保証人と連帯保証人の違いをわかりやすく解説!なってはいけない理由や支払い拒否できる条件と勝手にされた場合の対策
この記事では、上記のような疑問や悩みを解決します。
保証人と連帯保証人は、 債務者に代わって債権者の求めに応じなければならない義務を負っています 。
この保証人(連帯保証人)制度は、 債権者の債権回収を容易するための制度 です。
保証人と連帯保証人では 責任の範囲が異なります 。
責任の範囲が異なっているために、保証人と連帯保証人とでは、債権者の求めに応じなければならない範囲も異なるのです。
したがって、保証人は債権者の求めに応じて何をどこまで対応しなければならないのか、一方で、連帯保証人は債権者の求めに応じて何をどこまで対応しなければならないのかを理解しておく必要があります。
十分に理解しないうちに保証人・連帯保証人となってしまうと、思わぬ損害を被る可能性があるので注意してください。
この記事では、 保証人と連帯保証人の違いについて詳しく説明していきます。
この記事を読むことで、 保証人が対応しなければならない責任の範囲と連帯保証人が対応しなければならない責任の範囲 をしっかりと理解できるようになります。
- 保証人よりも連帯保証人の方が責任は重い
- 保証人には検索の抗弁権と催告の抗弁権が認められているが、連帯保証人には認められていない
- 連帯保証人は債務者と同程度の責任を負っている
目次
保証人と連帯保証人の違いは何ですか?
保証人と連帯保証人の違いは、次の表のようにまとめることが可能です。
保証人 | 連帯保証人 | |
---|---|---|
責任範囲 | 債務不履行時に借金の一部を返済する責任を負う | 債務不履行時に借金全額を返済する責任を負う |
返済期限 | 債務不履行時に支払期限が到来したとき | 債務不履行時に借金の返済を求められたとき |
債権者の追求 | 債権者は最初に債務者に対して返済請求する必要がある | 債権者は債務者または連帯保証人のいずれかに対して返済請求できる |
複数の保証人(連帯保証人)がいる場合の負担割合 | 借金の一部を担保する場合がある | 借金全額を均等に負担する |
リスク | リスクは保証する借金の金額に限られる | リスクは保証する借金全体に及ぶ可能性がある |
以下では、保証人と連帯保証人の責任の違いがなぜ生じるのか、そのもとになっている考え方のポイントを説明していきます。
- 主債務か保証債務
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
- 分別の利益
保証人と連帯保証人の違い① 主債務か保証債務
主債務とは、 借り手が債権者に対して負う債務のこと であり、例えば、借り手が銀行からお金を借りた場合には、借り手が銀行に対して返済しなければならないお金が主債務となります。
保証債務とは、 債務者が負う債務を保証人または連帯保証人が代わりに返済することを約束する債務のこと です。
保証債務は、 債務者が支払い不能に陥った場合に発生 します。
保証人は、主債務者が債務不履行に陥った場合、主債務者が負う債務を代わりに返済する責任があります。
保証債務とは、保証人が主債務者の返済義務を代わりに負うことを意味します。
一方、連帯保証人は、主債務者が債務不履行に陥った場合、主債務者が負う債務を代わりに全額返済する責任があります。
つまり、 主債務者と連帯保証人は、同じ債務を同じ責任範囲で負担する ことになります。
したがって、 保証人と連帯保証人の主な違いは、保証債務の責任範囲が異なること です。
保証人は主債務者の一部の債務を代わりに返済する責任があり、連帯保証人は主債務者の債務全体を代わりに返済する責任があります。
保証人と連帯保証人の違い② 催告の抗弁権
催告の抗弁権とは、 お金を貸した人から保証人が貸した金を返してほしいなどの請求を受けたとき、保証人よりも先に債務者に請求してほしい旨、主張することができる権利のこと を言います。
簡単に言えば、催告の抗弁権は、お金を返す約束をした人が、返すことができないときに、お金を貸した人が「お金を返してくれ」という手紙を送っても、債務者が「もうお金を返せない理由がある」と言って、手紙を無視してしまうことができる権利のことです。
ただし、催告の抗弁権を行使する場合は、債務者が理由を証明する必要があります。
つまり、債務者が「もうお金を返せない理由」がある場合は、それを証明しなければなりません。
連帯保証人には、この催告の抗弁権が認められていないため、債権者に対して、債務者に代わり、借りたお金を返さなければなりません。
保証人と連帯保証人の違い③ 検索の抗弁権
