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【サンプル有】第三者割当増資が成功する!事業計画書の書き方とは?

「事業計画書」を見せてもらえますか?

第三者割当増資など、資金調達を考えている場合に必ずと言ってよいほど出てくる言葉。しかし外部の資本参加を考えるのは今回が初めてで、どのようなものを作れば彼らに納得してもらえるかが分からない。
いまそんな状況に置かれていませんか?

この記事では、実際に幾度も第三者割当増資を成功させたCFO経験者の著者がその方法を徹底解説していきます。

必ず貴方の役に立つ要素を含んでいますので、しっかりと読み込んでアクションに移していきましょう。

参考記事①:【経営改善計画書の書き方シリーズ①】経営改善計画書100%書き方ガイド!3つのコツであなたも必ず経営改善できる

参考記事②:銀行融資担当者が「思わず融資したくなる」100%完璧な事業計画書の書き方ガイド!

 

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参考記事:今すぐ借りたい!法人向けビジネスローンおすすめランキング【2020年最新版】

 

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1. 第三者割当増資を成功させる前提とは

ここからは著者の執筆に移る。

 

ある意味で、資金調達の一つの究極の形と言っても良いだろう。第三者割当増資による、まとまった投資・運転資金の調達という選択肢だ。

とはいえ正直なぜ、投資家が未上場の中小企業の株を持ちたがるのか。あるいはどうして、まとまった金額の投資を受けたにも関わらず、大株主の地位が入れ替わらないのか(入れ替わらないで済んでいるのか)。

そんな疑問を持ちながらも漠然と、「増資」「資金調達」といった経営の選択肢に、大いに興味を持っている経営者は多いはずだ。

しかし、そんな疑問は街の顧問税理士に聞いたところで、理屈はともかく実際のところまではわかるものではない。

大手監査法人の公認会計士ともなると敷居も高く、そもそも知り合える機会も無ければ何から聞いて良いのかもわからないのが正直なところだろう。

本稿では、そんな中小企業経営者向けに、誰にでもわかりやすくその仕組みを解説し、またそのために必要な経営計画書の作り方の基本を説明していくことを目的として、筆を進めている。

 

もちろん、本稿を読んだからと言って直ちに資金調達に成功できるようなものではない。

まして、どんな会社や経営者でも使えるような魔法の方法を説明するものでもない。

逆説的なことを言うようだが、第三者割当増資に成功するような会社は、そもそも求められるレベルの経営計画を立案し、外部資本を受け入れるにふさわしい企業経営ができている会社であるということだ。

私自身、いくつかの会社でCFOとして経営を支え、あるいは会社を設立し多くの資金調達を経験したが、そのことだけは間違いがないと断言できる。

そのためここでは、私自身の体験を踏まえてどうすれば外部株主からの信頼を得て、数千万円、時に数億円という単位で第三者割当増資を成功させることができたのか。

その際に決め手となったものは何であり、とりわけそのために必須のツールである経営計画書の策定と実行に際しては、どのような事に気をつけて取り組んだのか。

そう言ったことを中心にお話をしていきたいと思う。

 

なお前提として、知らなければならないこと正直少なくない。

商売をする上で、顧客のニーズも分析せずに商品を開発し、営業をしたところで全く無駄であるように、第三者割当増資を成功させるには最低限、投資家の求める「モノやこと」を知っておく必要がある。

それについては文中で必要に応じて引用していきたいが、当たり前の大前提だけは、イントロダクションで置いておきたい。

それは、どのような形であれ投資家は、投資した以上の見返りを求めて、経営者である貴方に貴重な資金を預ける、ということだ。

一番代表的なわかりやすい形は、投資をした会社が成長し、株式上場に至った際のキャピタルゲインだろう。

キャピタルゲインとは、投資をした額と売却をした時に得た差額のことであり、一般に未上場企業の株に投資をし、その会社が上場まで至るとなれば、時に数千倍ものリターンを得ることもある。

また別の形では、仕入先や取引先に例えば1000万円を投資し、関係を深めようとするもの。

お互いに株を持ち、それぞれのステークホルダー(利害関係者)となることで、より多くの仕事をもらい、あるいは仕入れ値や仕入れ条件に便宜を図ってもらおうとするもの。

いずれの場合でも、投下した金額以上に利益が見込めるから投資をするのであり、気前よくお金を上げたわけでも何でも無い。

第三者割当増資を考えている経営者は、まずこのことを強く、深く、心に刻んで欲しい。

 

