個人事業主が法人化するメリット・デメリットやタイミングを徹底解説!必要な手続きやかかる費用、後悔するケースとは
この記事では、上記のような疑問・お悩みを解決します。
個人事業主が法人化する際にはさまざまな手続きが必要となります。
また、複雑な手続きだけでなく費用もそれなりにかかるため、前もってどのような手続きがあるのか、必要な費用はどれくらいなのかを知っておくことが重要です。
そこで今回は、個人事業主が法人化するメリット・デメリットやタイミング、さらに必要な手続きやかかる費用、後悔するケースなどについて詳しく解説します。
個人事業主の人でこれから法人化を検討している人はぜひ参考にしてください。
- 個人事業主が今までしていた事業を引き継ぐこと
- 資産だけでなく負債も引き継ぐ
- 税金や手続きなど個人事業主といくつか異なる点あり
- 法人化することでメリットも大きいがデメリットも増える
目次
法人化とはどういう意味?簡単に解説
法人化とは、個人事業主として事業をしていた人が、法人を設立した中で今までの事業を引き継いで行っていくことです。
法人化することで、個人事業の際の資産だけでなく負債も全て新しい会社が引き継ぐことになります。
資産とは、個人事業主の際に所有していた預金、売掛金などの金銭債権、そのほか建物や備品などの固定資産のことで、負っていた売掛金や未払いの代金なども含まれます。
新しい会社を設立すること自体、通常の会社を設立することと、法人化することではあまり変わりはありません。
ただし、設立までの過程は異なり、法人化の場合は以下の通りとなっています。
- 新しく会社を設立する
- 個人事業主が所有していた資産や負債を新しい会社が引き継ぐ
- 新しい会社は、個人事業主の資産や負債を引き継いた上で事業を継続する
通常の会社設立ではほとんどゼロからのスタートに対し、 法人化した場合は資産や負債を引き継いでのスタートとなるため有利といえます。
法人と個人事業主の違い
法人と個人事業主の違いはいくつかありますが、中でも個人事業主は法人とは違って、会社の登記が必要ありません。
また、課せられる税金の負担が異なる点や経費の計算方法などが異なります。
ここでは、法人と個人事業主の違いについて、大きく3つに分けて解説します。
法人化を考えている人は、個人事業主との違いについて理解した上で検討してみてください。
- 手続き・費用
- 税金
- 経費
法人と個人事業主の違い① 手続き・費用
法人と個人事業主の違いの一つ目は、手続き方法や手続きの際にかかる費用です。
個人事業主として開業をする場合は、特別なことは必要なく開業届を税務署へ提出するだけで完了し、申請費用も一切かかりません。
しかし、 法人化し新たに会社を設立する場合には「商業登記」と呼ばれるものが必要となります。
商業登記は、作成するにあたって費用や登録免許税などが必要になり、株式会社だと約24万円、合同会社は約10万円かかります。
さらに会社設立の際には、書類の準備から登記申請までは1週間ほどと時間がかかり、必要に応じて法務局へ出向くなど、それなりに手間と時間が必要です。
法人と個人事業主の違い② 税金(所得税・法人税)
個人で事業を行う個人事業主は、事業で稼いだ儲け分に対して所得税が課せられます。
所得税は、額によって税率が増える累進課税制度となっており、5%〜45%の7段階です。
累進課税のため、儲けとなる所得が多くなればなるほど所得税における税率が高くなります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
一方、法人の場合は、事業で稼いだ所得に対して課せられるのは「法人税」です。
個人事業主は所得の税率が累進課税であるのに対して、 法人税は税率がほぼ一律となっています。
そのため、所得に対する税金の割合が低くなるので、売上や事業規模を大きくする計画があれば、法人化を検討してみてください。
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
所得800万円以下 | 15% |
所得800万円超 | 23.2% |
法人と個人事業主の違い③ 経費
経費とは、収入を得るために要した支出のことで、基本的には法人も個人事業主も収益から控除ができます。
しかし、個人事業主の場合は、仕事とプライベートを完全に分けることが難しく、法人よりも曖昧になることが多いです。
それは、個人と個人事業主をしっかりと区分すること自体が困難なため、発生する経費も事業にかかるものかどうかの判断がしにくいといった現状があります。