保証人には、検索の抗弁権が認められていますが、連帯保証人には検索の抗弁権が認められていません。
債務者に対する検索の抗弁権とは、 債務者が借金を返済するために抵当権や担保物件を提供した場合、債権者がその抵当権や担保物件を差し押さえるために、裁判所から差押え命令が出された際に、債務者が「検索を拒否する理由がある」と主張して、差し押さえを拒否することができる権利のこと です。
例えば、抵当権や担保物件が既に返済されている場合や、債務者が差し押さえを拒否する理由がある場合(例えば、差し押さえの手続きが正しく行われていない場合)には、債務者は検索の抗弁権を行使することができます。
ただし、債務者が検索の抗弁権を行使する場合は、その理由を証明する必要があります。
つまり、債務者が「検索を拒否する理由がある」と主張する場合は、その理由を証明しなければなりません。
また、債務者が検索の抗弁権を行使する場合でも、差し押さえ手続きを正しく行った債権者が優先されることがあります。
保証人と連帯保証人の違い④ 分別の利益
分別(ぶんべつ)の利益とは、 主債務者に代わって複数の保証人もしくは連帯保証人が返済を行う場合、誰がどのような割合で返済を行うか を考えるための概念です。
保証人には分別の利益が認められており、連帯保証人には分別の利益が認められていません。
したがって、保証人と連帯保証人では、返済の際の負担の割合が異なります。
- 複数の保証人がいる場合、各自が負担しなければならない債務の額は保証人の数に応じて按分されます(分別の利益)
- 複数の連帯保証人がいる場合でも分別の利益はないので全員が全額弁済の責任を負わなければなりません。
債務者が自己破産すると連帯保証人・保証人は返済を肩代わりする必要がある
債務者が、自己破産した場合、 保証人・連帯保証人は借金の返済を肩代わりしなければなりません 。
保証人・連帯保証人は、債務者の自己破産によって債務が免除されることはありません。
保証人・連帯保証人は、借金を返済する責任を負っているため、債務者が借金を返済しなかった場合には、保証人がその借金を返済しなければなりません。
つまり、保証人・連帯保証人は債務者の自己破産によって債務から解放されないのです。
債務者が債務整理する前に連帯保証人に請求が来るので注意
債務者が債務整理をする前に、連帯保証人に対しては、債務の履行をするよう請求が来ます。
自己破産などの債務整理は、あくまでも債務者個人の問題 です。
債務整理をすれば、債務者の支払いの義務は免除される可能性がありますが、連帯保証人はその支払い義務が免除されるわけではありません。
したがって、 債務者による債務の履行がなければ、債権者は連帯保証人に対して債務の履行を請求することが可能 です。
そのため、債務整理の前に、債権者が連帯保証人に対して債務の履行を請求することができます。
保証人は支払い拒否できるが連帯保証人はできない
債権者から債務の履行を求められた場合、保証人は支払いを拒否することができますが、連帯保証人については支払いを拒否することができません
。
保証人には、先に説明した催告の抗弁権と検索の抗弁権があるため、一時的に支払いを拒否することが可能です。
ただし、これらの権利を保証人が行使するためには、保証人が借主に資金力があり、かつ、債務者から債権の回収が容易にできることを証明する必要があるため、簡単なことではありません。
一方、連帯保証人には、催告の抗弁権も検索の抗弁権も認められていないため、債権者から請求された場合に、支払いを拒否することはできないので注意してください。
保証人と連帯保証人とでは、行使できる権利に差がある(責任の範囲に差がある)ため注意してください。
保証人・連帯保証人が必要になる契約の種類
以下の契約を結ぶ場合には、保証人もしくは連帯保証人が必要となります。
- 貸金契約
- 奨学金
- 賃貸契約
- 入院の申し込み
貸金契約
多額の資金を借り入れる場合には、貸金契約(借入契約)を結びますが、 その際には、保証人もしくは連帯保証人の設定が必要 です。
貸し手側としては、貸した資金が返って来ず、貸倒れてしまえば、それが損失となってしまいます。
そのため、貸した資金を確実に回収するために、保証人もしくは連帯保証人を設定するのが普通です。
保証人を設定するか、連帯保証人を設定するかは、貸し手によって異なります。
奨学金
貸与型の奨学金を利用する場合、通常、貸金契約を結ぶことになりますから、保証人もしくは連帯保証人の設定が必要 です。
多くの学生が利用している日本学生支援機構の奨学金の場合、 連帯保証人の設定が必要 です。
それ以外の奨学金については、保証人もしくは連帯保証人の設定が必要です。
