京都で高級ホテルの開業ラッシュ、入国制限の解除見込んで皮算用
公開日:2021年11月30日
[著]高田 泰
ザ・ホテル京都パレスBWシグニチャーコレクションbyベストウエスタン(写真撮影:高田泰)
【この記事の要約】
☑ 京都市で高級ホテルの開業ラッシュ
☑ 不動産業界では投資が投資を呼び起こす好循環
☑ 日本の物価の安さが外資系企業の触手を動かす一因に
コロナ禍が続く中、京都市で高級ホテルの開業ラッシュが続いています。
入国制限が解除されれば外国人富裕層の需要を一気に取り戻せるとみているためで、不動産業界では投資が投資を呼び起こす好循環が起きています。
高級リゾートホテルなどで知られる星野リゾート(長野県軽井沢町)が京都・祇園に進出した。
引用:2021年11月12日|毎日新聞
京都・洛北に2021年9月16日、ヒルトンの最上位ブランドのホテル「ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts(ロクキョウトエルエックスアールホテルズアンドリゾーツ)」が開業した。
引用:2021年10月26日|日経XTREND
ただ、デフレが続く日本の物価の安さが外資系企業の触手を動かす一因になっており、喜んでばかりいられない側面も見えます。
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祇園に星野リゾートの都市型観光ホテルが誕生
祇園祭で有名な京都市東山区祇園町の八坂神社。門前の四条通沿いに11月上旬、高級リゾートホテルで知られる星野リゾートの都市型観光ホテル「OMO(おも)5京都祇園」がオープンしました。
OMO5京都祇園は地下1階、地上7階建てで、7タイプ計36の客室を備えています。祇園商店街の一角に位置し、八坂神社の西楼門と境内の緑がすぐ目の前。周囲の狭い路地からは舞妓さんが今にも登場しそうな花街の風情を感じられます。
ホテルを宿泊の場でなく、体験の場と位置づけているのが特徴。どの客室も京都らしさを感じさせる内装にしているほか、朝の祇園を巡るツアーやスタッフが近隣のスポットをガイドするサービスを提供しています。
OMOブランドのホテルは4月にオープンした南区西九条のOMO3京都東寺、中京区恵比須町のOMO5京都三条に続き、京都市内で3施設目。宿泊客が他のOMOブランドホテルのツアーに参加できるようにするなど3施設一体運営で宿泊客獲得を目指しています。
外資系高級ホテルが今後も続々と開業へ
コロナ禍の中、京都市にホテルを開業したのは星野リゾートだけではありません。
京都市北区衣笠鏡石町には9月、米ホテル大手のヒルトンがアジア初となるヒルトン最上位ブランドの「ROKU KYOTO LXRホテルズ&リゾーツ」を開業しました。
鷹峯三山のふもとにある地上4階建てで、114の客室を備えています。1泊1人10万円前後からという高料金ですが、和を強調した豪華な内装、最高級のおもてなしで早くも富裕層の心をつかんでいるようです。
このほか、二条城や京都御所に近い中京区大文字町では10月、米ホテルチェーン・ベストウエスタンホテルブランドの「ザ・ホテル京都パレスBWシグニチャーコレクションbyベストウエスタン」がオープンするなど、2021年はほとんど毎月のように国内外の高級ホテルが開業しました。
2022年以降もこの傾向は続きます。
2022年は米ホテル大手・ハイアットホテル&リゾーツの「ハイアットプレイス京都」が中京区、2023年はタイの高級ホテル「デュシタニ京都」が下京区、2024年は世界的ホテルチェーン・シックスセンシズの「シックスセンシズ京都」と、シンガポールの高級ホテル「京都東山バンヤンツリー」が東山区でオープンを予定するなど、高級ホテルの開業ラッシュが続きます。
京都市の旅館・ホテルは6年半で142施設増加
高級ホテルの増加は統計数字にも表れています。
京都市がまとめた10月末現在の旅館・ホテルの総施設数は684(速報値)。2019年度末の656、2020年度末の679からさらに増えました。
2014年度末の542施設と比較すると、6年半の間に142施設(26.2%)も増えたことになります。
