売掛金担保融資とファクタリング【売掛金ファイナンスコラム】vol.1

中山直哉
中山直哉
更新日2021/12/9
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ファクタリング

皆様、こんにちは。
「資金調達に関するコンサルティング全般」を生業としている中山と申します。

この仕事をはじめてすでに15年を越え、様々なお客様の資金調達のお手伝いをしてくる間に、ご相談いただいた方々の数も今では年間で600~700件を越え、世の中には資金調達の件で悩んでいるお客様がこんなに多いのかと実感しているところです。

経営者の多くの皆さんが抱える問題の一つに、「事業資金を借りたいけれど、自分の会社には担保にできるものが何もない」ということが挙げられます。

皆さんは「売掛担保融資=ABL」(エービーエル・アセット・ベースト・レンディングの略称)と呼ばれる「在庫や売掛金を活用する資金調達の方法」をご存じのことと思います。これは、貸し金の貸し手(金融機関等)と借り手(企業)が、お互いへの信頼関係に基づいて密接なコミュニケーションをとりながら、企業が持つ原材料や商品、売掛金を裏付けとして行われる融資の方法です。

一方、最近、よく耳にする「売掛債権譲渡=ファクタリング」とは、会社の持つ売掛債権を売掛債権買取会社へ手数料を支払って売却。本来、会社で行う債権回収業務を売掛債権買取会社が行うため、会社は直ちに売上債権代金を受け取ることが可能となるというものです。近年の景気動向との兼ね合いもあり、企業における資金調達の方法は多様化しつつあります。その一つの方法としてファクタリングがある訳ですが、この「ファクタリング」は企業にとって売上債権を迅速かつ効率的に回収できるというメリットをはじめ、様々な利点があります。実際、中小企業にとっては最高の資金調達方法といえるのですが、残念ながら、売掛先に通知することで、自社の経営不安の風評被害で取引ができなくなるのではないか、特に売掛先が大手企業の場合は、その懸念を恐れる中小企業経営者は多く、まだ市民権を得るまでには至っていません。

私も微力ながら、ファクタリングが広く使っていただけるように工夫することに力を入れていまして、最近、理事を務める一般社団法人財務会計支援機構の関連会社で、売掛先に通知しない売掛債権買取(ファクタリング)サービスをスタートしました。
この詳細は次回以降でご案内したいと思います。

『売掛金ファイナンスコラム』の第一回目は、この「売掛金担保融資(ABL)」と「ファクタリング(債権譲渡)」の違いについて解説させていただきます。
「そんなこと知っているよ」と思われる方も読者の中にはいらっしゃるかもしれないですが、どうぞご辛抱ください。というのも、実は私のお客様の中にも、プロのはずのコンサルタントの方々の中にも、この両者を混同されている方がいらっしゃるのです。なので、今回は概略を整理してお話するところから始めたいと思います。

まず、「売掛金担保融資(ABL)」と「ファクタリング(債権譲渡)」の一番大きな違いは何かというと、前者の「売掛金担保融資(ABL)」はその名前の通りに融資ですが、「ファクタリング」は融資ではありません。

資金調達する側から言うと、「売掛金担保融資(ABL)」とは所有する売掛債権(売掛金)を担保として融資を受けることです。一方、「ファクタリング」(債権譲渡)とは、資金調達する側から言うと、所有する売掛金(売掛債権)を売掛債権買取会社に譲渡し、その譲渡代金で資金を調達することです。

では、実際に資金調達する場合の違いはなにかというと、実務上は下記のようになります。

資金調達の額

融資であるところの「売掛金担保融資(ABL)」は、顧客の与信、売掛先や売掛金の状況、あるいは入金状況によりファイナンス会社の判断が入るために融資額が大きく変わりますが、すでに確定している売掛金の譲渡である「ファクタリング(債権譲渡)」の場合は、いくら債務者や売掛金の状況が良くても、確定している売掛債権以上の資金調達を行うことはできません。

税金の滞納の影響

「売掛金担保融資(ABL)」の場合は、税金などの滞納があると、ファイナンス会社よりも税務当局の権利が優先されるため、融資額以上の税金の滞納がある場合は融資を受けることはできず資金調達を行うことができません。
一方、「ファクタリング(債権譲渡)」の場合は税金の滞納があっても、原則、売掛金の譲渡は可能です。

手続き上の問題点

「売掛金担保融資(ABL)」は登記事項概要ファイルへの、いわゆる譲渡登記が不可欠ですが、特に売掛先、つまり販売先の承諾を得るなどの通知は特に必要ではありません。
「ファクタリング(債権譲渡)」は、売掛先に対する売掛債権をファクタリング業者(ファイナンス会社)に譲渡するにあたり、売掛先の譲渡承諾、つまり売掛先への通知が不可欠となります。

譲渡禁止条項

大手会社との売買契約に関しては、大抵の場合、譲渡禁止条項がついていることが多く、この条項がある限り、現状では「売掛金担保融資(ABL)」や「ファクタリング(債権譲渡)」による資金調達を行うことができませんでした。
「ファクタリング(債権譲渡)」においては、売掛先の債権譲渡承諾があればこの限りではないのですが、「売掛担保融資(ABL)」においては難しいようです。

そこで弊社が少し前からご案内しているのが、画期的な「売掛金担保融資」です。
次回のコラムで詳しくご案内しますが、その「売掛金担保融資」は、上記のような譲渡禁止条項があっても、継続的に毎月入金が確認できる売掛先の売掛金であれば、売掛金担保融資の担保にみなすという手法をとるファイナンス会社の出現により、弊社の顧客でも相当な数の会社が融資を受けることができました。
その内容に関しては次回、詳しく解説したいと思います。

以上、今回は「売掛金担保融資(ABL)」と「ファクタリング(債権譲渡)」の違いについて大まかに解説してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか?

確認の意味でもう一度、復習しましょう。
「売掛金保融資」(ABL)は売掛金を担保とした融資による資金調達であり、「ファクタリング」(債権譲渡)は確定している売掛金を売却して資金調達する方法です。

それではまた次回に。皆様、ごきげんよう。

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資金調達プロ ファクタリング