ビジネスの大海原へ 広がる!?出向起業 経産省も補助で後押し
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【この記事の要約】
☑ 大企業に籍を置いたまま起業する「出向起業」が広がりつつある
☑ 起業する社員は出向扱いで、事業に失敗しても出戻りが可能
☑ 起業資金はベンチャーキャピタルや自己資金などを活用
☑ 経済産業省も普及させるべく、出向起業に対する補助を行っている
大企業の社員が別の会社を立ち上げ、自らそこに出向して働く「出向起業」が広がりつつあります。
政府も出向起業を普及させるべく、補助事業に取り組んでいます。
このたび、経済産業省は、2021年度の補助金交付について第2次公募を行い、審査の結果、6事業を交付対象として採択しました。
経済産業省 令和3年度予算「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金(出向起業等創出支援事業)」について、本事業の執行団体である一般社団法人社会実装推進センター(略称、「JISSUI」)は、二次公募を実施し、審査の結果、下記6事業の採択・交付決定を行いましたので、ご案内いたします。
引用:2021年11月12日|PRTIMES
これまでの補助金の交付実績は、2020年度の公募と本年度の第1次公募と合わせて18件。
今回採択分と合わせると、24件となりました。
社員のまま起業 VCや自己資金で資本調達
出向起業について、もう少し詳しく説明します。
新規事業を創造するため、大企業に所属する人材が別の会社を立ち上げるのが出向起業です。
起業した社員は、元の企業に籍を置いたまま、自ら立ち上げた会社に出向という形で派遣されます。
出向元企業からは給与が支払われ、社員として身分も保障されます。
起業資金は、基本的に出向元企業以外の資本を活用。
外部のベンチャーキャピタルから集めたり、自己資金を投入したりします。
経済産業省の補助要項では、出向元企業の資本比率が議決権ベースで20%を超えてはいけないことになっています。
起業した社員は、立ち上げた企業の経営者としてフルタイムで勤務。
新規事業の創造に向けた実務に専念します。
また、出向元企業には、起業した社員に対し、そのまま独立する、または所属企業に戻る、の二つのオプションを用意することが求められています。
補助率2分の1 上限500万~1,000万円
政府も「出向起業」を後押しするべく、2020年6月より補助事業をスタートさせました。
補助対象は、商品の試作やアイデアのデモンストレーションにかかる外注費、委託費、材料費など。
補助率は2分の1で、上限額は500万円。
ただし、ハードウェア開発を伴う事業は、上限額が1,000万円に引き上げられます。
補助申請は、原則として法人の登記や出向契約の締結をしてから行うこととなっています。
経済産業省は、補助事業を通じて、独立開業を志す社員の背中を押したい考え。
さらに、多様な経済人材を育成し、企業内の起業・経営マインドを醸成することを狙います。
起業する社員だけでなく、出向元企業の側にもメリットが生まれることを強調しています。
起業社員のメリットは
それでは、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。まずは社員側の主なメリットをみていきましょう。
アイデアを早く形にできる
出向元企業と新しい企業との間には、基本的に資本関係はなく、全くの別会社となります。
そのため、大企業で求められる煩わしい決済を経ることなく、アイデアを迅速に実用化することが可能となります。
人材の採用や資金の調達も、出向元企業の顔色をうかがうことなく行うことができます。
社内で新規事業に取り組む、いわゆる「社内ベンチャー」以上に自由で身軽な動きができるようになります。
失敗時のリスク軽減
起業や新たなビジネスの創出に失敗はつきものです。
損害が発生すると、当然経営者が損失を被ることになります。
しかし出向起業の場合、失敗で一定の損失を被る可能性はありますが、出向元企業の社員として身分保障されているので、復職することが可能になります。
日本人はリスクを取ることを嫌うことから、欧米に比べ起業する人の割合が低い傾向にあります。
出向起業は、ある意味日本人の気質に合った仕組みかもしれません。
出向元企業にもメリットはある
対する出向元企業。
将来的に優秀な人材が社外に流れ出る恐れがあり、割を食うようにも見えますが、メリットはあるのでしょうか。
失敗してもノーペイン
出向元企業と新しい企業との間には、基本的に資本関係はないので、仮に新しい企業が事業に失敗したとしても、出向元企業の業績に影響はありません。
起業した社員が失敗して戻ってきたとしても、大企業では得がたい経験を社員に積ませることができたと考えれば、それはそれで大きなメリットと言えます。
優先交渉権利
出向元企業には、新しい事業が成功した場合、優先的に買収の交渉をできる権利が与えられています。
リスクを取ることなく、新しい事業を自分たちのものにすることができる可能性をはらんでいるのです。
燃料シェアやアプリ開発 「サウナバス」も
出向起業により、具体的にどのような事業が行われているのでしょうか。
今回採択された電気機器メーカー・明電舎からの出向起業「レジリエンスラボ」は、企業向け非常用電源・燃料等の備蓄シェアリング事業に取り組みます。
大規模災害時、優先的に燃料や電源の提供を受けることができる会員向けの共同備蓄サービス事業を展開する計画です。
ディー・エヌ・エーの出向起業・ウィズカンパニーは、専属トレーナーからテキストによる生活指導やオンラインレッスンを受けることができるアプリのサービスを計画。
会費が高額なことからパーソナルトレーニングを断念している層をターゲットに、利用者拡大を目指します。
首都圏の大企業だけでなく、地方企業が採択を受けた例もこれまでにはあります。
兵庫県を中心に路線バスを運行する神姫(しんき)バス。
その神姫バスの出向起業は、移動型サウナバスの開発を目指しています。
この企業のビジネスは、移動手段としての役目を終えたバスの活用。
サウナバスは第一弾の位置づけで、今後バスの広いスペースを活用したさまざまなサービスを展開する予定です。
ちなみにこの会社の社名は「リバース」。
Re bus(バスの再生)とrebirth(生まれ変わらせる)のダブルミーニングが由来だそうです。
神姫バスの新規事業となりえるか、今後の展開が注目されます。
出向元企業の度量が拡大の鍵
経産省の出向起業の補助事業は今後も公募が予定されています。
公募に関する情報は、特設サイトで告知される予定。
サイトでは、採択企業の取り組みや起業者のインタビューも見ることができます。
参考:出向起業等創出支援事業 | 一般社団法人社会実装推進センター
起業を志す人たちにとっては有効な選択肢となる出向起業。
出向元企業の度量が、今後の拡大を左右するのではないでしょうか。
メリットをメリットとして捉え、ビジネスの大海原へ羽ばたこうとする人材を気持ちよく送り出す。
こういった度量のある企業が増えれば、新たな起業の形として広まっていくことでしょう。
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