創業補助金は2回目の挑戦でゲット、日本政策金融公庫から合計500万円の融資。子どもと一緒にいながらできる仕事をママたちにワークシェアリングしてもらう、安心のお仕事紹介サイト「ママ職®」を運営、株式会社Capybara/代表取締役 野々村恵氏

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まずは野々村さんの生い立ちから起業まで、簡単にお話しいただけますか。

野々村 恵氏の写真私が高校生になる時、両親が離婚しました。母はそれまで専業主婦だったのですが、40歳でハローワークに行っても仕事はなく自分で何かやるしかない、ということでサプリメントなどの代理店の仕事を始めました。もちろん営業経験などなかったので最初は本当に大変そうで、娘としてはハラハラしながら見守るだけだったのですが、そのうちに母の仕事は大成功を収めます。
父が歯科医師だったこともあり、どちらかといえば学歴重視の家庭でしたが、母が仕事を始めると環境も変わってきました。周りは夢や目標に向かって生きている方ばかり。また母が結果を出すために求めた成功哲学の本を、今度は私に勧めるなどということも。母と一緒に私も新しい世界と出会い、高校生の頃から、いつかは起業をと考えるようになっていきます。
その後、大学に行ったものの何だかもの足りなく、20歳で母と同じビジネスをするために中退します。母を見てきたのでビジネスに関しての知識はあるし、できると思っていたのですが、始めてみたら2、3年は鳴かず飛ばず。営業に近い仕事だったのですが最初は70人たて続けに断られたりしました。でも辞めずにずっと営業や組織作り、マネージメントを学ぶうちにリーダー格になることができました。
その5年の間にある研修を受け始めたのですが、その研修会社からプロジェクトリーダーとして引き抜かれ、今度は人の人生にかかわる研修、コーチングのような仕事に携わります。大変な仕事でしたが、やりがいがありました。研修に参加された方が最初は固い雰囲気だったのが、研修を通じて自分の人生でひっかかっている色々なことを一つ一つクリアしていった結果、終了後はとてもパワフルになり、参加者同士も仲良くなっていくという場面をたびたび目にし、心を打たれることが多かったからです。一人一人にストーリーがあって、そこに感動が生まれるのだと実感しました。

その研修会社で臨月まで働いて、一人目の子を出産しました。当初、子どもは3歳まで自分で育てようと思っていたのですが、研修会社のときに知り合った社長に手伝ってと言われて、1歳で保育園に預けて働くことに。ところが保育園に預け始めて3ヶ月間、毎朝保育園で泣かれるのです。泣かれても振り切って仕事に行くのだけれど胸が痛くて、何のために仕事をしているのだろうと自分を責めたりして、結局、仕事の区切りと下の子の妊娠を機に専業主婦に戻りました。
でも年子の2人は年頃的にも、性格的にも、やんちゃキッズ。モンスターのようになっていって、辞めたら辞めたで2人の育児が本当に大変でした。やはり自分は社会とつながっていたい、活躍したいという思いが高じてきます。ちょうど下の子が1歳のとき、親友が妊娠して、つわりがひどくて退社したものの、おさまると暇なので何かやりたいと言ってきたときに、じゃあ一緒に起業しようか、と。
そのときインスピレーションで、子どもと一緒でも仕事ができる場を作ろうとひらめきました。何をやるか組み立ててから起業、ということではなくて、何か降って来たという感じでした。自分は母親の仕事をしている姿やその周りの方を見て影響を受けたことが大きくて、だから夢をもって働く母の姿を子ども達に見せることには意味があると感じていたことが、源流にあると思います。

 

起業の第一歩はどのように準備されたのでしょうか。

野々村 恵氏の写真最初は会社にすることは考えていなかったのですが、職を紹介するなら株式会社にした方が、ママたちが安心して働けるのではないかということで、法人化しました。起業のための知識は全くなかったものの、営業力や人脈は蓄えてきた自負があるので、何とかなるだろうと思いました。
2013年7月に資本金30万で会社を設立した後、まずホームページからと、使い勝手のよい無料のホームページ作成ソフトを見つけ、独習で立ち上げます。営業経験のおかげで人に伝わる言葉の選定、感情に沿った導線が見えてきて、実際それを表現し、結果10月にサイトをオープンしてから毎月登録者数が順調に増えています。
ちなみに会社名はCapybaraといいます。カピバラという動物は、親族のメスみんなで子育てをし、子どもが危険にさらされればおとなたちが盾になり敵を威嚇して必死に守るのだそうです。ママ職のママたちも、そんなふうにみんなで子育てができたら、という思いをこめてのネーミングです。

 

スタートするにあたって、資金はどうされましたか?

