高騰し続ける石油製品価格 経産省が中小企業の資金繰り支援へ
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【この記事の要約】
☑ ガソリン(レギュラー)価格ついに170円台へ
☑ 中小企業庁が特別相談窓口を全国に設置
☑ 融資条件を緩和し、再生へアシスト
高値が続くガソリン価格。
原油価格の上昇による中小企業の経営への影響が懸念されることから、経済産業省は中小企業の資金繰りを支援するため、関連中小企業、小規模事業者対策として、政府系金融機関による融資要件の緩和を発表しました。
萩生田経済産業大臣は2日の閣議のあとの記者会見で「引き続き原油価格の動向や各産業への影響を注視するとともに、中小企業の経営を含めた経済活動に支障が生じることがないよう万全を期したい」と述べました。
引用:2021年11月2日|NHK News Web
コロナ禍に加え高騰を続けるガソリン価格のWパンチ
ガソリン等石油製品価格の高騰が止まりません。
資源エネルギー庁が発表した今年1月4日時点でのレギュラーガソリンの店頭小売価格は、1リットル当たり全国平均136円10銭でしたが、11月1日時点の調査では168円70銭で、前週比1.4円高で今年の最高値を更新しました。
データ参考:石油製品価格調査(資源エネルギー庁)より
山形県、群馬県、東京都、山梨県、長野県、京都府、高知県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の1都1府10県では、すでに170円台に突入しており、最高値の鹿児島県では176円90銭と、180円台に迫っています。
ガソリン(レギュラー) 小売価格ワースト10 |
||
1 | 鹿児島県 | 176.9円 |
2 | 長野県 | 175.6円 |
3 | 長崎県 | 175.1円 |
4 | 山形県 | 174.2円 |
5 | 大分県 | 174.0円 |
6 | 沖縄県 | 173.2円 |
7 | 高知県 | 172.7円 |
8 | 群馬県 | 172.2円 |
9 | 京都府 | 171.6円 |
10 | 東京都 | 171.5円 |
2021年11月1日調べ |
すでに昨年7月に、全国商工会連合会が行った会員 1,604 企業に対する「原油・原材料価格の高騰に関する中小企業緊急調査」の結果では、原油、原材料価格の高騰により、98.0%の企業で「コストが増加する」という回答がありました。
一方で45.0%の企業は、「コスト上昇分の価格転嫁は困難である」と回答しています。
収益を見ても、前年比4割以上減った企業が31.4%、2~3割減が53.3%と深刻な状況です。
原油、原材料高が長期化した場合、40.7%の企業は今後、「転廃業を検討せざるを得ない」と回答しており、調査の時点ですでに「転業を検討している」という企業が2.5%、「廃業を検討している」という企業が3.4%ありました。
調査では政府に対して、「ガソリン・燃料価格や原材料価格への補填」、「揮発油税、軽油引取税の減税」、「緊急融資」、「転廃業支援」などを求める声があがりました。
緊急事態宣言がようやく解除され、何とか持ちこたえた企業、またコロナ禍からの立ち直りを目指してきた企業にとって、その後もガソリン、燃料価格の高騰が続いいるのは、非常に厳しい状況です。
日米政府から「OPEC(石油輸出国機構)プラス」への増産要請が首尾よくいかず、ますます先行きに不安を抱えることとなった企業も多い中、経済産業省は、中小企業や小規模事業者対策に融資などを行うことを決定しました。
中小企業庁が特別相談窓口を設置し融資相談
中小企業庁は11月2日付で、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、商工会議所、都道府県商工会連合会、都道府県中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会、中小企業基盤整備機構各地域本部、各地方経済産業局などにおいて、「原油価格上昇に関する特別相談窓口」を設置。
原油価格上昇で資金繰りに困難を来している中小企業や小規模事業者に対して、資金繰りや経営に関する相談を受け付けています。
東京都の主な特別窓口は下表のとおりです(各支店等でも受け付けています)。
特別窓口を設置している機関 | 支店・担当部署等 | 電話番号 |