例えば、自宅で事業をしている場合、一般的に電気料金の検針メーターは一つしかありません。
このような場合、電気料金を事業とプライベートでまとめて請求されているため、事業において使用した電力を明確に分けることは非常に難しいです。
必要経費にするためには、収入を得るために要した支出でなければならず困難な作業です。
そこで、個人事業では、事業の供用割合に応じた按分計算をする必要があり、これを「自己否認」といいます。
按分計算は個人事業独自の計算ですが、場合によっては法人でも自己否認することがあります。
個人事業主から法人化するタイミングは年収が800~900万円、課税売上高1,000万円
個人事業主が法人化するのはいつでもいいわけではありません。
一般的に、年収が800〜900万円、課税売上高1,000万円になったタイミングが良いとされています。
先に述べたように、個人事業主の所得税率は全部で7段階となっており、所得が上がるごとに税率も上がります。
仮に、所得が695〜900万円未満だった場合、税率は23%ですが所得が900万円を超えた時点で税率33%に上がってしまいます。
しかし、法人化して法人税になった際には、利益が800万円以下であれば15%の法人税率、800万円を超えると23.2%となり税率がかなり違ってくるのです。
そのため、所得が800〜900万円になれば損益分岐点に近くなり、このタイミングで法人化するのが一番しやすいとされています。
法人化の判断に迷った際は、一度税理士などに相談すると安心です。
法人化できるのにしない人の主な理由
個人事業主の中には、法人化できるのにしていない人もいます。
その理由としては、主に以下の6つです。
- 手続きが面倒
- 法人化は費用がかかる
- 社会保険の負担がかかる
- 役員報酬の変更ができない
- 税務が複雑になる
- 税理士のサポートがいる
法人化をしない理由で最も多いのが、面倒な手続きをしたくないからです。
法人を設立するためには、本業を進めながらさまざまな手続きをする必要があるため、そう簡単にはできません。
また、面倒な手続きだけではなく、資本金を用意したり、法人化を専門家に任せたりとそれなりに費用もかかってきます。
さらに、法人化にすると社会保険への加入義務が生じ、個人事業主の時よりも負担が増えます。
そのほか、役員報酬は1年経たなければできない、税務作業が増える、複雑な税務作業は税理士のサポートが必要となるなど、さまざまな負担を避けるため、法人化にしないケースも多いのです。
個人事業主が法人化するメリット
個人事業主が法人化することで、個人事業主では得られないさまざまなメリットがあります。
法人化を検討している個人事業主はぜひ参考にしてください。
- 所得が一定以上超えると税負担が減る
- 金融機関や取引先などからの信用が高くなる
- 法人として経費負担でき、退職金の準備も可能
- 社会保険に加入できるので社員も雇いやすくなる
- 決算期を自由に決めることができる
- 赤字(欠損金)の繰り越しは10年間になる
所得が一定以上超えると税負担が減る
先にも述べたように、 法人と個人事業主とでは課せられる税金の種類が異なります。
個人事業主が納める所得税は累進課税制度となっており、所得が増えれば増えるほど税率が高くなってしまいます。
【所得税の税率】
課税される所得税 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円〜330万円以下 | 10% |
330万円〜695万円以下 | 20% |
695万円〜900万円以下 | 23% |
900万円〜1800万円以下 | 33% |
1800万円〜 | 40% |
一方で、所得税の税率は最大45%の7段階あるのに対し、法人税は最大でも23.3%の2段階しかなく、所得が高くなっても税率はあまり変わりません。
【法人税の税率】
課税される所得税 | 法人税率 |
---|---|
800万円まで | 15% |
800万円〜 | 23.2% |
法人税の方がほぼ一定の税率となるため、収入が増えて黒字が多くなるのであれば、法人化にするメリットが非常に大きいです。
そのほか、個人事業主として消費税の課税事業者になっている場合は、法人化すると消費税の課税を遅らせることが可能となりメリットが増えます。
新設した法人の資本金が、1,000万円未満であれば1期目が免除、特定期間の売り上げが1,000万円以下の場合は2期目まで消費税が免除になります。
