銀行借入とクラウドファンディングで1,000万円の資金調達に成功した東京都渋谷区の飲食店、ダイニングバーDOOR(ドアー)/佐藤健二オーナー
まずは自己紹介、佐藤さんの生い立ちをお願いします。
東京都渋谷区でDOOR(ドアー)というダイニングバーを経営しています。株式会社iStory(イストリー)の佐藤健二です。
1987年2月4日、北海道千歳市に生まれました。3人兄弟で、兄と妹がいます。兄は千歳で飲食店をやり、妹は旅行会社で働いています。僕自身は、高校以外は全部千歳市で育ち、千歳の大学を卒業して上京してきました。
学生時代は、中学高校ではサッカーをしていて、高校一年の終わり頃からストリートダンスを始めました。もともと音楽が好きだったのもあり、その流れでストリートダンスをしていました。
大学の途中からは、自分でクラブイベントなどを企画するようになりました。それから徐々に、「自分はダンスで表に立つというより、裏側で人を支える方が向いているな」という風に思い始め、イベントで地元千歳を盛り上げようと積極的に活動していました。
元々、学生の頃からイベントの企画など、精力的に活動されていたんですね。
そこで、数々の人脈を築いたり経験を重ね、たまに寝れない日もあったりしましたが(笑)かなり刺激的な生活を送っていました。
その芸能プロダクションを退職した後は、既に起業していた友人の会社に所属しながらも、イベントの企画をしていました。外注でインディーズレーベルのCDの営業や、アーティストのマネジメントを自由にやらせてもらっていました。それが二年ほどですかね。
ですが、自分の元々の夢が、「場所を提供していく事」です。
周りの人に対して出会いの場所を提供していく事が今までしてきたことだし、「今後もそのような、場所の提供を出来るような事業をしていきたい」と思っていました。
そう考えた時に、「どこかで店舗をかまえて場所を作れたらな」という夢を描き始めていましたが、いつかというよりは、「今すぐだ!」と思い、起業を決意しました。
2013年の春頃に決意して、夏には行動を始めていました。
起業は一人で考えていたのですか。
いえ、元々上京して間もない頃に芸能事務所の面接会場であった、神谷という人間がいます。今、神谷とは共同経営者として一緒にDOOR(ドアー)をやっているのですが、出会った時から、音楽やイベントが好きという趣味も共通していて、それからたまに飲んだり、遊んだりしていました。
神谷ははじめヤフー株式会社に1年位就職し、その後、英語も喋れないくせに『MBAを取りたい』と言っていきなり留学をしに海外留学にいってしまいました。(笑)
そして、なんだかんだ三年くらい海外にいて、本当に宣言通りMBAを取ってしまいました。
神谷が海外にいる時もスカイプで連絡を取ったり、帰国のタイミングで会ったり、近況報告したり、その時から漠然と「一緒になんかやれたらいいよね」とは話していました。
ある時、神谷が『日本帰るよ』
僕「そうか、帰国後はどうすんの?」
そこでお互いに元々話し合っていたこともあり、二人で『飲食業をしながら、場所を作りたい。起業したい。』と意気投合して、本格的に起業の準備をすることになりました。
「じゃあもうやっちゃおう!」と。
共同経営するに当たり、『本当に大丈夫か?お互いの信用は?共同経営は難しい』というような考えもありましたが、自分も神谷もお互いを尊重しながら、一緒にやっていこうと決意しました。
ただ、そこで最初にぶつかった問題が、資金調達でした。
起業する為の資金調達については、どのように行動していったのですか。
まずは、なかなか自己資金がない状態からスタートです。まずはどういう手段があるかを考えました。
- 親に借りる
- 誰かに投資してもらう
- 金融機関からの融資
- クラウドファンディング
どれにしようか考え、しらみつぶしに当たっていきました。もともと用意していた自己資金なんて、飲食店の開業経費から考えると、雀の涙位しかありません。
ご両親は何と言っていたのですか。
まず親にあたってみましたが、案の定どちらの親にも反対され、全く相手にされなかった。むしろ『ふざけるな』と言われました。
投資を受ける為に、何をしましたか。
次に考えたのは投資です。お互い、綿密なコンセプトと事業計画書を用意して、あたってみました。