なお、給付型の奨学金については、賃金契約を結ぶわけではないので、保証人も連帯保証人も必要ありません。
賃貸契約
賃借契約を結ぶ際にも、保証人もしくは連帯保証人の設定が必要です 。
アパートやマンションなどを借りる際に、不動産のオーナーや管理会社と結ぶことになるのが賃借契約です。
貸し手としては、家賃などの支払いが滞った場合に、速やかに滞った家賃を回収するために保証人もしくは連帯保証人を設定します。
賃借契約を結ぶ際に、保証会社による保証を求められるケースもあります。
保証人や連帯保証人を設定しても、滞納した家賃を実際に回収するまでには時間がかかります。
保証会社であれば、素早く資金を回収することができるため、賃借契約を結ぶときに同時に保証会社による保証にも加入を求めるケースが増えてきています。
入院の申し込み
入院の契約を結ぶ場合には、保証人もしくは連帯保証人の設定が必要 となります。
入院を伴う医療サービスは、高額となる傾向があります。
そのため、病院としては、その治療費などを支払ってもらわなければなりません。
しかし、治療費の支払能力がない場合でも、入院そのものはできてしまいます。
したがって、入院時の申込みの際に、治療費の支払い担保として保証人もしくは連帯保証人の設定が必要です。
なお、病院によって、保証人が必要となるか、連帯保証人が必要となるかは違いますので注意してください。
保証人か連帯保証人に自分がなっているか確認する方法
保証人や連帯保証人となる場合、契約書に記名・押印するのが普通
です。
しかし、自分が知らない間に保証人や連帯保証人となっている場合もあります。
自分が保証人、連帯保証人となっているか否かは、 信用情報機関で確認することも可能 です。
以下では、保証人・連帯保証人と知らぬ間になっていた場合の注意点について説明していきます。
- 保証人・連帯保証人に勝手にされた場合は無効になる
- 保証人・連帯保証人の支払い義務は相続されるのでやばい
保証人・連帯保証人に勝手にされた場合は無効になる
民法では、当事者双方の合意によって契約は成立すると考えるので、 勝手に保証人や連帯保証人とされていた場合には、契約無効を訴えることが可能 です。
原則として、 保証契約を締結した時は、契約書面を当該保証人に交付しなければならない旨が貸金業法によって規定されています 。
ただし、特に連帯保証人のケースにおいて、債権者が、連帯保証人の同意があると信じても仕方がないような証拠があるケースでは、同意がなくとも連帯保証人として債務を弁済しなければなりません。
債権者が、連帯保証人の同意があると信じても仕方がないようなケースとは、印鑑証明が付与されていたケースなどが想定されます。
保証人・連帯保証人の支払い義務は相続されるのでやばい
保証人・連帯保証人の支払い義務は相続されるので、保証人・連帯保証人となっていることを知らなかった場合でも、弁済の義務が生じるので注意してください。
相続する場合、被相続人の債務も引き継がれるので、保証人や連帯保証人としての債務も引き継がれる ことになります。
連帯保証人の支払いが困難になった場合の対策
連帯保証人となっていても支払いが難しいという場合も当然あるはずです。
その場合には、以下のような対応を検討してください。
- 貸金業者と交渉する
- 債務整理をする
- 専門家へ相談してみる
貸金業者と交渉する
まずは、債権者である貸金業者と交渉して、支払い額の減額や支払い期限の延長などを交渉 してみてください。
貸金業者としても、債権を少しでも回収したいと考えているので、全く払ってもらえないよりは、少しでも返してもらいたいと考えています。
連帯保証人として、債務の一括払いを請求された場合、債権者との交渉で、分割払いとしたり、当面の金利分の支払いだけで済ませてもらえるケースも あります。
債務整理をする
連帯保証人となって支払いが困難である場合には債務整理をすることも可能です。
連帯保証人は、債務者と同様の責任を負っています。
そのため、 連帯保証人についても債務の支払能力がない場合、任意整理などの債務整理を行えます 。
専門家へ相談してみる
債務の支払いが難しい連帯保証人の方については、 専門家へ相談することも大切 です。
この場合の 専門家とは、一般に貸金業法などに詳しい弁護士 を指します。
連帯保証人となっていることを債権者と争う場合でも、債権者と交渉する場合でも、債務整理をする場合でも、 専門家のアドバイスを受けながら手続きを進めた方がスムーズ です。
保証人と連帯保証人の違いに関するよくある質問
保証人と連帯保証人の違いに関してよくある質問は以下のとおりです。
- Q:連帯保証人になってはいけないと言われる理由はなんですか?Q:連帯保証人は家族にお願いすることはできますか?