金融機関や取引先などからの信用が高くなる
個人事業主が法人化することで得られるメリットの中に、金融機関や取引先からの信用が高くなることが挙げられます。
個人事業主よりも、株式会社や合同会社などの法人組織の方が資金力があり、経営がきちんとされていると見なされることが多いです。
そのため、金融機関などからの信用が高くなれば、事業のために資金調達する際でも融通が利きやすくなるので、社会的な信用は非常に重要です。
さらに、 法人化することで、資金調達がスムーズにできるようになると事業の発展にもつながります。
法人として経費負担でき、退職金の準備も可能
法人化することで、退職金の準備が可能になることも大きなメリットのひとつです。
経費負担で準備できる退職金は、節税対策になるだけでなく、社員を募集する際にも大きな強みとなります。
さらに、法人の経費負担として個人への手続きもでき、社長は会社から給与をもらうことになります。
このような形をとることも節税対策の効果があるため、法人化することでさまざまな経費負担として節税が可能です。
ただし、個人である社長の給与にも所得税と住民税はかかるため、法人と個人を合わせて考える必要があります。
社会保険に加入できるので社員も雇いやすくなる
法人化をすることで社会保険への加入が必要になります。
社会保険の支払いは、厚生年金も含まれているため、個人事業主の際に払っている国民健康保険よりも高額です。
しかし、厚生年金は国民年金と比較して、 将来老後を迎えた時に受け取ることのできる金額が高く、しっかりとした備えとなります。
さらに、社会保険に加入できる福利厚生があることで、社員が雇いやすくなるだけでなく、優秀な人材が多く集まることが期待できます。
会社にとって優秀な人材が集まることは、今後の発展に大きく貢献してくれる可能性が非常に高いです。
決算期を自由に決めることができる
法人化するメリットに、自分で自由に決算期を決定できることが挙げられます。
個人事業主であればすでに決められている日程となり、締め日は12月31日、納税は3月15日までです。
繁忙期は事業ごとでも異なるため、忙しい時期に決算の事務手続きをしなければならない場合は本業の妨げになってしまうことも考えられます。
しかし、 法人化することにより、繁忙期を避けて自社にとって都合のいい時期を決算期にすることができます。
繁忙期と納税の時期が重なってしまう事業の場合は、事務手続きをスムーズに行えるため、決算期を自由に決められる点は非常に大きなメリットです。
赤字(欠損金)の繰り越しは10年間になる
法人化することで、 赤字である欠損金の繰り越しが10年間可能となります。
事業を営むにあたって、所得が赤字になってしまう場合も考えられますが、このような場合も法人化することで繰り越すことができ、10年のうちに生じた黒字と相殺できるため心配がありません。
個人事業主では、赤字の繰り越しは最大でも3年となっており、法人化して黒字と赤字を相殺することで節税にも繋がります。
ただし、繰越欠損金制度の適用を受ける場合は、事前に税務署で「青色申告の承認」を受ける必要があるので注意してください。
個人事業主が法人化するデメリット
たくさんのメリットがある個人事業主の法人化ですが、デメリットもいくつか存在します。
メリットと同様に、デメリットもしっかりと理解して法人化を検討することが大切です。
- 法人化には登記費用がかかる
- 人によって社会保険の加入は魅力的ではない
- 決算報告書や法人税申告書の作成が必須になる
- 納税額は増えてしまう場合もある
法人化には登記費用がかかる
法人化して会社を設立するためには、いくつかの費用がかかります。
設立するために登記費用が発生し、株式会社ではおよそ25万円、合同会社だとおよそ12万円ほどです。
さらに、手続きを専門家へ依頼する場合には、プラスで費用が必要になってしまいます。
一方で、資本金に関しては1円からでも設立できるため、事業を進めるために無理のない金額に自由に設定することが可能です。
ただし、資本金を必要以上の金額にしてしまうと、後々税金面で不利になることも考えられます。
設定する場合には、しっかりと検討してから決めることが重要です。
そのほか、会社の住所変更や、役員の重任登記、事業の目的が変わった際などにも諸々費用がかかるため注意してください。
人によって社会保険の加入は魅力的ではない
個人事業主の社会保険への加入は、雇用する従業員が5名以下の場合は任意です。
