1104 蜘蛛の巣の合成研究開発 スパイバー 25.5億円

■資金調達概要
11月04日　鋼鉄の340倍とも言われるクモの糸の強靭さに着目し、人工の開発と量産に成功した、山形県鶴岡市のベンチャー企業スパイバー株式会社が25億5千万円の資金調達を行いました。
主な資金調達の目的は、研究開発の推進とグローバル展開に向けた体制構築推進のためとのこと。
調達先は、既存株主の荘内銀行をはじめとする次のベンチャーキャピタルと銀行の5社が参加しています。

荘内銀行
TICC卓越企業投資事業有限責任組合
やまがた地域成長ファンド投資事業有限責任組合
きらやかキャピタル
新生銀行

プレスリリース：
http://news.spiber.jp/wp/wp-content/uploads/2014/11/Spiber20141104.pdf

■ライターの視点
2007年9月　慶応大学の先端生命科学研究所内で進められていた、蜘蛛の糸の人工合成に関わる量産技術などの研究成果をシーズにスパイバー株式会社は設立されました。

今回の資金調達額は25.5億円にものぼり、クモの糸の合成がどれほど価値の高いものかを伺わせる投資額です。
今回の増資の裏には、アベノミクスによる後押しが鍵になっています。
今までも多くの表彰受け、数々のメディアに功績を取り上げられていましたが、今回のアベノミクスが掲げる第3の矢となる、日本の成長戦略の鍵をにぎる「革新的研究開発推進プログラム（ImPACT）」において、スパイバー株式会社が選ばれたことが大きいでしょう。

ImPACT（インパクト）は、その名の通り、研究が実現すれば今までの常識が覆され、産業や社会へ大きな変革をもたらすことができる、革新的科学技術の創出が目的とされています。
そのテーマの1つどして選ばれたということが、どれほど大きな意義を持つかは十分すぎるほど、分かりやすいことです。

既に「QMONOS」の合成量産化には成功しているので、後は製品として活かされるためのいくつかのハードルを越えていくことが今後の研究テーマとなるのでしょう。

ところで蜘蛛の糸が合成繊維化されると産業がどのように変わっていくのでしょうか？
聞けば、現代利用されている多くの合成繊維のほとんどは、石油と言う化石燃料をベースに作られ、耐熱性などいくつかの問題が棚上げされた状態で利用されています。
そのため、万一の火災などでは、被害拡大の原因となる場合もしばしばあります。

また、化石燃料由来の化学繊維はいずれ渇望する、また、人体への利用などにいくつかのリスクを抱えたままです。

こうした問題をタンパク質由来のQMONOSの利用で大きく改善することができるのだそうです。
その強靭な繊維性能と軽さは、航空機や自動車などの輸送産業に革命をもたらすかもしれません。
それは、現在の航空機や自動車の外板やフレームの強度をさらに改善しながら、圧倒的に軽く作れるからです。
燃料消費にも貢献し、安全性も大きく前進するに違いありません。
何より、耐熱性も高く様々な形状への加工が可能になることから、さまざまな部品として利用が可能になるでしょう。
輸送機器や電子機器を始め、医療分野でも縫合用の糸を始め人工血管などへの利用は、すぐにでも需要が生まれそうです。

しかも製造の段階でのエネルギー消費が現在利用されている合成の繊維と比較して、非常に低いエネルギー量での生産が可能だそうです。

実のところ人工合成で作られているQMONOSは、本物の蜘蛛に作ってももらうことはでき無いのだそうです。
蜘蛛は、縄張り意識が強いため共食いも当たり前の様に起こるため、大量に飼育することは事実上不可能ということで、合成はDNAを書き換えた別の微生物にさせるのだそうです。

少し聞いただけでもワクワクしてくるような新技術ですね。
しかし、研究の現場では、トライアンドエラーが繰り返され、ようやく、量産が可能になったということなのでしょう。

QMONOS は、2015年の1月から小島プレス工業と共同で月産100kg程度の量産体制が整うとのことです。
ますは自動車分野からの用途開発からはじめられるとのことですから、次の朗報を期待して待ちましょう。

■会社概要
スパイバーでは、人工で量産可能なクモの糸「QMONOS」の開発研究を始め、次世代バイオ素材開発、DNAタグ技術開発、DNA情報記録技術開発に係る事業に取り組んでいます。

代表執行役／関山和秀
設立年月日／2007年9月26日
資本金／20億5,533万円
本社所在地／山形県鶴岡市覚岸寺字水上246番地2 （鶴岡市先端研究産業支援センター内）