ZEHマンション標準化へ動く住宅業界、省エネ・環境性能が資産価値の鍵に
公開日:2021年10月29日
[著]高田 泰
【この記事の要約】
☑ 住友不動産や積水ハウスが新築するマンションをZEH仕様にする方針を公表
☑ 補助制度利用で不動産大手が相次いでZEHマンションに参入
☑ ZEH化が難しいとされるタワーマンションも克服の動き
☑ マンションZEH化は投資物件としての価値にも影響を与えそう
政府が2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に舵を切る中、住友不動産や積水ハウスが新築するマンションをZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様にする方針を明らかにしました。
マンションは投資物件の代表格ですが、立地や築年数などと同様に省エネ・環境性能も資産価値に大きな影響を与えることになりそうです。
住友不動産は分譲マンション事業で今後、設計・開発するすべての分譲マンションに省エネ性能「ZEH Oriented」を標準仕様化します。
施工現場での脱炭素を推進するため、事業パートナーの建設会社に使用電力のグリーン化を斡旋、要請します。
分譲マンション事業では、今後、設計、開発する全ての分譲マンションにおいて、商品性、居住性を落 とすことなく、省エネ性能「ZEH-M Oriented」を標準仕様化することと致しました。
引用:2021年9月28日ニュースリリース|住友不動産株式会社
積水ハウスは2023年度以降に販売する分譲マンション「グランドメゾン」の全戸をZEH、全棟をZEHマンションにします。
既に2021年度の新規着工案件はすべて基準をクリアする仕様としています。
積水ハウス株式会社は、2023年以降に販売する分譲マンション 「グランドメゾン」の全住戸をZEHに、また全棟をZEH-M(ゼッチ・マンション)にします。
引用:2021年10月28日ニュースリリース|積水ハウス株式会社
大阪・上町台地に積水ハウスのZEHマンション
写真撮影:高田 泰
大阪市のJR大阪環状線・玉造駅から長堀通を西へ進み、大阪女学院大学付近で大阪城がある北に向かって緩やかな坂道を上ります。
坂を上り切った辺りで左手にタワーマンションの建築現場が見えます。住宅大手の積水ハウスが中央区上町で建築している高層分譲マンション「グランドメゾン上町一丁目タワー」です。
大阪市の中央部は南北約12キロにわたって幅2~3キロの上町台地と呼ばれる高台が続きます。
古くから大阪の中心となってきた場所で、現在は大阪城、難波宮、四天王寺、住吉大社という歴史的建造物に加え、帝塚山など高級住宅街が続いています。
そんな上町台地で建築されている上町一丁目タワーは単なるタワーマンションでありません。
技術の粋をつぎ込んで省エネ性能を高めたZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド=ゼロ・エネルギー・ハウス指向型住宅)仕様のタワーマンションです。
経済産業省から「超高層ZEHマンション実証事業」に採択され、11月下旬の完成に向け、仕上げの作業が続いています。
断熱窓とエネファームで省エネ性能を向上
上町タワーは高さ128メートル、地上36階のタワーマンションで、総戸数188戸。
大阪の中心部に位置するだけあって、間取りや階層によっては分譲価格が億を超すいわゆる“”億ション”で、省エネ性能についても工夫が重ねられています。
タワーマンションにとって大開口の窓は景色を堪能できる最大の魅力といえますが、断熱面では最大の弱点になります。
そこで、上町一丁目タワーはシングルサッシで採光や眺望を確保しながら、高い断熱性を持つ高性能真空ペアガラス(複層ガラス)をすべての開口部に採用します。断熱性能は通常のサッシの9倍といいます。
さらに、給湯や床暖房のため、全戸に家庭用燃料電池のエネファームを取り入れます。
ガスから効率よくお湯と電気をつくることができ、二酸化炭素排出削減効果は基準モデルのマンションより29%も高くなっています。
タワーマンションはZEH Orientedで建築
ZEHはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの頭文字を取って作られた言葉です。