事業計画書に関しては神谷がMBAをとっていた事もあり、試算表の作り方しかり、3年後、5年後の返済計画をたてて臨みました。今までの人脈を生かして、最低で5人に打診をしましたね。中には、興味を示してくれた人もいた。事業計画書に関しては、誉めてもらうことが多かったです。
だけど実際には、『飲食事業で利益を出すのは、なかなか難しいよ』『まずは人に頼るより、自分で貯めた方が良いんじゃない?』『1年後、2年後でも遅くはない』という意見が多く、なかなか投資してくれるまでには至らない。
でも、自分達は、『1年も2年も待ってられない。今しかない』と思っていました。
金融機関からの融資については。
そこで、日本政策金融公庫や銀行など、金融機関からの融資を考えました。今までの人脈をフル活用して、融資コンサルタントをやってくれる方と話を勧めました。
コンサルタントの方曰く、『銀行とうまくつなげられますよ。95%融資は通る。』
その方は経営コンサルティング事業もやっていて、銀行との信頼関係が強かった。
ですが、『融資を斡旋した会社が失敗したときに、その方の信用もなくなってしまうかもしれない。』という背景があった為、『融資の斡旋をするだけではなく、経営面で継続的なコンサルをしたい』と、そのコンサルタントの方は思っていました。
でも、僕達はあくまで「主体的に、トップとして事業をやりたい。」「誰かのアドバイスも必要かもしれないけど、あまり口出しをされて経営をしたくはない。」という思いがあり、丁重にお断りさせて頂きました。
次に、いわゆる融資コンサルタント、融資だけ斡旋してくれる人と知り合いました。ですが、実際に融資が下りるまで半年くらいはかかると言われました。
『とにかく急いでいるのに、半年はちょっと、厳しいな・・・。』
なかなか資金調達が出来ない中、諦めずに方法を考えます。
クラウドファンディングについては。
次に、クラウドファンディングというものを知りました。ソーシャルやITの文化を活用して資金を集め、若い人でも簡単に起業できる、資金を集められるサービスです。今流行っているらしいですね。
しかも「クラウドファンディングで集めた資金は、自己資金として見せることが出来るらしい」との事です。
クラウドファンディングを行うにあたって、自分達でサイトを作り、クレジットカード決済機能も付けて、クラウドファンディングサイトを立ち上げました。
そして3か月くらいの募集期間の中で、今までの人脈を生かし、知人や先輩・後輩など多くの方に頭を下げ、最終的に150万円を集めることが出来ました。
見ず知らずの方からの出資はほとんどない状態で、本当に自分達の友人知人だけで150万円の資金調達に成功しました。
クラウドファンディングの良い所は、皆金銭的なリターンを求めてお金を出してくれるわけではなく、純粋に事業に対する応援という意味合いが強いです。
勿論、出資してくれた人に対しては、サービスでお返しを行います。
その後は再び、金融機関からの資金調達を考えます。
その結果は。
クラウドファンディングと並行して国民政策金融公庫にも融資の申請の相談をしていましたが、『クラウドファンディングで集めた資金は自己資金ではない。』と言われてしまいました。
「えっ。自己資金とみなされるんじゃなかったのか・・。」
国民政策金融公庫の方曰く、『自己資金というのは、あくまで自分達が事業活動を行い継続的に貯めたお金の事を自己資金というのであって、突然ポンと湧いて出たお金は自己資金とはみなされない。』との事です。
そこに関しては、完全に自分達のリサーチ不足で、軽率でした。最終的には、申請はせずに相談のみで終わりました。
「資金が集まらないと、150万円だけじゃ開業に至らない。開業出来ないならクラウドファンディングのお金も返さないと・・・。もう、難しいんじゃないか・・。」
そう、困り果てていた時に最後の銀行融資コンサルタントの方と出会いました。
そのコンサルタントの方に現状と希望金額を伝えて色々動いて頂いた結果、1か月半位で複数の銀行から800万円を借りることが出来ました。
その時点でも最終目標金額より400万円位届かなかったのですが、やむを得ず開業コストを押さえる事で、なんとかスタートに踏み切ることが出来ました。
最終的には、自分達でも何とか用意した50万円と合わせて、合計1,000万円の資金を用意出来たのです。
資金調達に成功した秘訣とは?
