JR西が最大2786億円の増資、鉄道株の保有チャンス?

進藤 英祐
進藤 英祐
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新幹線

【記事の要約】

・西日本旅客鉄道(JR西日本)が民営化後初の増資を発表した

・調達額は最大で2786億円

・コロナ禍で停滞する鉄道株が下落し、保有チャンスが来るか

 

JR西日本は9月1日、1987(昭和62)年の民営化以降で初めてとなる増資を発表しました。

金額は最大で2786億円となる見込みです。

 

巨額の増資を受け同社の株価は値下がりが予想され、合わせて他の鉄道株も値下がりするようなら、本来は安定した鉄道株を安く保有するチャンスが到来するかもしれません。

 

増資は公募による新株式4854万5400株の発行、第三者割当による新株式412万1700株の発行の2段構えになります。

いずれも払込期日は9月中です。

 

同社のプレスリリースによると、現在の発行済み株式総数は1億9133万4500株。

予定している新株式を全て発行すると、発行済み株式総数は2億4400万1600株に増えます。

今回の公募及び第三者割当による新株式発行に係る発行済株式総数の推移

現在の発行済株式総数 191,334,500 株 (2021年9月1日現在)
(中略)
第三者割当による新株式発行後の発行済株式総数 244,001,600 株

引用:新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ|西日本旅客鉄道株式会社

つまり、発行している株式が現状よりも27.5%多くなるということです。

仮に企業価値が一定と考えると、理論上は1株当たりの価値は2割ほど低下することになります。

 

例えば時価総額1,000円の企業の発行済み株式数が4株の場合、株価は250円ですが、株式数が5株に増えると、理屈では株価は200円に下がります。

 

今期も赤字免れ得ず…

JR西日本は2019年3月期、インバウンド(訪日外国人旅行者)の増加などを追い風に、営業収益、営業利益が過去最高となりました。

しかし、コロナ禍の2021年3月期は2322億円の最終赤字に陥っています。

 

2022年3月期(今期)の業績予想は前年よりは改善を見込むものの、1165億~815億円の最終赤字を見込んでいます。

営業、経常損益も赤字の見通しです。

 

同社はコロナ禍に入って以降、山陽新幹線、北陸新幹線という収益の2本柱の利用客数が激減。

鉄道事業は好調な新幹線で得た収益が大きく、それで赤字のローカル路線を維持するというビジネスモデルにあるとされていました。

そのため、新幹線部門の落ち込みは鉄道事業全体の地盤沈下を招いたわけです。

 

加えて、同社のサイドビジネスは駅に隣接した商業施設やホテル、バスの経営でした。

言わずもがなですが、これらの部門は近年、景気回復やインバウンドの増加による恩恵を受けてきました。

しかし、コロナ禍では鉄道事業と同じく大きなダメージを被りました。

 

全てのビジネスが人の移動や、そのターミナルでの滞在に関連しているため、外出や遠出の自粛が呼びかけられる局面では、全面的にマイナス影響を受けることになったのです。

 

株価は時間外で急落

JR西日本が増資を発表したのは9月1日午後3時15分。

同社の株価は、その後の時間外取引で急落しました。

同日午後11時時点では、同日終値と比べ、636円(10.58%)安い5,395円となっています。

 

同社の株価はコロナショック前に9,000円台後半まで上がっていました。

その頃から見ると、半値に近い水準となっており、製造業の株価などが戻っている中で出遅れているのは明らかです。

 

今回の増資が民営化後で初めて、コロナの終息時期が見通せない、などの事情を考え合わせると、さらに大きく下げる局面もあり得そうです。

 

ただ、本来なら鉄道株はインバウンド需要の恩恵を直接的に受ける銘柄です。

同社は赤字予想の今期も配当予想は前期から据え置きますし、今後の大阪万博やIR計画も考えると、投資するメリットはありそうです。

安く購入できるチャンスがあれば、仕込んで長期的に保有したいですね。

 

ちなみに、同社の株価の急落は、他のJR各社の銘柄にも影響を及ぼしそうです。

同日午後11時時点の時間外取引での株価はJR東日本が227円(3.06%)安の7,193円、JR東海は360円(2.23%)安の15,790円となっています。

 

JR東日本は首都圏のJR線、JR東海は東海道新幹線の運行により、もともとJR西日本よりは経営が盤石のはずです。

これら2銘柄にJR西日本の影響がどれだけ及ぶかは分かりません。

ですが、長期保有で自社の財務基盤を固めるつもりなら、JR西日本だけでなく、JR東日本、JR東海の株価動向にも注意を払うべきかも知れません。

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