事業会社とベンチャーキャピタルから数千万円の資金調達を実施、知識ゼロで使える改善ツール「LOGBOOK」を開発する株式会社pLucky/代表取締役CEO 林宣宏氏

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まずは林社長の自己紹介、生い立ちについてお話いただけますか。

20150413_161129pLucky(プラッキー)の林宣宏です。愛知県名古屋市の出身です。pLuckyを設立する前はネットエイジグループ(現ユナイテッド株式会社)の開発や経営管理の仕事をやらせていただいて、その後は頓智ドット(現株式会社tab)という会社に籍を置いていました。頓智ドットはセカイカメラ(スマートフォン向け拡張現実のアプリ)の開発・運営をしていて、セカイカメラというプラットフォーム上にゲームやECなどいろいろなサービスを展開しようとしていました。しかし指標を取る仕組みがなかったので自社で開発して、指標を取るところからやっていました。そのときに、他の企業もおそらく指標を取るのに苦労しているのではないか、ニーズはありそうだなということに気づき、今回の起業のきっかけとなっています。
ネットエイジグループに入社する前は、大学が京都大学だったこともあり卒業後も京都にいまして、いずれは独立しようと考えていました。当時は一人でラーニング・マネジメント・システムを開発していました。

 

元々はプログラマーだったんですね。

20150413_161059コンピュータが好きで、趣味としてプログラミングをやっていました。確か小学生3,4年生のころ、ディズニーの「トロン」というコンピュータグラフィックを活用した映画がありまして、これを見てコンピュータというのはすごそうだなと子どもながらに思いました。当時は名古屋市に住んでいたのですが、近くにコンピュータを貸し出してくれて好きなようにプログラミングができるという場所がありました。そこに通いつめてベーマガ(BASICマガジン)などのプログラムを打ち込んでゲームをしていました(注:当時はCD-ROMは存在せず記憶媒体はフロッピーディスクが主流であったが高価だったため、ゲームなどのプログラムが印刷された雑誌を見ながらパソコンに一字一句打ち込んでいた)。自分でもゲームやクイズのプログラムを書いていて、素地はそれなりにあったのですが、大学ではそちらの道には進みませんでした。大学入学後、もう一度やってみてもおもしろそうだなと思い、プログラミングを再開しました。
当時は今と違ってGUI(Graphical Use Interface、グラフィカル・ユーザー・インターフェイス:コンピュータグラフィックスとマウスなどを用いて直感的な操作を可能にする操作方法のこと)もなく、子どもだったからということもありゲームをつくるのは難しかったのですが、大学入学後は昔と比べてかなり簡単になりましたね。
実は司法試験の勉強をするにあたってお金が必要だったのですが、プログラミングのアルバイトや派遣登録をして稼ぐことができました。当時は給料も高かったですし。アルバイトや派遣よりも直接企業から受託した方がよりお金が入ってくるので、大学卒業して1年後くらいに法人化しました。当時はITで人材教育の仕組みを作るという仕事をしていて、eラーニングで必要な機能についての知識が蓄積していたので、自分でLMS(Learning Management System ラーニング・マネジメント・システム:インターネットでeラーニングを配信するプラットフォーム)を開発しました。今でいうEdTechのはしりでしたね。開発はほぼ完了してこれからどうやって売ってくか考える段階で、当時標準化が進んでいた規格がありました。開発したLMSはその規格のものよりも優れた機能ではありましたが、このままで売れるのかどうか悩んだ挙句、事業の勉強をするためにネットエイジグループにジョインしたという訳です。

 

独立するきっかけをもう少し詳しく教えてもらえますか。

20150413_160652他の企業も指標を取るのに苦労しているだろうからビジネスになるかもしれない、という事業のシードを見つけ、そろそろ次のステージに進もうかと思っていたタイミングで会社の状況が変わってきていたので、2011年9月に退職しました。その後2か月ほどいくつかのVC(ベンチャーキャピタル)をまわってお話させていただいたところ、インキュベートファンドさんが興味を持ってくれて最初にやりましょうと言っていただきました。そして11月に株式会社pLuckyを設立し、その後シードラウンドでインキュベートファンドさんに出資していただきました。
設立した当時はこれから分析系の事業が伸びるだろうと言われていた時期でしたが、国内で同様の事業を始めようしていていたチームはあまりありませんでした。シードラウンドで資金調達できたのは、着目した事業ドメインがよかったこと、自分自身がコーディング(プログラミング)できること、(多くの起業家を輩出しているベンチャー企業の)ネットエイジにいたこと、だと思っています。
会社設立時は私一人でしたが、設立前から約束していた元同僚が最初にジョインし、その後にもう一人加わりまして、創業メンバーは3名で始めました。