日本政策金融公庫 | 東京中央支店国民生活事業 | 0570-026103 |
商工中金 | 本店営業部 | 03-3272-6111 |
東京信用保証協会 | 03-3272-3081 | |
東京商工会議所 | 03-3283-7700 | |
東京都商工会連合会 | 042-500-1140 | |
東京都中小企業団体中央会 | 03-3542-0386 | |
東京都よろず支援拠点 | 03-6205-4728 | |
中小機構 関東本部 | 企業支援部企業支援課 | 03-5470-1620 |
関東経済産業局 | 産業部中小企業課 | 048-600-0321 |
「セーフティネット貸付」の運用要件緩和
また、日本政策金融公庫などが実施している「セーフティネット貸付」(経営環境変化対応資金)の要件を緩和することで、原油価格高騰により今後の影響が懸念される事業者に融資を行えるようにします。
「セーフティネット貸付」は、社会的、経済的環境の変化などの外的要因により、一時的に売上の減少などの業況悪化をきたしている中小企業、小規模事業者で、中長期的には業況が回復し、発展することが見込まれる者を対象としています。
「セーフティネット貸付」の具体的な融資対象要件は、以下の通りです。
①最近の決算期における売上高が前期または前々期に比し5%以上減少している。
②最近3ヵ月の売上高が前年同期または前々年同期に比し5%以上減少しており、かつ、今後も売上減少が見込まれる。
③最近の決算期における純利益額または売上高経常利益率が前期または前々期に比し悪化している。
④最近の取引条件が回収条件の長期化または支払条件の短縮化等により、0.1ヵ月以上悪化している。
⑤社会的な要因による一時的な業況悪化により資金繰りに著しい支障を来している、または来すおそれがある。
⑥最近の決算期において、赤字幅が縮小したものの税引前損益または経常損益で損失を生じている。
⑦前期の決算期において、税引前損益または経常損益で損失を生じており、最近の決算期において、利益が増加したものの利益準備金及び任意積立金等の合計額を上回る繰越欠損金を有している。
⑧前期の決算期において、税引前損益または経常損益で損失を生じており、最近の決算期において、利益が増加したものの債務償還年数が15年以上である。
以上です。
ただし、今回は 「特別相談窓口」を設置しているので、上記の数値要件を満たさない場合でも、資金繰りに著しい支障を来している場合、または来すおそれがあれば、融資の対象となります。
対象資金は、社会的要因などにより、企業経営を維持する上で、緊急に必要な設備資金、経営基盤の強化を図るために必要な運転資金です。
貸付限度額は「中小企業事業」に対しては7億2,000万円、「国民生活事業」に対しては4,800万円で、貸付期間は設備資金の場合15年以内、運転資金については8年以内で、据置期間を3年以内としています。
貸付利率は、基準利率が中小企業事業1.06%、国民生活事業1.81%(令和3年11月1日現在)です。
これは、貸付期間5年以内の標準的利率で、実際の適用利率は担保の有無や信用リスク等により異なるので注意が必要です。
下請事業者に対する配慮も要請
また経済産業省は、経済団体連合会(経団連)など関係事業者団体約1,400団体に対し、経済産業大臣名で「原材料・エネルギーコスト増の影響を受ける下請事業者に対する配慮について」を発出し、原材料やエネルギーのコスト増加分の適正な価格転嫁等を要請しています。
経済産業省によると、親事業者による「買いたたき」などの違反行為があり、それが認められた場合は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に基づいて、厳正に対処するということです。
同法によると、買いたたきは、「下請代金の額を決定するときに,発注した内容と同種又は類似の給付の内容に対して通常支払われる 対価に比べて著しく低い額を不当に定めること」とありますが、これに該当しない場合でも、発注時に書面で定めた金額を下回って支払うことを全面的に禁止しています。
仮に下請事業者との合意があっても、値引き、協賛金、 歩引きなどの減額の名目や方法、金額の多寡を問わず同法違反となります。
相談や質問は、全国の公正取引委員会の窓口で受け付けています。
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