しかし、 法人化した際には、雇用の有無や雇用している従業員数に関わらず、社会保険への加入が義務付けられています。
法人化すると、従業員の社会保険料である健康保険料と厚生年金保険料は、会社と従業員の折半となるため、保険料の支払いが増えて負担になる可能性が出てきます。
そのため、個人事業主の時よりもコストがかかる点には注意が必要です。
また、経営者として複雑である社会保険制度もしっかりと勉強して理解しておく必要があります。
さらに、一度社会保険に加入すると、途中で辞めることはできません。
法人化を検討している場合は、従業員が多ければ多いほど負担が増えることになるため、社会保険料の負担についてもしっかりと考えておく必要があります。
決算報告書や法人税申告書の作成が必須になる
法人化することで、個人事業主の時よりも確実に申告書や会計などの事務作業が増えます。
特に、法人税申告書の作成などは税理士に頼むことも予想され、コストがかかる可能性が高いです。
しかし、コストを下げるために、事務作業が増え本業に負担がかかることは避けたいところです。
そのためには、やはり決算報告書や法人税申告書などの作成は依頼することになり、その分のコストや手間も考えて法人化を検討する必要があります。
納税額は増えてしまう場合もある
事業がうまくいき、黒字計上が続く法人であれば問題ありませんが、赤字が続くと納税額が増えてしまう可能性があります。
個人事業主が納税する所得税は、所得が赤字の際は納税額が発生しません。
一方で法人化した場合、 都道府県民税や市区町村民税に関しては「均等割」となっており、赤字でも必ず一定額を納税する義務があります。
自治体によって支払う金額は異なりますが、最低でも年間7万円ほどとなるため、赤字の大小に関わらず支払う必要があるという点には注意してください。
個人事業主が法人化するまでの手順と必要な手続き
個人事業主の手続きはさほど難しくありませんが、法人化するとなればいくつかの手続きが必要です。
また、同じ法人でも、起業して法人を設立する場合と、個人事業主が法人化するまでの手順は少し異なります。
個人事業主が法人化する場合は、すでに行っていた事業を引き継ぐための4つのステップが必要となるので、検討している個人事業主の人は、ぜひ参考にしてください。
STEP1 法人設立の手続き
まず法人化するためには、法人設立の手続きをしなければなりません。
手続きの内容は、定款の作成と認証、登記申請、資本金の払い込みなどです。
定款の認証は、株式会社の場合は公証人による認証の手続きが必要となりますが、合同会社の場合は必要ありません。
しかし、株式会社も合同会社も定款の作成は必須です。
定款認証が終わり、資金の払い込みが終われば、全ての必要書類を完成させて法務局で登記申請を行います。
法人設立の手続きは、株式会社や合同会社の種類により異なる点があるので、注意してください。
STEP2 個人事業主廃業手続き
法人の設立が無事に済んだら、次は個人事業の廃業手続きを行います。
管轄の税務署に「廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を提出します。
その際に、青色申告をしていた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を、雇っている従業員がいた場合は「給与支払事務所等の解説・移転・廃止の届出書」を合わせて提出してください。
ここで注意しなければならない点は、個人事業を廃業しても最後の年の確定申告はしなければなりません。
廃業した翌年の確定申告をしっかり行うのを忘れないでください。
さらに、 法人化の初年度は、個人事業の事業所得と、法人化の後の給与所得の2つの申告が必要 となる点には注意が必要です。
STEP3 資産や負債の移行手続き
個人事業の廃業手続きが済んだら、次は事業における資産や負債の引き継ぎを行います。
資産を移行するには3つの方法があり、それぞれの手続きや税法上の取り扱いが異なるので注意して下さい。
- 売買契約
- 現物出資
- 賃貸契約
売買契約は、簡単な手続きで個人事業での資産を法人に売買できますが、不動産の売買には不動産所得税がかかります。
また、現物出資は、財産を法人に貸す方法で賃貸借契約書が必要です。
さまざまなものを引き継ぐことができるだけでなく、時価での算定が可能にはなりますが、算定自体が難しいケースも多いです。
最後の賃貸契約は、法人に財産を貸す方法で、この賃貸契約でも賃貸借契約書を残すことが必要となります。