これまでの人生で形成した、人とのつながりですかね。事業計画書に関しては、神谷がかなりしっかりと綿密に作ってくれた事が大きいと思います。
後は、あきらめなかったこと。
バカかと思われたかもしれない、甘いと思われたかもしれない。だけど、「とにかくまだやれる。まだいける」と考えていた。
そして起業してみて思ったのは、「資金調達をサポートしてくれるという職業の人は結構いるんだな。」と思いました。
自分自身が代表として勤めたことないからわからなかったけど、起業した後にそういう事を知りました。
クラウドファンディングにしろ、銀行融資にしろ、佐藤さんと神谷さんの人望も大きかったという事ですね。
資金調達に関してはかなり頑張りましたし、何より皆に助けられました。資金調達は自分達の力だけでは到底できなかった事です。
相談に乗ってくれた方や実際に出資してくれた方、協力してくれた方全員に、感謝しています。
ここからは実際の事業に関する質問です。他の飲食店との主な差別化や特徴は何でしょうか。
今までも周りの人に助けられて生かされてきた事もあり、これからも人に助けられることは多いと思います。なので僕達は飲食店というよりは、『場所を作りたい』という気持ちが大きい。
場所というのは、家でもなく、会社でも学校でもない、3番目の場所ということ。それが僕達DOOR(ドアー)のコンセプトです。
会社帰りのお客さんに寄ってもらったり、気分転換にしてもらう場所であったり、はたまた、社会人になってからなかなか会社以外で出会いが無い中で、そういう出会いの提供であったり、いわゆる、人とのつながり。出会いを一番の目的としている場所作り、お店作りを目指しています。
そういう考えの元、お店のビジュアルをどう作っていけば良いかを考えます。お店の形態としてはダイニングバーとバーの中間みたいな感じ。HUBに近いですね。
ハイテーブルハイチェアーのお店で、一人で来たお客さんも隣のお客さんと気軽に話せて、自然と触れ合えるような、お店を意識した内装設計です。
接客も畏まりすぎずに、フランクな感じで気軽にお客さんの隣に立って一緒に飲んだり、違うお客さんを紹介したり、そういう接客を目指しています。
料理で勝負しているというより、まさしく場所の提供ですね。
そうですね。
「まず人間のライフワークとして、一番コミュニケーションを取る場所はどこだろう」と考えたときに、カラオケとか、例えば麻雀とか趣味の場もあるかもしれないけど、一番ベタなのが、『食べる・飲む』というのがライフワークとしてまずありますよね。
僕達は、1番目の目的が「場所を提供する事」であって、その中で「食べる・飲む」というコミュニケーションが生まれれば良いと考えています。
では、普通の飲食店のように食べたり飲んだりすることが目的ではなく、あくまで手段ということですね。
やはり、人同士をつなげたり、人が集まるという場所は学生の時からずっと提供してきたことなんで、やはり自分の強みはそこしかないのかなと。
なるほど、佐藤さんの得意分野であるその部分が生きて、経営がうまくいっていると。
はい、なんとか。
それもこれも、全て関係者の方々とお客様がいて成り立つことなので、全ておかげ様なんですけどね。
今後の展望があれば教えて下さい。
色々あります。
このような、「人とつながれる場所」を、全国各地に、ひいては世界各地に作っていきたい。勿論、地元の北海道にもお店を出したいと考えています。今は、情報が簡単に見れる時代です。流行り廃りも早く、時代は凄いスピードで流れているとは思います。
ですが、僕としては、リアルで人とつながれる場所が、人としての一番大事な場所なんでないかな、生きていくのに必要な場所なのではないかと考えています。
なので、そういう場所を各地に作りたいです。最終的には、各地の一つ一つの場所がつながりあい、何か一つの新しい時代を作れるような、影響力を作れるような、巨大なコミュニティを作っていきたいなと。
一つの場所でつくるコミュニティより、全国、世界各地でつながりあったコミュニティをまたさらにつなげることで、大きなネットワークが形成されると思っています。
そのネットワークがリアルなコミュニティとなり、そこで人の輪を作っていけたらと思っています。
お店の名前をDOOR(ドアー)と名付けているように、そのドアを開けば、新たな世界が待っていると。
会社でも家でもない、3番目のドアです。
佐藤さん、ありがとうございました。
昨日は0人が事業資金の調達に成功しました。
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