山口FGが臨時株主総会で前会長兼CEOの取締役解任を提案 新銀行設立構想の検討中止も、金融庁は報告徴求命令
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【この記事の要約】
☑ 発端は吉村YMFG会長兼最高経営責任者(CEO)に対する告発状
☑ 外部主導の調査で新銀行設立構想の詳細が明らかに、YMFGは中止を発表
☑ 社内調査で吉村氏の権限逸脱などを問題視、会長兼CEOを解任
☑ 吉村氏は取締役辞任勧告に応じず、臨時株主総会で決着
金融庁が報告徴求命令を出した山口フィナンシャルグループ(YMFG)の新銀行構想を主導した吉村猛取締役が、取締役会による辞任勧告を拒否したため、臨時株主総会が開催されるという異例の事態となりました。
山口フィナンシャルグループ(FG)は1日、消費者金融アイフルと全国区の新銀行を設立する構想について、検討を中止すると発表した。構想を主導していた吉村猛・前会長兼最高経営責任者(CEO)の検討の進め方にガバナンス上の問題があったと認定した。金融庁は山口FGに対し、今後の対応を説明するよう報告徴求命令を出した。
引用:2021年11月1日|朝日新聞 DIGITAL
YMFGが設立される前の山口銀行では、2004年5月の決算役員会で田原鐵之助頭取が解任されるというクーデター事件が発生。
講談社から刊行された「実録・頭取交替」(浜崎裕治著)はこのクーデターがモデルと言われ、話題になりました。再び繰り返されたトップの解任劇に揺れるYMFG。
出直しにかける経営陣の決意に、厳しい目が注がれています。
山口フィナンシャルグループをめぐる動き | |
2021年5月 | 吉村猛会長兼CEOを告発する文書が全取締役に届く |
5月14日 | 外部の弁護士らによる調査委員会を設置 |
6月25日 | 総会後の取締役会で吉村氏の会長兼CEOを解任 |
8月10日 | 調査結果を受け、社内調査本部を設置 |
8月31日 | 社内調査本部による調査開始を公表 |
10月14日 | 社内調査本部による調査報告書を公表 |
臨時取締役会で吉村取締役の辞任勧告を決議 | |
11月1日 | 新銀行設立に向けた検討の中止を公表 |
12月に臨時株主総会を開催、議案は吉村取締役解任など |
発端は全取締役に送られた告発文書
2021年5月、「山口フィナンシャルグループを憂える志士一同」の名義で、当時のYMFG会長兼CEOの吉村猛氏を告発する文書がYMFGの取締役に届きました。
告発の内容は次のような内容でした。
- 巨額詐欺事件のあった第一生命保険事業への関与
- 地域創生プロジェクトの失敗
- ワイエムライフプランニングの失敗
- 行員軽視、蔑視の姿勢
- 外資系経営コンサルティングとの癒着
- 業績の悪化
- 不適切な女性関係
外部主導の調査委員会の結論
告発文書を受けて、5月14日に調査委員会を設置。
委員長に外部の梶谷剛弁護士(梶谷綜合法律事務所)、メンバーとして社外取締役3人と社内取締役1人が加わって、調査を開始しました。
結論は「法令に抵触する事実は認められないが、適切性の評価については複数の問題が認められる」というものでした。
この調査の過程で「新銀行設立にかかる案件」が大きな問題として浮上しましたが、委員会では「調査委の設置時に託された対象ではないため、調査対象とはしなかった」とされました。
しかし、取締役会が認識していない案件で「特定の取締役(吉村猛氏)が社内での十分な検討なしに、社内の合意を形成せず進めようとした。ガバナンス上さらなる調査の必要性がある」として、社内調査本部の設置へと事態は動きます。
出典:社内調査に関するお知らせ
社内調査本部を設置し「新銀行設立問題」を調査、吉村氏に取締役辞任を勧告
8月10日付で福田進取締役と内部監査部門のメンバーによる社内調査本部が設置され、外部の法律事務所の助言を受けながら、新銀行設立問題の調査が進められました。
この結果、10月14日に調査報告書の内容と今後の対応方針を発表。
同時に、すでにYMFGの会長兼CEOを解任されていた吉村猛氏に対する取締役辞任勧告を臨時取締役会で決議し、発表します。
調査で詳細が明らかになった新銀行設立プロジェクトは、YMFGと消費者金融のA社(アイフル)が共同出資で合弁会社を設立し「全国区の個人金融専門銀行」を目指すという計画で、新銀行のトップ人事も含めて、3月に吉村氏とA社トップとの間で合意されていました。
調査報告書が新銀行設立などに関して前CEO(吉村猛氏)について指摘する問題点の要旨は次のとおり。
- 取締役会の決議を経ることなくA社との間で合意を行ったことは権限の逸脱である。
- 取締役会などに対する言動に、銀行持株会社の代表取締役としての資質に疑義を生じさせる点が多い。
- 決裁権限を有する業務執行に係る意志決定を拒否し、山口FGの業務執行に支障を生じさせている。
- 証券事業提携に関して、取締役会の決議を経ることなく提携解消に向けた交渉を継続、訴訟リスクを報告していない。
また、今後の対応について、次の3点を挙げています。
- ガバナンス強化に向けた取り組み
- 内部統制の強化に向けた取り組み
- 企業風土改善に向けた取り組み
出典
社内調査本部による調査報告書と今後の対応方針に関するお知らせ
新銀行設立に向けた検討の中止を発表
YMFGは社内調査本部の調査報告書で「新銀行の設立案件の進め方にガバナンス上の問題がある」と認定されたことを受けて、案件の事業性について改めて検討し結果。
11月1日、「地方創生に資する当社のビジネスモデルに整合しない構想である」として、検討を中止すると発表しました。
YMFGは「YMFG 地域密着型金融の基本方針」をグループの理念として掲げており、「全国区の個人金融専門銀行」を目指す新銀行構想とは相容れないものがあると判断したものとみられます。
臨時株主総会で吉村取締役を解任、後任を決定へ
YMFGは12月24日に臨時株主総会を開き、次の2議案を提案する予定です。
- 第1号議案 取締役吉村猛氏解任の件
- 第2号議案 取締役1名選任の件
発表によると、同社の指名委員会から「吉村氏は取締役としての資質を有さない」との答申を受けており、後任にはYMFG専務執行役員の蘇我徳將氏が推薦されています。
蘇我氏はYMFGの営業戦略部長、執行役員法人事業本部長などを経て、2021年6月、専務執行役員に就任しています。
出典:臨時株主総会開催日等及び付議議案の決定に関するお知らせ
山口フィナンシャルグループ(YMFG)とは?
2006年10月に設立。山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行を傘下に置き、子会社は3銀行をはじめ、証券・保険・リース・カード・不動産など19社。
山口銀行は下関市を本拠とし、創業は1936年(明治11年)。
もみじ銀行(広島市)は元もみじホールディングス傘下の第二地銀。
北九州銀行は地域密着経営の一環として2011年10月、山口銀行の九州の店舗を分離して設立されました。
山口フィナンシャルグループ | ||
山口銀行 | もみじ銀行 | 北九州銀行 |
ワイエム証券 | ワイエムライフプランニング | 保険ひろば |
ワイエムコンサルティング | ワイエムリース | ワイエム保証 |
にしせと地域共創債権回収 | 井筒屋ウィズカード | やまぎんカード |
ワイエムセゾン | もみじ銀行カード | ワイエムアセットマネジメント |
YMFG ZONEプラニング | YM CAREER | INESUS |
データ・キュービック |
出典:山口FG公式サイト
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