総額約5億1,000万円の資金調達を実施。日本におけるビットコイン市場を牽引する株式会社bitFlyer(ビットフライヤー)/代表取締役 加納裕三氏

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加納社長、まずは自己紹介と事業概要のご説明をお願いします。

ロゴと加納裕三私はもともと外資系金融でトレーダーをしておりましたが2013年12月に退職し、2014年1月にCTOの小宮山と一緒にbitFlyerを作りました。
そこから1年9ヶ月、おかげさまで社員も20人ほどに増え、順調に拡大しています。1月に起業して2月にマウントゴックス事件が起き、幸先が悪い感じだったものの、その後の低迷期を乗り越え、FinTechというところでスポットライトを浴びています。FinTechといえばビットコインがど真ん中だと僕は思っていて、現在は経産省だったり金融庁だったりに呼ばれて、FinTechの中心的な役割を担わせて頂いているのかなと思っています。
資金調達は過去に実は5回やっていて、我々はシードからちゃんと始めているので、シードがあってシリーズAがあって、CBも出しました。BがあってBを2回やってとか、そういった意味では一般的なベンチャーのファイナンスのラウンドをこなしています。
前回のファイナンスの5億1,000万円に関しては、アナウンスの通りで海外事業を拡張するということと、セキュリティへの投資、人員への増強、広告費といった一般的なベンチャーの使途です。

 

ビットコインとはどういうものでしょうか?

仮想通貨です。国際的に仮想通貨全時価総額の90%がビットコインなので、仮想通貨界の基軸通貨になっていると思っています。海外でも使えるし、友達にあげることもできるし、それでモノを買うこともできます。仕組み自体は難しいのですが、そこは知らなくても使ってみれば、使えるということがわかると思います。

 

ビットコインの会社を起業しようと思ったきっかけは何でしょうか?

これは明確に、ベン・バーナンキさんがビットコイン容認発言をして値段が10倍くらいになった瞬間です。あの時にこれだと。1ヶ月で20倍くらいになりました。これでもうビットコインは世の中の信任を得て別のものになったなという感覚がありました。

 

日本というマーケットでビットコインは広がりにくいですか?

広がりにくいですね。やはりコンサバティブな方が多いので、割と新しいものに対して抵抗感を持っている人が多い。特にいろんな事件等があったので、それと比べられて怪しいものだと思われているというのは非常に残念です。

 

海外でビットコインが普及している国はどこでしょうか?

中国とアメリカです。新しいテクノロジーが流行るというのはアメリカであって、新しいものを受け入れる土壌があると思っています。日本人では「何か怪しい」で終わりますが、アメリカ人は「怪しいかもしれないけど何だろう、よくよく見ると怪しくない、これは使える、これで未来が変わる」と思ってくれる人が多い気がします。中国は投機的な人が多く、株のように動くものが好きです。そういった意味でビットコインを利用しているのかなと思います。

 

ビットコインの値動きの荒さは今後も続くでしょうか?

落ち着いてくると思います。ユーザーが増えると売りも買いも板が厚くなりますので、そうするとガチッと決まってくるのかなと思います。

 

ビットコインは個人資産形成に有効なのでしょうか?

有効だと思います。基本的にはオルタナティブ投資というか、一般的にはドルとか円とか通貨に危機があった時に、ビットコインは守りの通貨として使われるのではないかなと期待しています。恐慌が起きた時には上がる可能性があると思っていて、ギリシャショックが起こった時に20%くらい値段が上がりました。自国通貨を信用できない人がビットコインを買っていて、中国の時も上がりました。

 

資金調達をする前にどのような課題がありましたか?

