入ると、あれもやりたい、これもやりたいと欲を持ちがちになると思いますが、所詮は規模が小さくて、一歩踏み外したら消えてしまうような存在が、普通のスタートアップだと思うので、そこはしっかりかけるべきというところを見誤らないで、ちゃんと投資をしていくことは必要だと思います。

 

想いやパッションをどれだけ持っているのか

これから資金調達を目指している方に向けてアドバイスをお願いします。

VCがお金を超えて重要視しているのは、想いやパッションをどれだけ持っているのか、ロジックではないところがあるんですね。ビジネスをしっかり計画を立てて、そこにパッションを思いっきり注入することが、最終的なVCとの良い出会いにつながってくるので、ハートの部分は持っているといいと思います。

 

資金調達をサポートしている方に向けてアドバイスをお願いします。

_アカウンティング・サース・ジャパン株式会社ベンチャーという小さな会社は順調な時と順調ではない時があると思います。順調な時はみんな寄ってくるものですが、順調ではない時にこそサポート・支援をしっかりしてくれる会社があると、お金を超えたパートナーとして付き合いができると思います。会社自体が本当にどういうビジョンがあって、どのように実現していくのかという中長期的な部分で見てもらいながら支援してもらえると有難いですね。経営者が気づいていない潜在的に持っている魅力とか、中長期で成長できる機会を見つけてあげて、経営者を導いていくことができるのであればすごい存在になると思います。

 

貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。

アカウンティング・サース・ジャパン株式会社

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