総客室数は2014年度末の2万6,260から2015年度末2万6,297、2016年度末2万7,753、2017年度末2万9,172、2018年度末3万3,603、2019年度末3万6,243、2020年度末3万9,724と右肩上がりで増えています。
この数字だけを見ると、新型コロナで京都市から訪日客のほとんどが消えたとはとても思えません。
その一方で、海外からのバックパッカーらを受け入れてきたゲストハウスや簡易宿所が相次いで廃業し、民泊業界は壊滅状態に陥りました。リーズナブルな料金を売りにしてきたホテルの廃業、身売りも相次いでいます。
世界の人気都市ランキングで1位に
コロナ禍の中、なぜ高級ホテルの建設ラッシュが続くのでしょうか。
1つは京都が持つ高いブランド力です。新型コロナの感染拡大前、日本を初めて訪れる外国人観光客の大半が東京都と京都市を回っていました。外国人の多くが知る日本の都市が東京都と京都市だからです。
中国人、韓国人、台湾人ら東アジアからの観光客は下町の雰囲気が残る大阪市のミナミを好み、リピーターが増えていましたが、大阪市から電車で約30分の距離にある京都市に足を延ばすのも一般的でした。
京都市は欧米の有力旅行雑誌のおすすめ旅行先ランキングで上位の常連です。
米旅行誌「コンデナスト・トラベラー」の2020年世界人気都市ランキングでは、京都市が1位に躍進しています。ミシュランの星がついた飲食店は、3つ星の「吉兆嵐山本店」をはじめ、100店を超えます。
世界遺産の寺社、舞妓さんがいる花街、京町家が並ぶ通りなど京都らしい風情に、外国人は異国情緒を感じてきました。2025年に大阪市此花区の人工島・夢洲を会場に関西万博が予定されていることも、京都市に注目を集める一因になっているようです。
コロナ対策の金融緩和で不動産市場に資金流入
世界のカネ余り状態も京都市への投資を後押ししています。米連邦準備制度理事会は米国の金融緩和縮小を11月中に始める方針を打ち出しましたが、世界的に見るとコロナ対策の金融緩和策が続き、不動産市場に資金が流れ込んでいます。
ただ、米中対立など国際紛争に発展しかねないリスクがあることから、香港や台北などは敬遠され、資金の流れが京都市やパリ、ホノルルなどブランド力のある先進国の既存都市に向かっています。
さらに、外資系高級ホテルの開業ラッシュが続くことで、海外の投資家は京都市が今後も魅力的な観光地として存続すると判断しています。その結果、投資が投資を呼び込む形になり、訪日客が消えても不動産市場が活気を失っていないのです。
日本経済の地盤沈下による物価安も背景に
もう1つの理由が日本経済の地盤沈下です。
日本経済は失われた30年の間、世界で1人負け状態ともいえるデフレを続けて不動産価格を含めた物価が国際社会の中で相対的に低下しました。そこへ昨今の円安が追い打ちとなり、京都の物価が余計に安く見えるようになっています。
新型コロナ感染拡大前に訪日客が急増した背景には、中国などアジア諸国が豊かになっただけでなく、日本経済の衰退で安い費用で最上級のサービスや飲食を楽しめるようになったことも否定できません。
このため、外資系高級ホテルの多くが入国制限さえ緩和されれば、京都市に以前のように大勢の訪日客が訪れるようになると考えています。1泊1人10万円前後からという料金設定も一般の日本人の手が届かなくても、海外の富裕層には安い出費なのでしょう。
戦後間もないころ、東京の高級ホテルは日本人にとって高嶺の花で、宿泊客は外国人ばかりだった時代が続きました。京都市の高級ホテルは今、日本人の富裕層が宿泊していますが、このまま日本経済の沈滞が続けば、終戦直後の東京と同じ状態になるのかもしれません。
著者情報
高田泰
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員。2015年に独立し、フリージャーナリストとして雑誌、ウェブニュースサイトなどで執筆している。
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