「改正金融機能強化法」が施行~コロナ禍で続く地銀再編を支援

中出 眞澄
中出 眞澄
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地方銀行数の推移

参考:全国銀行協会 各種統計資料

【この記事の要約】

・新たに盛り込まれた資金交付制度の創設、合併に伴う費用を補助
・繰り返された金融機能強化法の改正、コロナ禍で加速
・地銀、第二地銀で進む銀行再編
・独占禁止法の特例施行も再編を後押し

金融機能強化法に資金交付制度を創設

昨年来のコロナ禍で疲弊する地域経済を支える地方銀行などの再編を国が支援する「改正金融機能強化法」が7月21日に施行されました。

 地方銀行や信用金庫といった地域金融機関が経営統合や合併に踏み切る際、必要な費用を国が一部負担する「資金交付制度」の創設を盛り込んだ改正金融機能強化法が21日、施行された。

引用:毎日新聞「地銀再編、資金を支援 改正金融機能強化法施行」2021/7/21

金融機能強化法は地銀などに公的資金を注入して自己資本を強化するため2004年に施行された法律ですが、今回の改正の目玉は、地銀などの経営統合や合併に必要な費用を国が一部負担する「資金交付制度」の創設。

この制度により、金融庁が認定すれば30億円を上限に、システム統合・店舗看板の変更・ホームページの作成などの費用全体の3分の1が預金保険機構から交付されます。

対象になるのは改正法の施行日から2026年3月末までで、早くも7月以降に合併などを発表している地銀が制度の利用を視野に入れています。

参考:金融庁報道発表資料「令和3年金融機能強化法改正に係る政令・内閣府令案等の公表について」

 

繰り返された改正と条件緩和

金融機能強化法(正式名称:金融機能の強化のための特別措置に関する法律)は2004年、地方銀行などに公的資金を注入し、自己資本を強化するために施行されました。

当初は2008年3月までの時限立法でしたが、以下のような改正が繰り返され、2020年3月末までに延べ37金融機関に対し6840億円の公的資本が投下されました。

 

・2004年 8月 金融機能強化法施行
・2008年12月 改正法施行 リーマンショックに対応、注入要件緩和
・2011年 7月 改正法施行、東日本大震災の被災地金融機関の再編条件に返済免除
・2020年 8月 改正法施行 コロナ感染拡大に対応、注入の要件緩和
・2021年 7月 改正法施行 資金交付制度の創設

 

なお、度重なる改正法の施行により、

①申請期限の延長
②「収入目標の提示」「経営責任の明確化」策定の免除
③返済期限事実上無期限化
④対象銀行の拡大
⑤保証枠の拡大

など条件の緩和が進められました。

 

金融機能強化法に基づく銀行への資本参加実績
※表の幅が画面に収まりきらない場合はスライドできます。

銀行名 年月 金額・億円
紀陽HD(紀陽銀行) 2006.11 315
豊和銀行 2006.12 90
北洋銀行 2009. 3 1000
福邦銀行 2009. 3 60
南日本銀行 2009. 3 150
みちのく銀行 2009. 9 200
じもとHD(きらやか銀行) 2009. 9 200
じもとHD(きらやか銀行) 2012.12 200
じもとHD(きらやか銀行) 2012.12 100
じもとHD(仙台銀行) 2011. 9 300
三十三FG(第三銀行) 2009. 9 300
東和銀行 2009.12 350
高知銀行 2009.12 150
フィデアHD(北都銀行) 2010. 3 100
宮崎太陽銀行 2010. 3 130
筑波銀行 2011. 9 350
七十七銀行 2011.12 200
東北銀行 2012. 9 100
豊和銀行 2014. 3 160

出典:預金保険機構(令和3月末現在) 銀行のみ抜粋

 

地方銀行を中心に進む再編

2021年4月5日現在の金融庁の銀行免許一覧によると、銀行の分類は都市銀行4、信託銀行13、その他16、外国55、地方銀行62、第二地方銀行38となっています。

平成が始まる1989年に13行あった都市銀行は財閥間の垣根なども越えて4メガバンク(グループ)に集約されています。しかし、その間も105行体制の続いていた地方銀行(第二地銀を含む)では、ようやく2018年から再編の動きが目立ってきました。

第二地銀は合併転換法(金融機関の合併及び転換に関する法律)に基づいて、相互銀行や信用金庫から普通銀行に転換したもので、地方に根づいた比較的小規模な銀行が多く、バブル崩壊後にも経営破綻や吸収合併で約30行が姿を消しています。

次の表は、2018年からの地銀再編の具体例と今後の再編が明らかになっているもの。ここ数年、地銀の決算は総じて赤字が続いており、長引くコロナ禍などの懸念材料も山積。加えて金融機能強化法による国からの資金注入を受けた銀行は、「地方銀行は多すぎる」との菅首相の言葉に代表される国からの圧力もあり、水面下で再編を模索する動きは止まらないとみられています。

 

・2018年5月 東京都民、八千代、新銀行東京 → きらぼし
・2019年4月 近畿大阪、関西アーバン → 関西みらい
・2020年1月 徳島、大正 → 徳島大正
・2020年10月 親和、十八 → 十八親和
・2121年1月 第四、北越 → 第四北越
・2021年5月 三重、第三 → 三十三
・2021年10月 福井、福邦 → 福井が福邦を子会社化
・2022年10月 フィデアHD(荘内、北都)、東北→経営統合
・2024年4月 青森、みちのく → 経営統合

 

独禁法の特例も再編を後押し

地銀再編を後押しするため、国が用意した支援策は改正金融機能強化法だけではありません。

2020年11月に施行された「地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律」という長い名前の法律は、同一地域の地銀の合併に独占禁止法を適用しない「地銀合併特例法」とも言えるユニークな法律です。

こんな特例法ができるキッカケとなったのは、2016年初めに明らかになった親和銀行を子会社に持つ「ふくおかフィナンシャルグループ」と十八銀行との経営統合の動き。これに公正取引委員会が「長崎での貸し出しシェア7割」を問題視したため、決着まで2年もかかっています。

その後、2020年10月に親和銀行と十八銀行は合併して十八親和銀行として同FG傘下に入っています。

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