断熱性の向上など省エネ性能を高めたうえ、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入で年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指すもので、ZEHマンションはそのマンション版になります。
経産省の基準では、省エネなどで20%以上の一次エネルギー消費量を削減し、再エネの導入を含めて100%以上削減した住宅が該当します。
再エネを含めた削減量が75~100%だとNearly ZEH(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、再エネ導入がなく、省エネ性能だけを達成した住宅はZEH Orientedです。
ZEHマンションは一般に屋根などに導入した太陽光発電で電力供給しますが、高さが上がって総戸数が増えるほど、1戸当たりの屋根などの面積が小さくなります。
その結果、基準を満たすのが難しくなり、住宅業界では5階が限界といわれています。
このため、上町一丁目タワーもZEH Orientedで建築されています。
住友不動産はすべての分譲マンションをZEH基準に
経産省と国土交通省、環境省は、2030年までに住宅メーカーなどが新築する住宅がZEH基準を満たし、新築戸建て住宅の6割に太陽光発電の導入を目指して取り組みを展開しています。
2050年までには既存建築物の平均省エネ性能をZEH基準まで高める方針です。
マンションに対しては、ZEH化に必要な費用の一部を補助する制度をスタートさせました。
その結果、東京建物、大和ハウス工業、野村不動産など住宅大手や不動産大手が相次いでZEHマンションに参入しています。
その中で住友不動産は9月末、今後設計するすべての分譲マンションをZEH仕様にする方針を打ち出しました。
さらに、施工する建設会社に対し、再エネ由来の電力を斡旋し、使用を要望します。
この発表はマンションZEH化の流れを決定する大きな一歩となりました。
さらに、積水ハウスは10月末、2023年度以降に販売する分譲マンション「グランドメゾン」の全戸をZEH、全棟をZEHマンション仕様とすることを明らかにしました。
2021年度に着工した新築物件はすべて、ZEH仕様になっています。
大和ハウス工業や東京建物もタワーマンションをZEH化
同業他社の間でも、住友不動産や積水ハウスの方針に追随する動きが見えます。
タワーマンションはこれまで、ZEH化が難しいとされてきましたが、最新技術を導入して克服しようとしているのです。
大和ハウス工業は大阪市西区靱本町で分譲タワーマンションの「プレミストタワー靱本町」を建築中です。
建物は地上36階建てで、総戸数353戸。二重サッシや高性能断熱材、エネファームなどを導入、一般的なマンションと比較して一次エネルギー消費量を33%削減する計画です。2023年の完成を目指しています。
東京建物は東京都多摩市関戸で分譲タワーマンションを開発しています。
「ブリリアタワー聖蹟桜ヶ丘ブルーミングレジデンス」で、地上33階建ての総戸数520戸です。
外壁の断熱性能を高め、高断熱サッシと高効率給湯設備を導入します。完成は2022年の予定です。
省エネ・環境性能が資産価値維持の要因に
こうしたマンションZEH化の動きは投資物件としての価値にも多大な影響を与えそうです。
マンションは従来、立地や専有面積、交通の便、築年数、施設管理の状況などを勘案して値段がつけられてきました。
そこに省エネ・環境性能が加わるとみられているのです。
首都圏や京阪神では再開発事業が相次ぎ、多くがオフィスや商業施設だけでなく、マンションを併設しています。
いわば、税金を投入してマンション建築を促進している格好で、人口減少時代に住居が増え続ければ、マンションも資産価値をある程度維持できる勝ち組とそうでない負け組に二分されるでしょう。
中でも、家余り状態となった地域では、マンションの資産価値急落が予想されます。
そんなとき、ZEHマンションは省エネ・環境性能が付加価値となり、資産価値の低下を食い止められる可能性があります。
ZEHマンションに注目することは、投資資産の価値を守る重要なポイントの一つになりそうです。
著者情報
高田泰
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員。2015年に独立し、フリージャーナリストとして雑誌、ウェブニュースサイトなどで執筆している。
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