中小企業支援 事業承継ファンド、地方銀行中心に今年も設立続く

中出 眞澄
中出 眞澄
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グラフ参考:帝国データバンク「全国企業後継者不在率動向調査」

【この記事の要約】

・今年すでに10行を超える地銀がファンドを設立
・事業承継ファンドとは?
・後継者不在率は全国企業の3分の2
・急増する地銀への事業承継の相談
・婚活のIBJが地銀との連携進める

 

後継者難に悩む中小企業を支援する「事業承継ファンド」の設立発表が地方銀行の間で続いています。

北陸銀行(頭取 庵 栄伸)では、2021年8月20日に、中小・中堅企業の事業承継を支援するソリューションの一つとして「ほくほく事業承継ファンド」を設立しましたので、お知らせいたします。

引用:北陸銀行 News Release

 

2021年はすでに10行を超える地銀がファンドを設立

2021年だけですでに10行がファンドを設立しました。

後継者難による倒産や廃業に歯止めをかけ、地域経済の活性化につなげようとの意気込みがうかがえます。

 

出資規模も数十億円と大型のものが目立ち、京都銀行は将来的は100億円も視野に入れていることを明らかにしています。

 

※表幅が画面に収まりきらない場合はスライドできます。

2021年に設立された地方銀行による事業承継ファンド
設立 銀行 ファンド名 総額(億円)
1月 常陽 常陽事業承継ファンド 20
〃 山陰合同 ごうぎん事業承継投資(有) 30
2月 百五、三重 組み紐ファンド 5
3月 京都 京銀ネクストファンド 30
4月 足利 Wing1 号事業再構築 投資事業(有) 30
〃 ふくおかFFG 株式会社FFG成長投資 –
5月 三十三 33事業承継ファンド 10.1
6月 佐賀 さぎんブリッジファンド 10
7月 北國 QRI 事業承継ファンド1号 20
〃 京葉 京葉銀事業承継投資事業(有) 15
8月 北陸 ほくほく事業承継ファンド 10
 略称のあるファンド名は略称を表示、(有)は有限責任組合

詳細:銀行名にホームページをリンク

 

事業承継ファンドとは?

地方銀行に限らず都市銀行、証券会社などの金融機関をはじめ官民さまざまな分野で、後継者難に悩む中小企業の支援に力を入れる動きが活発に行われていますが、事業承継ファンドはファンドによる株式取得にまで一歩踏み込んで、長期的な視野に立ってスムーズな事業承継に手を貸そうとの試みです。

 

従来の民法上の投資事業組合は、出資については無限責任を負うためリスクが高く、ベンチャーなどにも投資しにくいという難点がありました。

これに対して、1998年11月に施行された「中小企業等投資事業有限責任組合に関する法律」による組合には次のようなメリットがあり、銀行による数十億円規模のファンド設立を後押ししています。

 

➀組合員が負う責任を出資額の範囲にとどめる
➁銀行の出資が独占禁止法に定められた制限の5%ルールの適用から除外される
➂組合には法人税がかからない。

 

参考:投資事業有限責任組合契約に関する法律

 

後継者不在率は平均65%超で推移~帝国データバンク調べ

帝国データバンクが毎年発表している「全国企業後継者不在率動向調査」の2020年版によると、約17万社を対象に為た後継者不在率は65.1%でした。

冒頭のグラフ「2011年からの推移」を見ると、過去最低の数字ですが、2017年の最高が66.5%なので、一貫して「ほぼ3分の2の経営者が後継者不在に悩んでいる」状況が続いていることになります。

地域別で最も高いのは北海道と沖縄で81.2%、業種別では建設業が70.5%と最高でした。

 

2020年の事業承継の内訳は➀同族承継 34.2%➁内部昇格 34.1%➂外部からの招聘 8.3%--の順。

同族承継の比率は2018年に比べ10ポイント低下と急減する傾向にある一方、内部昇格と外部招聘は上昇傾向にあります。

 

山陰合同銀行のNews Releaseでも「近年、従来の親族内での事業承継に加え、自社の経営陣、従業員もしくは第三者に経営を引き継ぐ、親族外への事業承継ニーズも増加している」としており、事業承継ファンドが注目される背景になっているものとみられます。

 

出典:帝国データバンク「全国企業後継者不在率動向調査」

 

急増する地銀への事業承継に関する相談

中小企業白書によると、地方銀行での事業承継やM&Aに関する相談対応件数が急増しています。

2012年に10,823件だった件数が15年には2万件を突破。17年には3万件、19年は4万件を超えており、右肩上がりの上昇傾向を示しています。

 

中小企業庁が2017年に策定した「事業承継5ヶ年計画」によると、60歳以上の経営者のうち50%超が自分の代での廃業を考えており、後継者難を理由にあげている割合が28.6%にのぼります。

そして、2015~2020年の間に30万人以上が新たに70歳、6万人以上が75歳になって、「団塊経営者の大量引退期」が訪れるとしています。

 

一方、廃業を予定している企業のうち3割が同業他社に比べて業績が良く、4割が向こう10年間の将来性について現状維持が可能としており、事業承継の可能性が高いことを示しています。

 

参考:21年版中小企業白書

 

婚活事業者と地方銀行との連携

結婚相談所など婚活事業を展開している(株)IBJ(本社・東京)が、このほど京都銀行と事業承継の支援を目的に業務提携契約を結びました。

この一風変わった提携は、同行取引先の独身の経営者・後継者への婚活支援を通じて、事業承継に一役買おうとの狙い。

京都銀行と同様に最近、事業承継ファンドを設立した北陸銀行、佐賀銀行をはじめ、事業承継支援に前向きな地方銀行との提携を2018年から進めており、京都銀行は11行目になります。

 

IBJによると、2020年の出生数は84万人余で過去最低。婚姻件数も前年比12.3%減と落ち込むなど、これに伴う人口減少が地方の中小企業の後継者不足の一因になっているとみており、「成婚」を創出することで「人口減少問題に歯止めをかけたい」としています。

 

出典:IBJと京都銀行が業務提携

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