引き継ぐ債務に関しては、「重畳的債務引受」という設立した法人が個人事業主とともに債務を引き受ける方法と、「免責的債務引受」という法人だけで債務を引き受ける方法の2つがあります。
STEP4 許認可やオフィスなどの契約、名義変更手続き
サービス業や物品販売業などの許認可が必要な事業の場合、店舗やオフィスの賃貸契約を結んでいることがあります。
このような賃貸契約をしている場合には、忘れずに個人から法人へ名義変更を行ってください。
その際、取引に使用している銀行口座などは個人名義のものではなく、新たに法人名義で解説した口座に変更します。
法人の口座は、個人に比べると開設の審査に時間を要するため、法人登記が終わったら早めに法人口座の開設をしておくとスムーズです。
個人事業主から法人化して後悔するケースと対策
個人事業主から法人化することで、税金などさまざまなメリットがあります。
しかし、法人化した人の中には後悔してしまう人も少なくありません。
これから法人化の検討をしている場合は、後悔するケースもしっかりと確認しておいてください。
また、自らがそうなった場合の対策方法も合わせて解説するので、知っておくといざという時安心です。
- 法人化手続きにより発生する費用が高い
- 経営状況や利益に関係なく最低限の税金や維持費が発生する
- 社会保険の負担が増えた
- 会社のお金を自由に使えない不便さ
- 管理しなければならないことが増えた
- 役員の任期や就任、辞任など法に乗っ取り対応しなければならない
- 定款変更は都度対応が必要
- 経営方針の変化やズレが生じてしまった
- 廃業・解散が容易ではない!債権・債務で清算手続きも必要に
法人化手続きにより発生する費用が高い
個人事業主から法人化する場合には、定款の作成と認証、登記申請などの手続きが必要です。
この手続きの時点からそれぞれ費用がかかり、定款の認証には約5万円、登記費用である登録免許税などには約25〜30万円かかります。
法人化する際には、株式会社や合同会社など形態ごとで費用の差はありますが、多くの必要書類も提出しなければならず、場合によっては税理士などに依頼する費用もかかってきます。
自分で書類の作成をすることは可能ですが、法人の設立は法律の規定をしっかりと守らなければならず、そう簡単ではありません。
法人化を検討している場合は、準備の段階からお金がどれだけいるかを知っておくことが大切です。
経営状況や利益に関係なく最低限の税金や維持費が発生する
法人化をすると、経営の状況や利益に関係なく、会社自体が存在しているだけで、最低限の税金や維持費を必要とします。
売上があまり見込めず、赤字になっても税金や維持費は必ず支払わなければなりません。
もしも、資本金が多い、従業員が増えたといった場合には、設立した後の維持費はさらに高額です。
維持費には、毎月の家賃や光熱費、通信費などの固定費だけでなく、従業員の給料や福利厚生費など滞りがないようにすることが重要です。
法人となれば経費で処理できる部分も当然多くはなりますが、 税務調査も入るため、利益だけではなく事務的な処理についてもしっかりと行う必要があります。
また、その分の手間も必要になるため、税金や維持費がかかるだけでなく時間がかかることも覚えておいてください。
社会保険の負担が増えた
法人化により、社会保険の負担が増えることも後悔するひとつの要因となります。
個人事業主の場合は、従業員5名以下であれば社会保険に加入する義務はありません。
しかし、 法人化すると従業員の数に関わらず、必ず社会保険に加入しなければなりません。
もちろん、従業員が1人もおらず社長だけの場合でも、社会保険には強制的に加入することになります。
従業員にとっては、社会保険に加入できることは嬉しい制度となりますが、経営者側からするとどんな経営状況でも支払わなければならず大変になる可能性も考えられます。
また、社会保険は法人と従業員とで折半となり、給与のおよそ30%が社会保険料となります。
そのため、その半分の15%は法人側で支払うことになるのです。
例えば、年収500万円の場合だと、社会保険料はおよそ150万円となり、その半分のおよそ75万円は会社が負担します。
従業員が多くなれば、その分社会保険料の負担額も大きくなる点には注意が必要です。
また、 従業員が40歳を超えると介護保険の適用も開始されます。
従業員の年齢によっても必要経費が大幅に上がることが予想されるため、法人化することで思っているよりも負担が増える可能性があることも、しっかりと理解しておく必要があります。
