経済産業省、経営改善支援の好事例集公表 信用保証協会の有効活用を促す目的
[著]奥井 久雄
この写真はイメージです。
【この記事の要約】
☑ 2021年8月17日、経済産業省が「信用保証協会による中小企業者に対する経営改善支援の好事例集」を公表
☑ コロナ禍での信用保証協会による経営改善支援とは
☑ 公表された好事例集の内容を紹介
経済産業省は2021年8月17日、全国の信用保証協会が行った経営改善支援の好事例をまとめ、公表しました。
好事例集公表は、昨年から続く新型コロナウイルス感染症拡大による経済への影響を背景に、中小企業が資金調達や経営改善面でのサポートを行う信用保証協会の有効活用を促す目的もあります。
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、中小企業者等に対する資金繰り支援に加えて、経営改善支援を実施する重要性が増しています。そのため、全国51の信用保証協会から、経営改善支援の取組状況や今後の方針等の報告を受ける「信用保証協会ブロック会議」を開催し、各信用保証協会による経営改善支援の取組の好事例を取りまとめました。
今後の協会への相談などに役立てられるよう、公表された好事例をいくつか挙げてみました。
信用保証協会ブロック会議での好事例を公表
好事例集として公表されたのは、経産省の出先機関として全国に8つある経済産業局主催で開かれた「信用保証協会ブロック会議」での報告をとりまとめたものです。
信用保証協会は各都道府県に1つと、特別市の4つを合わせて51ある公的機関。
主な業務は、中小企業や小規模事業者が、銀行など民間の金融機関から事業に必要な融資を受ける際、担保や保証人を用意できない場合に、協会が代わりに保証人となることで融資等の資金調達を円滑に進められるよう信用力を補完するのが目的です。
長期化するコロナ禍で重要度増す信用保証協会のサポート
今回のブロック会議開催と好事例集の取りまとめ公表は、信用保証協会のサポートが中小企業の経営改善への一助としたいという意義もあります。
2020年初頭から現在まで続く新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ禍)の影響が今後も見通せず、長期化が予想されるからです。
また、コロナ禍の期間中となる2020年5月から2021年3月までの間、信用保証協会によるセーフティネット保証4号、5号または危機関連保証の利用が前提の民間金融機関からの「実質無利子・無担保融資」の保証承諾実績が約137万件、約23兆円となったことも、今後の中小企業に対する支援の重要さを示しています。
好事例を項目別に数例ずつ紹介
公表された好事例は、(1)信用保証協会独自の経営改善支援、(2)外部機関と連携した経営改善支援、(3)経営改善支援に係る体制拡充・人材育成について、という3項目に分けてまとめられています。
各項目にはさらに小項目が設けられ、具体例が示されているという体裁です。
項目ごとに具体例を数件ずつ紹介していきます(カッコ内は信用保証協会の各ブロック名)。
(1)信用保証協会独自の経営改善支援
最初の「(1)信用保証協会独自の経営改善支援」は、①プッシュ型の経営改善支援 ②PL改善を促すための取組、の2項からの具体例です。
①プッシュ型の経営改善支援
①は、プッシュ型という表現から分かるように、信用保証協会の職員による能動的な支援が中心となっています。
支援内容は、企業向けにDMを送付したり、職員が出向いての説明や面談などを行うことで信用保証協会の認知度アップを図っていることが挙げられていました。
企業に足を運んで一緒に課題を探り、一緒に考えて、まずは小さな成功体験を積んでもらうという「クイックヒット型」の支援(関東地方信用保証協会)や、コロナ禍による影響が顕著な企業の事業状況を確認し、必要であれば専門家とともにビジネスモデルの再構築に関して支援する(近畿地方信用保証協会)といった好事例がありました。
<関東地方信用保証協会>
事業者の行動変容につなげるために、保証協会職員が事業者のもとに足を運び、一緒に課題を探り、一緒に考え、先ずは小さな成功体験を積んでいただく「クイックヒット型」の支援を開始。<近畿地方信用保証協会>
コロナ禍の影響が特に多いと考えられる約2,600者に対して業況確認を行い、必要に応じてビジネスモデルの再構築に関する支援を専門家とともに行う。
②PL改善を促すための取組
続く②は、PL(損益計算書)改善を促す取り組みに主眼を置き、外部の専門家を派遣しての支援を行った例(関東地方信用保証協会)が目を引きました。
<関東地方信用保証協会>
(中略)多岐にわたる分野の専門的なアドバイスを行うため、外部専門家の派遣については、中小企業診断士や税理士だけでなく、デザイナーや広告プランナー、フードコーディネーターなど、多様な専門家と提携し、事業者のニーズに合わせた専門家派遣を実施している。
派遣する専門家は、中小企業診断士や税理士といった経営や経理関連にとどまらず、デザイナーや広告プランナー、フードコーディネーターなど多様な専門家が含まれているのが特徴的といえます。
また、複数の信用保証協会が事例として挙げていたのが、経産省推奨で企業の健康診断ツールともいえる「ローカルベンチマーク(ロカベン)」の活用による支援です。
ロカベンの効果を高めるためにIT・デジタル化を強化し、リモート会議システムを導入(四国地方信用保証協会)という例もありました。
<四国地方信用保証協会>
(中略)McSSやローカルベンチマーク等の経営診断ツールを積極的に活用するとともに、より効果を高めるため、タブレット等の端末やリモート会議システムを導入し、IT・デジタル化を強化。
引用:「信用保証協会による中小企業者に対する経営改善支援の好事例集」P5