サイトを立ち上げた頃に創業補助金を知って、ぜひ申請したいと思いましたが、申請を外部にお願いすると結構な金額が必要なので、自分でできるところまではやろうと思いました。そして資料を用意して、認定機関のとある銀行に行ったら、いったん資料は受け取って審査すると言ってもらえたものの、結局は断られてしまいます。もう少し早ければ別の認定機関にお願いできたのに、というタイミングで断られたのも残念でしたが、何といっても腹が立ったのは、そのときの銀行からのコメントでした。「ママが仕事なんて、ちゃんとできるわけない」とか「ママのサークルでしょ、遊びでしょ」などと言われ、ものすごく屈辱を感じました。
実際は、社会人経験のあるママはとても責任感が強く、納期を守るために夜中まで仕事をするなど、信頼できる人材です。でもその時はそう反論できるだけの実績もなかったので、悔しい思いを噛みしめ、創業補助金はあきらめかけました。でも翌年、研修会社時代の仲間で、とても信頼のおける税理士兼コンサルティング業の方から補助金申請を一緒にやる?と声をかけていただいて、ギリギリで間に合うのでもう一度チャレンジしようか、と。その方のアドバイスに従って事業計画書を作りなおすなどして申請したところ、首尾良く採択されたわけです。
今、振り返れば、最初に事業計画書を作った段階では、まだ事業のベースが見えていなかったのだと思います。2度目は税理士さんと相談しながら事業計画書を作ったので、ヒアリング力が高い先生に助けられて事業が整理されて見えてきたのと、その時は多少実績もありましたので、採択されたのでしょう。創業補助金は採択されてから使った費用の3分の2を後から補助するという制度ですから、まずは当面の運転資金が必要ですが、それもその先生のおかげで政策金融公庫から300万調達することができました。うちの場合、経費のほとんどは人件費です。補助金を事業のステップアップに生かすため、2015年の1月からやはり研修会社時代からの仲間で、コンサルティング能力と営業力がとても高い男性をスタッフとして迎えています。この男性のおかげで売上げは3倍に伸び、この5月からはさらに1人、うちの会員でお仕事をしてくれていた広島在住の優秀なママをスタッフに迎えました。立ち上げ当初の仲間だった友人は出産後、結局仕事を辞める道を選びましたが、現在、私以外に3人のスタッフがいます。
売上げが順調に伸びていることと、例の税理士さんの信用のおかげで、この5月にさらに政策金融公庫の追加融資を200万受けることができ、起業から2年弱ですが少しずつ順調に進んできているところです。

 

御社の特長や今後の展望についてお話しいただきますか?

野々村 恵氏の写真ママ職の主な事業は在宅のママやプレママにお仕事を紹介することですが、一般のいわゆるクラウドソーシング・サイトが依頼主と、仕事をしたい個人との出会いの場を提供しているのに対して、私たちは会社に委託された仕事を会員でワークシェアリングするシステムを売りとしています。ママ職として受託することで依頼主にとっては成果物の一定の質が保証されますし、仕事を受けるママたちにとってはチームで対応するため、たとえば子どもが急病で仕事の時間がとれないといった緊急事態があっても誰かがカバーしてくれるから安心、また仲間とのコミュニケーションで社会とつながっている安心感や、情報交換を通じて最新のスキルに接するというメリットがあります。

実際にやっている業務としては、HP作成とECサイト商品登録がメインで、あと事務代行、経理入力代行、アプリ作成などです。HP作成は私が開講している「ホームページ基礎講座」で学んだ方にお願いしていますが、おかげさまで順調に受注件数が伸びていて追いつかないくらいです。私はこれまでの経験からブランディングができるのが強みで、起業した方のコンサル的な業務もやっていますので、結局HP作成もその流れでお任せ頂くことが多いのですが、私の考えるブランドというのは、結局、個人の人生そのものなのです。
たとえば、もともと喋り出すことにメンタルブロックのあった方がセラピーと英語を学んで英語の先生になったという例があります。この方の場合、セラピーと英語を使うことによって話すことそのものへのメンタルブロックを破り、さらに英語で表現できるところまで教えられるというのが、その方本人のブランドになるわけです。そんなふうに自分の人生経験そのものに価値があり、それによって社会に貢献できると考えると、人はみなパワフルになります。そういう個人の魅力を引き出してストーリーとして表現したり、そのブランドに見合ったサービスメニューを考えたりというコンサル業務が、HPの受注につながっているわけです。コンサルを通じて私が仕事をとってくることが、ママ職の会員ママたちのお仕事になるところに、とてもやりがいを感じています。

主業務以外では、この3月に働くママたちのための栄養時短料理講座「Mama食」の第1回を開講して、お味噌作りとお味噌を使ったメニューを学ぶ機会を設けました。仕事で忙しいと、どうしても子どもに食べさせるものも適当になりがちで、自分も含めてママたちは罪悪感をもってしまいますが、そういうところもサポートしていきたいと考えてのことです。

今は900人くらいの会員のうち、コンスタントにお仕事をお願いしているのは40~50人です。将来的には、仕事と会員数、どちらもバランスよく増やすことが目標です。
このオフィスはシェアオフィスですが、このように保育スペースがあるのが魅力で決めました。ゆくゆくは、ママ達が子連れで仕事ができるような自社オフィスをもつことや、子連れで起業しているママたちのメディアを作ることなどを含めて、子連れ仕事のインフラを構築していくのも目標です。

 

最後に、これから起業したいという方に何かアドバイスがあったらお願いします。

野々村 恵氏の写真まずはやってみること、でしょうけれども、それだけでは弱いですね(笑)。私も会社を立ち上げるまでに何度かフリーランスでコンサル業をやったりしてみたのですが、何か方向性がしっくりきませんでした。
ママ職を思いついた時には、「ママと子どもがいっしょにいながらお仕事できる」場を作るというコンセプトが明確で、周りから「感動した」という言葉や支援、応援をたくさん頂きました。起業の前に、周りを巻き込めるくらいまでアイディアを仕組み化したり、感動をひき起こすストーリーを作ってチャレンジすれば、道は開けるでしょう。
あと、創業補助金のような補助金・助成金はただ消費するのではなくて、事業をステップアップするために使えれば、とても有効だと思います。うちの場合は先ほどもお話ししましたが、そのおかげでスタッフを増やして、売上げ拡大にダイレクトにつながっています。この補助金に関しては、税理士さんから「これは国から下りているもので、国としてあなたの事業に任せますよ、という手形なんだから、そういう覚悟をもってやって下さい」と言われました。補助金が下りたというと、何となくラッキーみたいな感覚がありますが、そうではなくて責任を感じてください、というメッセージです。起業して創業補助金をもらう方は多いと思いますが、そういう意識は必要だと思います。

 

野々村社長、本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

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