会社のお金を自由に使えない不便さ
法人化することで、個人と法人のお金はしっかりと区別される点には注意が必要です。
売上金はあくまでもお客様からいただいたお金であり、個人のものではありません。
そのため、従業員がおらず社長だけしかいないとしても、法人化した時点で会社のお金を自由に使用することはできません。
法人化すると法人用の口座を作りますが、ここから現金を引き出して私的に使用するなどと勝手なことをしてしまうと税務上のトラブルになる場合もあります。
利益を多く出している会社でも、利益分で家賃や仕入れ、従業員へ支払う給料などを賄っており全て会社のお金なのです。
また、給与分以外のお金を勝手に使用してしまうと、横領扱いになる可能性もあります。
ただし、不正ではなくしっかりとした目的があってお金を使用したい場合には、いくつかの処置をすることで使用が可能です。
・賞与に関して届出を出す
・退職金を支給する
・役員貸付金を利用する
・経費で落とせるものの見直しを行う
役員報酬の調整を行うことで、個人だけでなく法人にも現金を多く残すことができます。
しかし、金額の調整を行うと頻繁に変更することはできず一定に保たなければなりません。
法人税が高くなってしまうデメリットも考えられるため、役員報酬の調整は慎重に行うべきです。
賞与の場合は「事前確定届出給与に関する届出書」という書類を税務署に提出することで、経費として計上が可能となり、その分の税金を軽くすることができます。
ただし、会計期間の開始日から4ヶ月以内、または株式総会決議から1ヶ月を経過する日でなければならないため注意してください。
そのほか、 退職金という形で個人の収入にしたり、役員貸付金という形で会社からお金を借りたりすることで、自由にお金を使うことができます。
また、役員貸付金に関しては「金銭消費賃借証明書」を会社と交わす必要があり、返済する際には利息もつく点には注意が必要です。
また、経費で落とせるものを見直しすることも重要な処置です。
管理しなければならないことが増えた
個人事業主が法人化することで、社会的な評価が上がることや、税金の支払いが安くなるなどざまざまなメリットがありますが、その一方で多くの責任を負うようになります。
例えば、従業員を雇用すれば、保証のための管理が増えるだけでなく、売上に関係なく給料の支払いが生じます。
そのため、個人事業主の時と比べるとはるかに多くの手続きや届けをしなければならず、管理することが複雑になるのです。
・経理事務の煩雑化
・法人化に伴う法律の確認や理解
・社会保険の手続き
・株主総会や議事録の作成など
そうなると、事務的な処理や手間が増え、自分で全て行うのはかなり厳しく経理を雇わなければならない可能性もでてきます。
税金関係には専門の知識が必須となるため、安全に事務作業を管理していくためには、税理士や会計士と顧問契約することが多く、その分の費用も必要になるケースが少なくありません。
個人事業主から法人化すると、多くの手続きが複雑化し、なかなか自分だけでは管理しづらい可能性があるということを覚えておいてください。
役員の任期や就任、辞任など法に乗っ取り対応しなければならない
法人化することで、役員の任期など、法にそって対応しなければならないことが多くなります。
非公開の株式会社での役員の任期は10年となっており、同じ人が継続して役員をすることになっても手続きを怠るということがあってはいけません。
このような手続きもしっかりと行わなければ、会社が解散してしまう危機に陥る可能性があります。
役員の任期だけでなく、辞任や就任などが変更した場合も2週間以内に届け出をしなければなりません。
その際は、会社の携帯によっても洋式は異なりますが、変更登記申請書の提出や、株式総会議事録、株主リストなども必要になります。
ただし、 任期満了での役員の退任ではほとんど問題はありません。
このように、社内で勝手に就任や辞任などをすることはできず、しっかりと法に乗っ取った対応をすることは、取引先との信用問題にも大きく関わってくるため非常に重要です。
定款変更は都度対応が必要
定款とは会社を管理するために必要なルールが書かれている重要なものです。
定款の内容は、一度決まるとなかなか変更することはできません。
ただし、組織や資本、会社の事業内容が変わる場合には変更することは可能となり、単に書き換えるだけではなくしっかりとした手順を踏んで定款の変更を行う必要があります。
- 株主総会にて定款変更について特別決議を行う
- 株主総会の内容についてしっかりとした議事録を作成する