- Q:連帯保証人でも払わない方法はありますか?
よくある質問を理解することで、 保証人と連帯保証人の違いについて間違いやすいポイントを把握 できます。
Q:連帯保証人になってはいけないと言われる理由はなんですか?
連帯保証人になることには、いくつかのリスクが伴うからです。
具体的には以下のような理由が挙げられます。
- 債務者が返済不能になった場合、返済の責任が発生する
- 返済期間が長期化する可能性がある
- 自身の信用情報に影響を与える可能性がある
①について、 債務者が返済不能に陥った場合、連帯保証人は債務者と同じ責任を負います 。
つまり、 返済ができなくなった場合には、債権者から返済を求められ、自分自身の財産を差し押さえられる可能性 があります。
②について、 連帯保証人は、債務者とともに返済期間中に支払いを行うため、自身の財政状況に影響を与える ことがあります。
また、債務者が返済期間を長期化させた場合には、連帯保証人も長期にわたって支払いを行う必要があるため、自身の経済的な不安定要因となることがあります。
③について、 連帯保証人として保証することによって、自身の信用情報に悪影響が及ぶ可能性 があります。
つまり、 債務者が返済不能に陥った場合に、自身の信用情報にも傷がつく可能性があるため、将来の資金調達などに影響を与える ことがあります。
そのため、連帯保証人になる前に、返済能力や信用情報の状況をよく考慮して、十分なリスク管理を行うことが重要です。
Q:連帯保証人は家族にお願いすることはできますか?
連帯保証人は、友人などに気軽に頼めるものではないため、家族にお願いするのが一般的です。
ただし、以下のポイントに注意する必要があります。
- 家族関係が悪化する可能性がある
- 家族が負担することになるリスクが高い
- 家族の信用情報に影響を与える可能性がある
①について、家族は親族関係や配偶者など、身近な人々です。
しかし、 債務者が返済不能になった場合、返済義務を負うためには、連帯保証人としての責任を果たさなければなりません 。
そのため、家族関係が悪化する可能性があります。
連帯保証人として家族を指名した場合、家族が負担することになるリスクが高くなります。
これは②に関わるものです。
債務者が返済不能になった場合、 家族が自身の財産を差し押さえられる可能性 があります。
さらに、③について、連帯保証人として家族を指名した場合、家族の信用情報にも影響が及ぶ可能性があるので注意が必要です、
債務者が返済不能に陥った場合には、家族の信用情報にも傷がつく可能性があるため、将来の資金調達などに影響を与えることがあります。
家族が連帯保証人になる場合には、事前に細かく話し合い、リスクについてよく理解したうえで決定することが大切 です。
Q:連帯保証人でも払わない方法はありますか?
連帯保証人は 債権者からの支払い請求を拒否することができません 。
したがって、 連帯保証人は原則、債務の支払い(履行)が必要 となります。
連帯保証人は、本来の借金の契約者(主債務者)と連帯で借金(債務)を負担するための仕組みです。
債権者と連帯保証契約を個別に結んでいると考えることから、債権者から求められた場合には、債務を履行する義務が生じます。
保証人と連帯保証人の違い まとめ
保証人と連帯保証人は、
どちらも借金や債務の返済を保証する人のことですが、その保証の仕方に違いがあります
。
保証人とは、借金や債務を返済する主体である債務者が返済不能に陥った場合に、債権者に代わって債務を返済する人のことです。
保証人は、債務者が返済不能になった場合に、債権者に代わって返済する責任がありますが、 その責任は債務者とは別のものであり、保証人が返済しなければならない金額は、債務者が借りた金額と同じ です。
一方、連帯保証人とは、債務者とともに、同じ債務を負担する人のことです。
連帯保証人は、債務者が返済不能になった場合に、債権者に代わって返済する責任がありますが、 その責任は、債務者と同じものであり、債務者が返済しなければならない金額を、連帯保証人も返済する義務を負います。
つまり、 保証人は債務者の返済不能時に代わりに返済することで保証するのに対し、連帯保証人は債務者と同じ責任を負い、債務者と一緒に返済することで保証するという点に違いがある のです。
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