日経のソーシャルビジネスコンテスト 中央省庁が後援で可能性広がる
【記事の要約】
・日本経済新聞社が主催するビジネスコンテストの募集が始まった。
・テーマはSDGsで、外務省や農林水産省、経済産業省などが後援している。
・協賛は有名企業で、今後のビジネスに広がりも期待できる。
日本経済新聞社主催の「第5回日経ソーシャルビジネスコンテスト」の募集が始まりました。
コンテストはSDGs(国連による持続可能な開発目標)というテーマ設定からか、外務省や文部科学省、農林水産省、経済産業省、国際協力開発機構(JICA)が後援します。
さらに衛生用品と薬液供給機器などの製造販売を手掛けるサラヤ、太陽生命や大同生命を傘下に置くT&D保険グループが特別協賛し、日本政策金融公庫が協賛するなど、主催者側の豪華さにあります。
審査委員も玄田有史東京大学社会科学研究所長、藤野英人レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役会長兼社長、元厚生労働事務次官の村木厚子津田塾大学客員教授といった、そうそうたる面々が務めます。
大賞の賞金は100万円、過去の受賞者は?
賞金は大賞100万円、優秀賞が50万円で、新型コロナウイルス関連の特別賞も50万円です。
ビジネスコンテストとしては決して高い金額ではありません。
しかし、上述のように、コンテストの関係者が豪華なので、ここで賞を受けることは賞金の金額以上のプラス効果も見込めるかも知れません。
応募対象となるのは、これまでに活動実績があって今年度(2021年度)以降も事業を継続するビジネスか、新たに取り組もうとしているビジネスです。
過去の受賞例を見てみると、第4回(前回)の大賞は、マダガスカルで。手洗い洗濯の汚水を捨てた地面がマラリアを媒介する蚊の温床となっていることから、現地で洗濯サービスを提供し、浮いた時間を女性たちが自身のスキルアップや子どもの教育に充てられる環境を作る、というビジネスでした。
優秀賞は発達障害のある子どもの自信を育む音楽レッスンの全国展開が選ばれました。
第3回の大賞はミャンマーで貧困層も利用できる小口金融(マイクロファイナンス)の業務管理システムの提供に取り組んでいる企業が受けました。
過去4回のコンテストの受賞例を見ても、テクニカルな共通点はなかなか見えてきません。
ただ、現状のどこに問題があり、どうなることが理想なのか、そのために一企業として何ができるか、という観点やストーリーはしっかりと組み立てられています。
もっとも、書類による一次審査を通過した法人・個人は、その後3カ月間、起業家や行政関係者、学者らによる助言を受けられます。
その機会に計画を精緻化することもできるようです。書類の応募は9月5日までで、10月中旬に一次審査の通過者が発表され、2022年1月に最終審査会が開かれる予定となっています。
国内企業は半数が取り組み推進
帝国データバンクの2021年6月時点の調査によると、SDGsを理解し、取り組んでいる企業と、取り組んでいない企業は、およそ半々の割合でした。
SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されており、できてからまだ6年間しか経っていません。
それでも、世間の半数の企業が何らかの取り組みを実施している段階まできています。
最近の金融機関では、SDGsに積極的に取り組む企業向けに条件を優遇した融資商品なども出てきました。
こうした流れから、SDGsに取り組む企業は遅かれ早かれ圧倒的な多数派になるとみられます。
現状では上場企業の方が非上場企業に比べ、SDGsに関する意識が高いという調査もあります。
この結果の背景としては一般に上場企業の方が規模が大きいこともありますし、株式市場での評価を高める意味でもSDGsにコミットすることが企業価値の向上につながるとの認識があるためでしょう。
ただ、この流れは今後も継続するとみられますから、非上場企業を含めたすべての企業で、日常的な企業間取引においても、企業が社会的な信用を得るために最低限満たすべき条件になるかもしれません。
学生も関心、採用にメリット
これに加え、学生が企業を見る際もSDGsの重要性が増しています。
就職情報サイトを運営する学情(東京)が2023年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に実施した調査によると、SDGsへの認知率は95.9%でした。
就職に当たり、SDGsへの取り組みを意識するかという設問に「意識する」「どちらかと言えば意識する」と回答した学生は計57.6%で過半数となりました。
さらに、SDGsに取り組んでいることで志望度が上がると答えた学生は計73.9%に上りました。
今後も関心が高まるとみられるSDGs。資金調達を含む日ごろの企業活動はもちろん、人材採用やさらなる事業拡大を見据えた意味でも、社会課題と向き合う事業内容の企業は、コンテストに挑戦する価値があるかもしれません。
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