- 定款変更の内容に応じては、登記申請を行い、会社設立の際に作成したでた最初の定款(原始定款)と共に保管する
また、株式会社が定款を変更したことで、登記申請が必要になる項目については次の通りです。
・絶対的記載事項の変更(商号・事業目的・発行可能株式総数・本店所在地変更)
・相対的記載事項の変更(株券発行・取締役会設置・監査役設置・公告の方法)
登記申請は法務局で行いますが、基本として登録免許税として3万円の費用がかかります。
ただし、本店の法務局管轄外移転や、支店を設ける・移転するなどの場合は費用が異なるので注意してください。
また、 役員の任期については登記事項ではないため不要となります。
このように、定款の変更は登記申請が必要な項目や不要のものなど、正確に判断することが難しい場合も多いです。
絶対的記載事項ではない部分を変更する際には、税理士や社労士などの専門家に相談するとスムーズに進めることができ安心です。
経営方針の変化やズレが生じてしまった
法人化の際には、複数人で資金を出し合って会社を立ち上げたり、1人であっても出資金を出してくれる人が他にいたりとさまざまなケースがあります。
最初はみんなで同じ方向性だったにもかかわらず、会社を立ち上げ法人化して事業を営んでいく過程で、方針の変化やズレが生じてしまったという場合になることも考えられます。
このようなズレが生じても、社長だけの一存で経営方針を変更することはできません。
共同で経営している人や、出資してくれた人にも発言権があるため、思っているよりも意見が食い違ってこじれてしまう場合があります。
法人化した後の意見の対立は、解散や分離につながることがあるだけでなく、お金の問題も発生してしまい、法人化したことを後悔する可能性も多いです。
そのため、解散や分離に至らなくても、経営方針が変更した事柄は届出が必要となるという点においても後悔を感じやすい原因のひとつとなっています。
さらに経営方針の食い違いがあれば、役員の辞任や解任が起こることも多々あります。
法人の場合は、個人事業主の人事よりも、罰則や決まりごとがある点にも注意しておいてください。
例えば、会社法においては、株主総会決議があれば辞任や解任は可能です。
辞任は本人の意思で自由に辞めることができ、会社から反対されても基本的には承諾不要で辞任ができます。
しかし、「取締役の立場にある人が不利な時期に辞任」する場合には、損害賠償義務が発生するため注意しておいてください。
そのほか、経営方針のズレが生じた時だけでなく、不祥事を起こした場合の解任なども会社法の内容に含まれます。
ただし、取締役を解任させたいなどがあった場合は退職届けを提出するだけでは解任できません。
原則として50%を上回る議決権を持っている株主を集め株主総会を開きます。
そして、 出席した株主の過半数が賛成することで解任することができます。
この場合、解任の理由が不当であれば、会社側が損害賠償責任を負うことになるため、しっかりとした理由が必要です。
廃業・解散は容易ではない!債権・債務で清算手続きも必要に
法人化した後にさまざまな問題で経営を続けることが困難となり、廃業や解散に追い込まれる場合もあります。
しかし、法人化の廃業や解散は時間も手間もかかるため、そう簡単ではありません。
法人化の廃業手続きをする際には、会社の清算や解散を申し出る必要があり、手順は以下の通りとなります。
- 解散日から2週間以内に法務局で「解散・清算人選出の登記」を行う
- 「移動届書」を税務署と市区町村に提出する
- 休業の場合は「休業することを記載した移動届出書」を提出する
解散が決議されてから清算の手続きまでは、2ヶ月以上を要するといわれており、すぐには決算結了できないので注意してください。
さらに、解散の手続きには登録税4万1,000円と、官報の広告費用3〜4万円ほどが必要なため、 廃業や解散ではなく「休業」という形をとることで、手続きが簡単・コストがかからないうえに、再び法人に戻ることができます。
ただし、休業中は地方法人税の均等割の納付が義務付けられており、費用が発生する点には注意してください。
そのほか、会社自体に債権や債務が残っている状態であれば解散はできません。
仮に解散時に資産の売却や債権の回収などをして資金を作ることができれば、通常清算という形で債務を弁済することができ、解散を成立させることが可能です。
また、債務超過で完済できない場合は、裁判所に対し破産申し立て、もしくは株式会社であれば特別清算をしなければなりません。