加納裕三非常に日本のビットコインマーケットというものが厳しくて、今手数料が0になってしまって非常にコンペティティブです。小さなマーケットに16社も会社があって、元々手数料が0.5%くらいあったものが、どんどん過当競争になって、みんな0になってしまいました。こうなったら長期戦だなと思いました。その時にまず資金があった方がより長期的にいろんな計画を練られるのかなと思っていたことが課題の1つです。日本の立ち位置の守りというところと、それなりに優秀な技術者を雇うためのコスト、セキュリティはかなり力を入れておりますのでそこに対するコスト。また、守りだけではなくて、海外マーケットに出てプレゼンスを出していこうかなとも思っています。
このまま日本にいて、手数料0でずっと我慢比べしているだけだとニッチもサッチもいきません。

 

資金調達のタイミングの方針は?

基本的には継続的に資金調達をしています。スピードが大事だと思っているので、なるべく大きく調達をして、使ってということを繰り返すのが大きい会社を作ることにつながるのかなと思っています。

 

資金調達をする上でのポイントは?

どの投資家に出資してもらうのかは非常に大事だと思います。一緒にやっていて信頼感のある人たちに出資いただけるのがいいのかなと思っています。実績がある人達や社会的に信用がある人達というのは、非常に大事なポイントだと思っています。

 

資金調達の方法の中で出資を選んだ理由は?

融資をやってしまうと1回しかチャレンジできないと思っています。無担保でも融資しますとか国の政策でありますけども、基本無担保で融資はするものの、事故扱いになるとクレジットのデータベースに載せる。そうすると再起不能になります。2度と個人ではお金も借りられないし何もできない。そういった意味ではリスクを取って何かを大きくするという意味で、エクイティファイナンスしか選択肢は無いと思いました。無担保だからOKというわけではないと考えています。その人の信用やキャリアを切り売りしているわけですから。

 

融資は非常にリスクの高い方法であると?

成功確率が相当高いのであれば無担保・有担保融資でもちろんいいですよ。株を売りたくないのであれば融資でしょうけど、どんなビジネスでもリスクはありますので、リスクリターンで考えたら、一般的なスタートアップが融資でやるのはあまりいい選択肢ではない気がします。

 

資金調達に関するリスクがあまり知られていないと感じます。

経営者でそれを知らないのであったら、失礼かもしれませんがあまり向いていないのかなと思います。国や投資家が十分にリスク説明や周知徹底してないのでビジネスができませんというのは、もう起業を止めた方がいいと思っています。全部自分達でファイナンスの可能性を調べて、もちろん資金調達プロさんとかでも調べられますし、インターネットがあったらどうにでもなるので知らなかったっていうのは完全に経営責任だと思います。10万円のパソコンと半日くらいインターネットで調べれば相当情報が集まりますから。

 

ベンチャーキャピタルとの出会いのきっかけを教えてください。

知人のコネだったり、もともと私は金融機関出身なのでわりとアクセスはありました。あとは紹介の紹介だったり、自分で電話をしたり、ピッチコンテストに応募したりしました。

 

ベンチャーキャピタルへアクションを取る際の基準はありますか?

まずはラウンドが合っているというところです。基本的にラウンドがミスマッチしていると、話が進みません。僕らも次はシリーズCなので、その時にシードのインベスターが1,000万円出資しますとなっても、多分お互いの利益が合わない可能性が高いです。僕らが昔やってしまったのは、シードの時にシリーズCの投資家に話してしまいました。ワンショット10億円ですと言われてどうにもならないです。ラウンドがミスマッチしている状況ってお互い時間の無駄なので、そこからはこの規模のファンドならこれくらい出せるから、自分達のラウンドとマッチしているということは意識するようにしました。

 

上場への準備を進められていますが、目指そうと思ったきっかけは?

起業の時から上場前提のベンチャーです。そもそもエクイティファイナンスを受けており、ベンチャーキャピタルから出資を受けているということでいうならば、自ずとやることは上場目指すかバイアウトするしかないと思います。その他のケースだと自己資本や融資等で10年やっていてキャッシュフローも回っているが、ビジネスを加速させるためにVCを入れて上場を意識するというのもありますが、一般的には上場できるかどうかは別として起業時に目指すものかと思っています。

 

上場に向けての課題は何でしょう。

IT統制や内部統制、監査などの作業系のものと、当たり前ですが売上を上げて利益を出すということが上場までの課題だと思います。会計方針自体は別に変わらずやっております。最初に僕らはわりとクリアになっていたので、それに沿ってやっています。

 

ビットコインで上場するというIPO2.0の考え方が上場では理想でしょうか?

