900万円の自己資金を元手に、日本政策金融公庫から600万円の資金調達に成功した元住吉(神奈川県川崎市)のお洒落なイタリアンバル「osteria Toto(オステリア トト)」/倉橋芳希オーナー
まずは、倉橋さんの自己紹介からお願いします。
神奈川県川崎市の元住吉でイタリアンバル「オステリアトト」を経営しております倉橋芳希です。1982年山口県で生まれ、中高は横浜の進学校で寮生活をしていました。その後、慶應義塾大学に進学しましたが、中退してしまいました。もともと麻雀が好きだったこともあり、雀荘の店員として働いていましたが、経理を担当するようになり、数年で役員にまで昇進しました。
独立して起業をしようと思ったきっかけは?
やはり、一番は、いつか自分の店をもちたいと思っていたことですね。以前は何となく毎日を過ごしていましたが、本当にこれでよいのかと。前職の経営方針に疑問を感じていたところ、よいタイミングで学生時代に同居していた友人が恵比寿の某有名イタリアンで働いていることを知りました。「イタリアンのお店開きたいと思っているのだけど、いっしょにやらない?」と誘ったことがきっかけでどんどん話が進んでいきましたね。構想期間を含めると1年半くらいでしょうか?その間に、そこのイタリアンの店長がきてくれることが決まり、自分たちのコンセプトに合う物件を探し回りました。ああでもない、こうでもないと3人で話している時間はとても楽しく、起業の魅力の1つでもありますね。
では、皆で自己資金を出し合って共同経営の形をとられたのですね?
いいえ、資本を出したのは僕一人です。共同経営はうまくいかないって昔からよく言うじゃないですか。絶対に成功させる自信があったので、お店が繁盛して大きくなったときに、余計なことでもめたくないですしね。責任は全て僕がかぶればよいかなと。オステリアトトのキッチンを任せる2人には、余計なことを考えず、料理に専念してほしいという思いがありました。
すごいですね。資金調達はどのような方法で行ったのですか?
雀荘時代にためた自己資金をもとにしました。ただ、それだけではとても足りませんでしたね。山口県の両親にもお願いして少し借り入れをしました。それで、まず何とか900万円集めました。しかし、もともとのお店のコンセプトとして、たとえお店そのものは小さくても、外観や内装にはとことんこだわりたかったので、それでもまだまだ足りなかった。目標は1500万円だったので。
そこで、何とか融資をうけることが出来ないか?とまずは、銀行に相談にいってみました。自己資金がそれなりにあったので、とても親切に話を聞いてくれました。やたら保証制度をすすめられましたが・・・。様々な融資制度を紹介してもらう中で、日本政策金融公庫という機関を教えていただきました。その中に、新規創業融資というものがあり、それを利用することに決めました。
手続き等は全部ご自分で行ったのですか?
基本的にはそうですね。前職で、おもに経理を担当していたので、資金調達の手段というのは色々知っていました。ですから、紹介されたその日のうちに、日本政策金融公庫に行き話を聞きました。手続き自体は思っていたよりも難しくなかったですね。
それから、事業計画書を作成しました。この事業計画書が非常に大事だと金融関係の知人から聞いていたので、特に力を入れて作成しました。
- 初期投資は何につかうのか?
- いくらかかるのか?
- 運転資金はどれくらいか?
- また、どのくらいの収益が見込めるのか。
見栄ははらず、現実に実現が可能だと思われる数字を落とし込んでいきました。日本政策金融公庫の方も、親切にアドバイスしてくれました。
そして、申請から約1ヶ月で600万円の資金調達に成功しました。融資の基準は、やはり自己資金がカギになるということを聞いていたので、自己資金900万円の3分の2という基準から、600万円で申請しました。とにかく1円でも多く資金が必要だったので、融資が決まった時は本当にうれしかったですね。いよいよ、自分達の思い描いていたビジョンが現実のものになると。
合わせて1500万の資金調達に成功したわけですね?
はい、そういうことになりますね。とにかく初期費用を節約することで、自分の思い描いた店のコンセプトから外れるのは絶対に嫌だったので、資金調達に奔走しました。その時はあまり意識していなかったのですが、今考えると、日本政策金融高校に融資してもらう前に、自己資金(両親からの借り入れもありますが)をしっかり作れたことが良かったのではないかと思います。
ちなみにそこまでこだわったお店のコンセプトというのは何ですか?
まずは、お客様に目で楽しんでいただくことですね。オステリアトトのシェフはもともと恵比寿の某有名店で店長として働いていた腕利きなので、料理の味にはこだわっているし、どこの店にも負けない自信があります。でも、そのおいしい料理を引き立てるのって、お店の雰囲気だと思うんですよね。お店の場所が商店街なので、周りの飲食店も昔ながらの作りのお店が多くて。その中でひときわ目立つ外観。そして、どんな料理が出てくるのかわくわくしてくるような有名店にも負けないお洒落な店内。最高においしい料理を目で十分に楽しんでいただいた後に、最高においしい料理をたっぷり味わっていただく。これがオステリアトトのこだわりですね。
特におすすめのメニューは何ですか?
アヒージョは本当においしいですよ。マッシュルーム、エビ、変わり種で砂肝は絶品です。もちろんイタリアンバルなので、パスタ、ワインにもこだわっています。
オステリアトトの今後の展望を教えてください。
はい、オステリアトトは「最高の料理をまずは目で楽しんでいただき、そして味わっていただく」というコンセプトで、開店して早くも1年が過ぎようとしています。この元住吉という住宅街にお店を作った理由は、地域の皆様に知っていただき、地元密着のアットホームな雰囲気でお店を盛り上げていきたいと思ったからです。この1年間で、熱心にお店に通ってくださる地元のファンの方がかなり増えたと思います。そういう意味では、狙い通りといったところでしょうか。今後、2店舗、3店舗と拡大していくのではなく、まずはこの元住吉でナンバー1のイタリアンバルを目指してがんばっていきたいと思います。よろしくお願いします。
資金調達に成功した倉橋さんから、これから起業する方へのメッセージをお願いします。
とにかく思いついたらまず行動することですね。起業において資金調達は非常に重要であることは間違いありません。月並みですが、お金がなければ何もできないですしね。とにかくまずは、銀行や日本政策金融公庫に相談に行ってみてください。そして、正直にすべて話してください。自己資金、融資してほしい資金、見込める収入、予定している運転資金。それらを聞いたうえで、銀行が必ずあなたに合った資金調達方法を見つけてくれます。なぜなら、担当者はどんな形であれ絶対にお金を貸したいからです。
最後に、起業を成功させるためのアドバイスがあれば教えてください。
まずは、他にはない自分のお店のコンセプトをはっきりさせることですね。これは飲食店に限らないと思います。イタリアンバルというカテゴリーのお店はたくさんあるし、同じ元住吉にもお店はたくさんあります。その中で、自分の店にしかないコンセプトをはっきりさせ、それを普段の業務を通して常に実行していく。これが成功の秘訣だと思います。
倉橋さん、どうもありがとうございました。
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