基本的に協会独自の支援は能動型で、ほかにもクラウドファンディングの活用を促したり、海外向けバイヤーとのマッチングによる売上向上支援も掲載されています。
(2)外部機関と連携した経営改善支援
続く「(2)外部機関と連携した経営改善支援」は①金融機関との支援方針のすり合わせや役割分担②外部機関と連携して経営改善支援を実施する仕組み③他機関の担当者との顔の見える関係性の構築、の3項目での好事例です。
①金融機関との支援方針のすり合わせや役割分担
①は金融機関とのミーティングを積極的に行うことで、多くの企業の課題を共有、問題解決に向けた協働を実施(中国地方信用保証協会)したり、金融機関による経営支援が困難な場合は信用保証協会が率先して敬遠支援を実施する体制を構築(北海道・東北地方信用保証協会)している、といった例でした。
<中国地方信用保証協会>
金融機関とは積極的にバンクミーティングを開催している他、定期的に個社支援の協議を開催し、保証協会と金融機関とで多くの企業の課題を共有。その上で課題解決に向けて保証協会の専門家派遣事業も活用しながら協働している。<北海道・東北地方信用保証協会>
保証申込時点において、金融機関による経営支援の実施状況を確認し、保証協会との目線合わせを実施。そのうえで、金融機関による経営支援が困難な事業者に対しては、保証協会が率先して経営支援を実施する体制を構築している。
②外部機関と連携して経営改善支援を実施する仕組み
②では、地元金融機関、商工団体、中小企業支援機関、信用保証協会の実務担当者をメンバーとするワーキンググループを作り、同グループが個別の支援ロードマップを作成しての集中支援(北海道・東北地方信用保証協会)のほか、県の中小企業支援機関と連携し、士業以外にもITやフード関連のコーディネーターといった専門家派遣の仕組みを構築(関東地方信用保証協会)、活用している、といった好事例がありました。
<北海道・東北地方信用保証協会>
地元金融機関、商工団体、中小企業支援機関、保証協会の実務担当者がメンバーとなるワーキンググループを立ち上げ。同ワーキンググループを通して個別中小企業に対して支援のロードマップを作成し、各機関が連携した集中支援を実施している。<関東地方信用保証協会>
県の中小企業支援機関との連携により、中小企業者の多様なニーズに応えるため、士業以外にもITコーディネーター・フードコーディネーター等様々な専門家を派遣できる仕組みを構築している。
③他機関の担当者との顔の見える関係性の構築
③では、県全体ではなく小さな「地域」に目を向け、地元の金融機関・商工団体の担当者同士の会議を定期的に開き、組織的・継続的に行われることを目指した対応を実施している(中部地方信用保証協会)、という例のほか、中小企業診断協会や産業振興財団といった支援団体との連携により、それぞれの得意分野を生かした協働支援を行い、関係性を深めている(中国地方信用保証協会)という活動内容もありました。
<中部地方信用保証協会>
県全体よりも小さな「地域」に着目し、属人的な取組となりがちな地域の金融機関や商工団体との連携した個社支援を、組織的・継続的なものとするよう、保証協会が各機関の窓口担当者による会議を定期的に主催している。
(中略)その他の機関とは、中小企業診断協会と連携して個別相談会(保証協会担当者同席)を実施したり、産業振興財団等の支援団体と各々の得意分野を活かした協働支援を行なうなどして関係性を深めている。
(3)経営改善支援に係る体制拡充・人材育成について
最後の「(3)経営改善支援に係る体制拡充・人材育成について」は、①体制の拡充②人材の育成、の2項目での好事例でした。
①体制の拡充
①では、2021年4月に設立した新たな部署による、資金繰り関連の支援実施(関東地方信用保証協会)、同じく新部署による提案型の経営改善支援実施(九州地方信用保証協会)などが挙げられていました。
<関東地方信用保証協会>
2021年4月から専門部署を設立し、事業者の資金繰り予定表の作成支援や、資金繰りの改善支援を実施している。<九州地方信用保証協会>2021年4月に経営支援の専門部署を立ち上げ。地元金融機関出身者を含むメンバーが、事業者に対し、保証協会も共に考える提案型の経営改善支援を実施している。
また、コロナ禍を乗り越えるため、地元金融機関からの出向者を受け入れての経営支援部署を増員しての連携強化(中部地方信用保証協会)という体制拡充例も見受けられました。
<中部地方信用保証協会>
コロナ禍を乗り越えるために地元金融機関との連携強化。幅広い金融専門知識の活用を行う観点から、地元金融機関からの出向者の受け入れ等により、経営支援課の人員を増員。
②人材の育成
②では、信用保証協会の職員が年間で約2,000者との面談を行い、経営課題の把握やアドバイスなどを日常的に行うことで、経営支援に関する経験の蓄積の推進(中国地方信用保証協会)や、支援センターなど他機関の支援策についての勉強会を定期的に開催(四国地方信用保証協会)することでの人材育成を目指している、という例がありました。
<中国地方信用保証協会>
年間2,000者程度との面談を保証協会職員が実施。経営課題の把握や簡単なアドバイスなどを日常的に行うこ とで、経営支援に関する経験を積んでいる。<四国地方信用保証協会>
(中略)中小企業の様々な課題を解決していくため、県・よろず支援拠点・事業承継引継ぎ支援センター等の他機関の支 援策に関する勉強会を定期的に実施。
著者情報
奥井久雄(おくい ひさお)
首都圏の大学卒業後、某省庁向けの週刊機関紙発行会社で総務経理、記者・整理として編集局に約10年勤務、この間、海外特派を経験。同社を退社後、海外に移住し現地の日本語フリーペーパーで編集・紙面構成、デザイン作成などを担当。その後フリーで、まとめ記事ほかを不定期で受注。
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