IPO2.0というのはビットコインやブロックチェーンの世界の話で、そうなるといいなと思いつつも、僕らはスタンダードな公設の取引所である1.0で上場を目指します。IPO2.0は日本では時間がかかりそうですけどアメリカで始まると思います。すごく簡単なものであれば、来年とかにあってもいいと思います。IPOは未公開株を初めて公開させるという意味でしかなく、もっと言うと証券会社を使わなければいけないわけでもありません。また上場する先というのも、必ずしも公的な取引所じゃなくてもいいです。私設取引所でもいいわけですし。何をもって上場と呼ぶのかというのはありますが。ブロックチェーンはもともと全世界に公開されており、ビットコインで資金調達することもでき、もちろん取引もできます。今ある取引所がブロックチェーンに変わったと考えるのであれば、パブリックなオファリングをすることは技術的にはできるのかなと思います。アメリカではSEC、日本は金商法や会社法等がありますので、ブロックチェーンであっても法律に準じた方法で上場しなければならないとは思いますが。

 

これから資金調達をする人に向けてアドバイスをお願いします。

ロゴと加納裕三基本的には資金調達って相当辛いはずです。デットファイナンスは国の融資等がありますが、エクイティファイナンスに関しては何十社につき1社しか出資しないと思うので精神的にキツイですが、断られても他にいっぱいVCはありますので、めげずに頑張ればいいと思います。VCはまず新規性を見ますので、誰かのモノマネではなくて、何か新しいことをやっていて、その数字が説明しやすいものであれば、より出資の可能性は高くなりますね。最終的にはエグジットを必ず考えますので、まだモノも作っていない状況で、相手としても入り口、プロダクトを考えて、ちゃんとモノを作れるだけの説明ができるか。入り口はあるけど出口は無いというパターンもありますので、ストーリーがちゃんと説明できるくらいの方がいい気がします。とにかくVCの視点に立つことが大事だと思います。投資家の視点に立ったら、出資したいなと思う会社があると思います。起業家と投資家は表裏一体で、僕が投資家だったらこういう会社に投資したいな、こういう説明をしてくれたら投資したいなということを考えてはいました。結局投資家はそのスタートアップに何で出資する必要があるのかというところの問題を解決してあげる視点を持つのが良いのかなと思います。

 

企業支援している人に向けてアドバイスをお願いします。

デットであれば国がやっているような何百万円とか何千万円とかのコースがありますけど、そういったものを周知・徹底してあげるのが良いと思います。同時にどういうリスクがあって、エクイティファイナンスのいいところ、デットファイナンスのいいところ、それぞれを説明して失敗した時に何が起こるかを周知する。よくあるのがデットファイナンスをした人に、無担保だから大丈夫ですと言って、クレジットヒストリーに事故扱いとなることを説明しないことがあります。そして失敗した時に初めて二回目のチャレンジが難しいことに気が付きます。僕はすごく問題だと思っています。
スタートアップの経営者としては一般にエクイティファイナンスの方が難しいので、まずはこれをトライして駄目だったらデットというのが順番としてはいいと思っています。一長一短あるので最後は経営判断ですが。ベンチャー経営者は金融を十分に理解されていないケースもあるので、「簡単に借りられます。」のように良いところだけ説明をしてしまうとあまり公平ではないなと思います。同様にエクイティファイナンスなのに、コンサルティングフィーを取ったり、実際は返済契約がついていたりするのを十分に説明しないのも公平ではないと思います。

 

加納社長、本日はどうもありがとうございました。

株式会社bitFlyer|bitFlyerは皆様のビットコインに関するあらゆる取引をサポートし、ビットコインの普及に貢献します。
https://bitflyer.com/ja-jp/

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