銀行融資を受けやすい決算書作り!5つのポイントとは?(実務編)
決算書は企業が一年間どのような商売をしてきたかをお金を出してくれた人たちに報告する書類です。
銀行は融資の審査において決算書をじっくりと吟味していきます。決算書の作り方ひとつで企業への評価も大きく変わっていきます。
ここでは、実際にどこに注意すればいいかを解説します。担当の税理士さんと相談するための指標としてください。
1.まずは営業利益
融資するかどうかの判断基準は「返せるかどうか」ですから、返済の原資となる資金があるのか、つまり、商売が儲かっているのかを確認します。
まずは「経常利益」です。ここは支払利息などの財務費用も控除した利益なので、経常利益が黒字なら第一関門突破です。
でも、経常利益が赤字、「営業利益」も赤字という中小企業は少なくありませんよね。
本業のもうけを表す営業利益を黒字にするには、販管費を削減するのが近道です。まずは準備編で解説した私用の経費を会社の経費に付け替えたりしている場合は、それを全部やめるとどうなるか試算してみてください。
減価償却費を削ってしまう企業がありますが、これは後述する理由から止めた方がいいでしょう。削るのは役員報酬や不要な経費からです。
販管費の見直しの中で「社員を減らします」という経営者がいますが、マンパワーに依存する商売で人手が減るのは売り上げが減ることを意味します。実態とかけ離れた改善策を銀行に提出すると、それだけで経営者の資質に疑問を持たれて否決されることがあるので、軽々しくリストラを口にするのは止めましょう。
2.売上総利益が低いのは致命的
売上高から売上原価を差し引いたのが売上総利益です。いわゆる粗利ですね。粗利が低いと銀行融資では致命的です。
粗利は商品を販売したり、サービスを提供した時点、つまり、売上が立った時点で見えている利益です。粗利が低いとそもそも儲からない商売だと判断されます。企業の収益力が低いと判断されるわけです。
このような場合は、売上原価に計上している科目を見直してみましょう。とくに人件費や運賃、送料等を原価に含んだままにしているケースは少なくありません。例えば、販売員の人件費や販売手数料は仕入に含むべきではありません。
一方で、WEBサイト制作の下請のように薄利でも販管費が極端に抑えられる商売の場合は、粗利が低くても営業利益が確保できていれば問題になりません。
最近はインターネット上に決算内容を公開する企業が増えてきましたので、自社のPLを同業他社と比べてみるのもいいですね。
3.会社の体力=自己資本
自己資本とは、資本金と設立後の利益の積み増し分です。自己資本は会社の体力を表す指標となります。
自社を評価してもらう上でとても重要な項目なのに、ほんのわずかな課税を逃れるために赤字決算を続けて自己資本が毀損している中小企業が多いのが現実です。
決算書の本来の意味を知っている経営者は、毀損した自己資本をカバーするために工夫をします。とくに経営者からの借入金は返済しなくても良いお金、つまり資本金と同種と扱えることを知っています。
銀行融資の審査では在庫や不良債権は資本から差し引かれてしまうので、在庫の適正化、不良債権の処理を適切に行うことも重要です。BSの資産の部から不要なものを取り除くことで自己資本力がアップします。これを「オフバランス」といい、企業評価を高めるための方法として広く知られています。
償却不足も資本から差し引かれてしまいます。先ほど、意図的に減価償却をしないのは避けた方がいいといったのはここで影響するからです。
自己資本を改善する方法は会計以外にも方法があります。税理士と相談して自社ではどのような方法が有効なのか検討し、必要に応じて実行すると融資を受けやすい状態にすることができます。
4.何のために借りたお金ですか?
銀行の融資審査では、過去の借入金が何に使われたかもチェックされます。
具体的にはBSで負債として計上されている借入金が資産の何とバランスしているのかを見ています。
「運転資金」というのは簡単ですが何に使ったか説明できないということは、今回も説明できないだろうと判断されますし、本当に資金繰りが厳しいのだなと判断されます。とくに運転資金の借入が月商の3倍を超えている場合は審査が厳しくなることが予想されます。可能なら、短期借入金くらいは返済してから融資を申し込んだ方がいいですね。
設備資金として借り入れた場合は、それによって売り上げにどのような影響があったかも説明できるようにしておくといいでしょう。
5.必ず税理士と相談して行う
上記4つのポイントを経営者の判断だけで行うのは危険です。
会計処理には様々なルールがあります。ルールに反する会計をすると粉飾とみなされるリスクがありますし、税務署から修正を求められたりします。なにより、銀行の審査において粉飾と思われれば審査は否決になります。ですから、信頼できる腕のある税理士を見つけ、自社の事業について十分に理解してもらって常にコミュニケーションを図りながら日々の仕訳や決算に臨むことが大切です。
業種、業態によって決算の内容は大きく違いますから具体的な事例を出しにくいのですが、上記の項目を精査して修正していくだけでも随分と決算書の見た目が変わってきます。
大切なことは、決算書は日々の仕事の集計なので付け焼刃的な対応だけではダメだということです。
そのためにも準備編に書いたことも実践して銀行融資を勝ち取っていただきたいと思います。