SBIホールディングスが新生銀行にTOB、新生側の対応は?
グラフデータ出典:新生銀行株価|日本経済新聞
【この記事の要約】
☑ SBIホールディングスによるTOBの内容
☑ 新生銀行の対応は?
☑ 4つめのメガバンクを目指すSBIホールディングス
☑ 新生銀行と公的資金
☑ 急騰する株価~TOBの行方は?
地銀連合構想を推進するSBIホールディングス(SBIHD)が先週9日、新生銀行に対するTOB(株式公開買付)を発表。
10日から買付を開始ししたため、新生銀行の株価は急騰しています。
新生銀行がSBIホールディングスからの株式の公開買い付け(TOB)を受け、SBIに対して株式の取得理由や取得後の株価向上策について問う質問状を近く送付する方針であることが13日、分かった。株主の判断材料にする考え。新生銀は回答を踏まえ、TOBに対する態度を表明する。TOBの対象企業は買い付けの開始公告から10営業日以内に、TOBへの賛否など態度を示す必要がある。
引用:2021年9月14日|毎日新聞朝刊
新生銀行はTOBについて9日に「事前の連絡を受けておらず、当行の取締役会の賛同を得て実施されたものではない」とのコメントを発表しましたが、具体的な対応については「公開買付届出書の内容などを検討したうえで」としており、同行の対応によっては敵対的TOBの可能性も取り沙汰されています。
TOB後に経営トップの交代も提案~会長候補に五味・元金融庁長官
SBIHDの発表によると、買い付けの期間は9月10日から10月25日まで。
1株あたりの価格は2000円。株数は約5800万株で、総資金は約1164億円を予定しています。
SBIはすでに新生銀行株を約4273万株、発行済み株式の20.72%を所有する筆頭株主で、今回の買い付けにより50%を超えない範囲で所有割合を高め、その後、新生側と協議を行う意向を示しています。
TOBに伴い「最適な役員体制の実現」も目指しており、会長候補に元金融庁長官の五味廣文氏、社長にSBIHD副社長の川島克哉氏、取締役として旧東京銀行(現三菱UFJ銀行)出身の畑尾勝巳氏を推薦しています。
さらに、新生銀行に資本注入された公的資金の返済についても「メドをつけたい」としています。
SBIHDが提案している新経営陣の要とも言える五味・元金融庁長官は1972年大蔵省(現・財務省)入省。金融庁検査部長、監督部長などを経て2004年7月に長官。
新生銀行の前身である日本長期信用銀行の破綻処理などに関わり、2007年7月の退官後、SBI社外取締役、傘下の福島銀行社外取締役などに就任しています。
2012年に日本経済新聞出版社から「金融動乱 金融庁長官の独白」を出版。「危機の時代の舵取りで何を考え決断してきたのか」を紹介しています。
出典:SBIホールディングス ニュースリリース
TOBに至る背景
SBIHDは2019年から地方銀行との資本提携を積極的に進めており、21年5月までに島根(島根県)、福島(福島県)、筑邦(福岡県)、清水(静岡県)、東和(群馬県)、きらやか(山形県)、仙台(宮城県)、筑波(茨城県)の8行との資本提携関係を結んでいます。
これに新生銀行が加われば地銀連合構想の中核になると見込まれています。
新生銀行については、2019年4月から株式の買い付けを開始。
資本業務提携の可能性についても提案をしてきたものの「前向きの回答を得ていない」ことを明らかにしています。
一方、21年1月には新生銀行がSBIとは競合関係にあるマネックス証券との間で金融商品仲介業務での包括提携を発表。
両者の関係は悪化していきました。
未返済の公的資金を抱える新生銀行
新生銀行の前身は日本長期信用銀行。
バブル崩壊による経営破綻で公的資金が約5000億円投入され、その未返済分の約3500億円が、その後の新生銀行にとって経営の足かせになっています。
当初の優先株式は普通株式に転換され、預金保険機構と整理回収機構が合わせて4681万株を保有。
SBIHDはTOBに関する発表の中で「新生銀行の収益力を高め、公的資金返済のメドをつけたい。両機構と協議する予定」としていますが、国の取得コストと現在の株価水準との乖離は大きく、難航が予想されています。
新生銀行の対応策に注目~敵対的TOBの可能性も
新生銀行は14日現在、TOBに対する具体的な対応策は「検討中」として発表していません。
新生銀行の株価はTOB発表前は1400円台で推移していましたが、TOB発表後の10日は値幅制限いっぱいのストップ高、前日比300円高の1740円まで値上がり。
週明けはSBI側がTOB提案で示している2000円前後でもみあっています。
早ければ今週中にも示される新生銀行側の回答内容によっては、SBI側は敵対的TOBに移る可能性もあり、当面は波乱含みの相場が続きそうです。
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