家庭教師のトライ 英ファンドが買収検討 デジタル化対応が生き残りの鍵

藤田 勝久
藤田 勝久
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個別教室のトライ

この写真はイメージです。

【この記事の要約】

☑ 教育関連会社・トライグループを買収する動きが明らかに

☑ 検討しているのは、東芝買収を企てた英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ

☑ ファンドの元で、オンライン教育の充実、株式上場を実現する考え

☑ 教育産業はデジタル化への対応が生き残りの鍵となりそう

 

「家庭教師のトライ」「個別教室のトライ」を運営する教育関連会社・トライグループ(東京)について、海外の投資ファンドによる買収の動きがあることが明らかになりました。

 

買収を検討しているのは、英国を本拠地とする投資ファンド・CVCキャピタル・パートナーズです。

 

英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズは、「家庭教師のトライ」を手がけるトライグループ(東京・千代田)を1100億円程度で買収する。新型コロナウイルスの感染下でオンライン教育が浸透するなか、人工知能(AI)関連の投資を増やし競争力を高め、3~4年後の上場を目指す。教育ビジネスで、デジタル投資が生き残りを左右する要因になってきた。

引用:2021年10月11日|日本経済新聞

 

トライグループは、売却で得た資金を活用して、新型コロナウイルス禍で需要が拡大したオンライン教育を充実させたい考え。

 

また、現在は非上場企業ですが、外資ファンドの元で成長を図り、企業価値を向上させて3~4年後の上場を目指す意向とみられています。

 

買収額は1,000億円以上

トライグループは、創業者の平田修会長らがすべての株式を保有しているとみられています。

 

CVCキャピタル・パートナーズは、それらすべての株式を取得して買収する方向。

買収額は、1,000億円規模とも、1,100億円程度とも言われています。

 

トライグループが手がける家庭教師の派遣や対面での個別指導は、コロナ禍で難しくなっており、オンライン化やデジタル化が進んでいます。

 

買収後は、オンラインによる個別指導や、タブレット端末を使った人工知能(AI)による学習診断などをより一層充実させる方針です。

 

教育の充実で競争力を高めることで、企業価値を向上させ、ひいては株式上場に結びつけたい考え。

アニメ「アルプスの少女ハイジ」のCMなどにより、知名度・信用度はすでに高い企業ですが、上場により資金調達力をさらに向上させ、人材確保や企業規模拡大が可能となる組織基盤づくりが期待されます。

 

AI学習診断で成長

トライグループは、全国で家庭教師や個別指導塾を展開。

登録家庭教師は20万人以上と言われています。

 

コロナ禍以前から最先端技術の導入に熱心でした。

その真骨頂が、膨大なデータと最先端のAI技術を駆使した学習診断。

診断アプリを使い、各科目約20問の簡単な2択問題を答えると、AIが単元別の理解度を診断してくれます。

所要時間は1科目当たり約10分と、手軽に行えるのも魅力です。

 

トライグループのホームページでは「トライ式AI学習診断を活用してすでに多くの生徒が成績アップを実現!」と宣伝。

2019年には、日経BPなどが主催する「日経xTECH EXPO」で教育AI賞を受賞しています。

 

トライグループのルーツは、平田会長が1987年に創業した「富山大学トライ」。

その後、家庭教師派遣事業で全都道府県への展開を進め、さらに個別指導塾も始めました。

 

現在の社長は平田会長の妻の二谷友里恵氏。

元女優で、歌手の郷ひろみさんの元妻です。

往年のテレビドラマ「特捜最前線」の主人公・神代警視正を演じた俳優の二谷英明さんは父親、女優の白川由美さんは母親(いずれも故人)にあたります。

 

東芝買収を提案したCVC

かたや買収を検討しているCVCキャピタル・パートナーズは、1981年設立の投資ファンド。

米国の金融大手・シティグループのベンチャーキャピタル部門が出発点です。

 

経営危機を発端とした混迷が続く東芝を、今年4月に買収しようと提案したことでも知られます。

しかし、CVCと関係が深かった当時の東芝CEOが株主と対立して辞任したこともあり、この買収は実現しませんでした。

この他、ファミリーレストランチェーンのすかいらーく、資生堂の「TSUBAKI」などの日用品事業を買収したことでも知られています。

 

教育産業 デジタル化への対応が鍵

少子化で学習塾や予備校、家庭教師などの受講者数が減ったことで、教育産業を斜陽産業と指摘する向きもあります。

しかし、子ども1人当たりに費やす教育費は増えており、一概に斜陽産業と言えない面もあります。

教育産業は今後、オンライン授業をはじめとしたデジタル化に対応できるかどうかが生き残りの鍵となりそうです。

 

教育産業では過去にも、時代への順応が明暗を分けたケースがありました。

進学者数の増加で急成長を遂げ、その後少子化の荒波に見舞われた大学受験予備校の業界です。

 

高度経済成長期以降、巨大組織に成長したのが駿台予備学校、河合塾、代々木ゼミナールの3校。

三大予備校とくくられたり、頭文字を取って「SKY」と呼ばれたりしました。

また受験生の間では、「生徒の駿台」(優秀な生徒が集まる)「机の河合」(設備が充実している)「講師の代ゼミ」(講師陣の人気が高い)と言われたりもしました。

 

その後、1990年代後半の少子化の進展により、業界は小規模校の設置や授業映像の配信、現役生重視などへの転換が求められました。

しかし代ゼミは他の予備校と比べ、大教室での伝統的なスタイルを守り、その結果2015年度以降に教室を大量閉鎖することとなりました。

入れ替わるように、新しいスタイルの東進ハイスクールが台頭してきました。

 

教育産業の競争は熾烈を極めています。

今回の買収を機に、業界再編などの動きがあるのか、今後も注目したいところです。

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