 

2013年5月にサイバーエージェント・ベンチャーズさんから資金調達しましたね。

はい、そうですね。資金使途としては主に開発費です。知っている人に対してごく一部を外注することはありましたが、原則として内製しています。今回(2015年3月)アドウェイズさんとグローバル・ブレインさんから出資いただいたのですが、やはり今回も開発のための資金調達です。まだまだ製品開発のステージですね。

 

創業時を含めて3回資金調達していますが、苦労された点は何でしょうか。

20150413_160716まだ大きな売上が上がっていない状況ですので、なかなか数字で投資家を説得することは難しく、我々が目指していること、やりたいことをきちんと伝えることに時間をかけました。売上が上がっている場合はわかりやすいのですが、残念ながらまだその段階には至っていないので。ただ売上ではないですが、KPIを定めてそれを上げていくといったことは努力しました。次回の資金調達は、これまでよりは楽にできるようにしたいですね。

 

逆に今回の数千万円の資金を調達できた要因はどのようにお考えですか。

一つは、KPIをきちんと定めてロジックを確立し、実現したい未来を数字で表すことができたということです。もう一つは、やってみたい、実現したいという熱意を投資家に対してきちんと伝えられたことです。特に熱量が高いうちにアクションを起こしたということがよかったのだと思います。我々はまだまだスタートアップなので、熱意や想いが重要で、アドウェイズさんとグローバル・ブレインさんは我々の想いを理解していただいたので出資していただけたと思っています。特にアドウェイズさんは広告・分析の会社なので、今後事業シナジーがあると思っていただいています。

 

貴社のサービスについてお話いただけますか。

「SLASH-7」と「LOGBOOK」という2つのサービスがあります。「SLASH-7」はユーザー一人ひとりが定着しているかどうか、細かく測定する行動分析ツールで、最初に提供を始めたサービスです。お使いいただいているお客様には細かいデータまで取れる点などを評価いただいているのですが、仮説を自分で立てる必要があり、細かいところまでいろいろやらないといけないので難しいという声も一方で少なくありませんでした。いくつかの企業と話をして気づいたこととして、そもそも何を見たらいいのか、何をしたらいいのか、という点で悩まれる方が以外と多いということでした。であれば、どこを見て何をすればいいか簡単にわかる仕組みのほうが喜ばれるだろうと考えて開発したのが「LOGBOOK」です。
「LOGBOOK」はアプリからデータを受け取り、サービスの課題を発見し、対応施策を提案するサービスです。特長としては、1)簡単に導入できる2)初心者でも使いこなせる3)アルファ版の期間は無料で使える、という3点です。特に初心者でも使いこなせるという点については、簡単な質問に答えるだけで計測すべき指標を自動生成し、その指標のうち課題があるものをピックアップし、課題に対する施策を提案するといったものです。指標の例を挙げると、eコマースの場合は「ユーザーが商品購入後30日以内に再度購入した比率」、掲示板サービスのようなCGM(Consumer Generated Media コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア:インターネットなどを活用して消費者がコンテンツを生成していくメディア)の場合は「ユーザー登録後7日以内にコメント投稿を行った比率」といったものが、いくつかの質問に答えると自動的に生成されるのです。施策の提案については、現時点では施策に関する記事や対応サービスの紹介などですが、将来的には高度な自動コンサルテーションといったものを目指しています。

 

今後の展望についてお聞かせください。

20150413_160758もっと多くのお客様に我々のサービスを使っていただいて、お客様に喜んでいただきたいです。インターネット関連のスタートアップやベンチャー企業であれば、我々のサービスを使うのが当たり前という状況をつくれるといいですね。まずはそれを目指していきたいです。日本では年間約30万アプリがリリースされていて、そのうち個人が5-6割リリースしているとすると、少なく見積もっても我々のターゲットである法人は10万アプリをリリースします。法人であればある程度本気で開発しますし、リリース後の分析もそれなりに必要になってきます。こういった法人のお客様に数多く使っていただければ、我々も大きく成長できます。さらには日本だけではなく、アジアにも拡販していきたいです。アメリカでは日本よりも分析ツールは多様で先を行っていますが、アジアではまだこれからなのでチャンスは大きいです。
pLuckyのサービスのおかげで自分たちのサービスがよりいいものにできたよ、とお客様に言われるよう今の事業を育てていきたいです。さらに今のメンバーとずっと楽しくやっていければいいですね。

 

林社長、お忙しい中、本日はどうもありがとうございました。

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