中でも破産する場合は、弁護士によって費用が異なり、債権者や債務の金額が多いほど高額になるので注意が必要です。
こうして法人を廃業や解散をした後で、個人事業主に戻ることを考えている場合は、「個人成り」という手順を行います。
ただし、業種や希望の特例事項によって手順は少し異なります。
上記の手順以外にも法人用の銀行を廃止することや個人用の開設、健康保険の書き換えなど、さまざまな作業を抜かりなく行う必要があります。
個人成りの手続きは大変ですが、青色申告特別控除を受けることができたり、屋号を使用して銀行口座を開設できたりと多くのメリットがある個人成りの開業届はとても重要です。
法人化に関するよくある質問
個人事業主が法人化するにあたって、よくある質問をまとめました。
法人化を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
インボイス制度とは、2023年10月1日から開始されることが決まっており、取引の内容や消費税額などの記載要件を満たした請求書などを発行・保存しておく制度です。
要件を満たした請求書を保存しておくこと、仕入れをする側にはメリットがあり、消費税の仕入税額控除を受けることができます。
現段階では、個人事業主が法人化し条件さえ満たすことができれば、最長で2年間の消費税免税期間が適用されます。
ただし、インボイス制度が開始になると、免税事業者は取引内容などの記載要件を満たした請求書を交付することができません。
そのため、事業者によっては消費税の免税期間がメリットにならない場合があるからです。
これにより、法人化するのであれば、インボイス制度が導入されるまでにできるだけ早く行い、免税期間も活用するようにしてください。
ただし、どちらの場合も一般的に「農業法人」と呼ばれ、2つを合わせた総称となっています。
農業が法人化することで得られるメリットには、経営でのメリットと制度上でのメリットとがあり、それぞれの内容は以下の通りです。
- 事業主への課税軽減や給与所得控除などの税制免除
- 制度融資が個人よりも拡大され補助金などの制度も利用可能
- 社会保障が手厚くなり福利厚生の増進を図れる
- 農地取得の負担が軽減できる
- 法人からの給与で生活資金が定期化できる
- 経営内容が数値化され合理化できる
- 雇用契約が明確化され人材の確保と育成が可能
農業で法人化することで得られるメリットはたくさんありますが、反対にデメリットもいくつか発生します。
所得の少ない経営では、税制上の負担が大きくなるだけでなく、会計の複雑さや手間、経費負担が増えてしまいます。
そのほか、社会保障や運営管理費などの経費も増えるため負担になる可能性が高いです。
また、法人化することで解散や廃止の際は、全ての財産を清算したり、期間が必要だったりとそう簡単ではありません。
まず、費用においては、設立準備段階でかかる「創立費」と設立後の開業準備段階でかかる「開業費」とに分けられます。
それぞれを経費として計上することは可能ですが、初年度に全てを費用計上できるわけではありません。
2つの費用は繰延資産として計上していくことになり、毎年少しずつ償却していく形となります。
計上する際は「任意償却」することによって節税することが可能となるので覚えておいてください。
建設業許可は、個人事業主の段階でも取得することは可能ですが、法人化すると個人事業主で取得した建設業許可は引き継ぐことができません。
そのため、法人化前に取得しておくと再度取り直すことになり、手間がかかるだけでなく、取得費用も倍かかることになるのです。
取得の費用は知事許可の場合で、証紙代9万円と行政書士への報酬におよそ10〜15万円ほど必要になります。
そのため、数年で法人化をしようと検討している個人事業主は、法人化してから建設業許可を取得する方が費用も手間もかからずに済みます。
法人化 まとめ
個人事業主が法人化することで、さまざまなメリットがありますが、同時にデメリットも増えてしまいます。
法人化を一度してしまうと、そう簡単に解散などができなくなるため慎重に行うべきです。
メリットやデメリット以外にも、どのような手続きと費用がかかるのかをしっかりと理解しておく必要があります。
また、個人事業主で法人化した人の中には、後悔したケースも少なくありません。
どのような面で後悔したのか、その対策法もしっかりと確認した上で法人化の検討をしてください。
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