「なんだ、当たり前じゃないか」と思われたら、それは大間違いだ。

第三者割当増資とは、銀行借り入れと違い直接の返済をする必要がない分、資本を投資してもらった後には株主の利益から意識が離れてしまう経営者が、とても多い。

まして、持株比率1%程度の少数株主であれば、投資をしてもらった事実すら、記憶から消えてしまう経営トップもいるほどだ。

中には、「僅かな金額で偉そうにする」などと株主に悪態をつく経営者すらもおり、実際に多く目にしてきた。

しかし言うまでもなく、そんな理屈は間違っている。

株主にストレスを与え、「偉そうに言わざるを得ない」状況を作っているのは、資本金を預かっていながら結果を出せていない経営者に責任がある。

そしてそのような時、経営者は「投資家とは、投資をした以上の何らかの利益を得るためにお金を預けている」という当たり前の原則すら、きれいに忘れ去っているだろう。

 

これから様々な、あるいはすぐに使える役に立つお話も踏まえて解説していくつもりだが、冒頭にその原則だけは、どうしても強く念押しをしておきたい。

増資とは、決して株主から貰ったお金ではなく、その資金の運用を経営者として預けられているだけに過ぎないという事実。

そのことをしっかりと理解しなければ、これから記述することなど何一つ役に立つ知識にならない。

ぜひそのことを、肝に銘じてもらいたい。

 

なおこの先のお話は、大きく3つのパートに分けて進めていきたいと考えている。

そして具体的な経営計画の立案やその際に必要になる記述内容と言った、いわば「ノウハウ」に近いものは、最後の第3パートに記載することを考えている。

そしてそれまでの第1パートでは、

・そもそも増資とはなにか

・どのようなメリットやデメリットがあるのか

と言った基礎知識。

第2パートでは、

・投資家の種類

・それぞれの目的

といった、投資を受ける立場として必ず知って置かなければならない常識を解説する。

そのため、これらのことにある程度知識があり、とりあえず経営計画書のノウハウだけを知りたいという人であれば、第3段落から読み進めても問題はないだろう。

但し、投資を受ける上で第1~第2段落に関する知識に不安があるようであれば、第三者割当増資には絶対に成功することができない。

万が一、上手く投資を受けることができたとしても、勢いだけで結婚した夫婦のようにそのカップリングは必ず失敗し、近い将来に破綻という悲惨な結末を迎えることになるはずだ。

そのためぜひ、基礎からしっかり抑える意味でも、最初から読み進めて貰うことをお勧めしたい。

 

前置きが長くなってしまったが、以下、本論に入りたい。

 

 

2. 第三者割当増資の基礎知識

2-1.増資とはなにか、第三者割当増資による資金調達が意味するもの

会社経営者であれば、おそらく誰でも知っているだろう。

銀行からお金を借りるという行為は、相当な与信を積み上げてやっと、話を聞いてもらうことができるレベルになれる。

会社を設立したばかりであれば、お金を借りるどころか、都市銀行の街中の支店に足を運んでも、口座開設すら断られるのが現実だ。

私自身、会社設立後その足で登記簿謄本と印鑑登録証、それに実印を持ってある都市銀行に足を運んだ時、受付の若い女性の段階で口座開設書類を突き返されたことがある。

そこから始まり、政府系金融機関で初めてお金を借りられるようになるまで1年。

さらに、信用保証協会の保証付き融資を利用できるようになるまでそこから半年が必要になった。

ただこの期間も、長さではなく売上の立ち上がりだ。

売り上げが順調に立ち上がり、事業がキャッシュに変わることでやっと、銀行はこちらを向いてくれるようになった。

 

なお少し余談をさせていただくと、私は元々中堅規模の製造業の会社で、CFOとして経営を支えていた。

そのため、億単位での借入金や第三者割当増資というキャッシュの動かし方に慣れていたために、すっかりと世の中を舐めきっていたところがある。

しかし独立してやっと初めて、このようなお金の動かし方ができる会社と、経営トップの与信の分厚さや存在の大きさを思い知ることになった。

CFOを務めていた時には、例えば中小企業では「当貸(当座貸越)」、少し大きめの会社では「コミットメントライン」と呼ばれる、ある程度フリーでお金を借りることができる与信枠まで、銀行から与えられていた。

これらの融資は、いちいち経営計画書をまとめ資金使途を明確にしさらに事業の立ち上がりまでを明示しなくても必要資金の融通を受けることができる、非常に大きな会社としての信用だ。

しかし、そこにたどり着くまでにはどれほどの実績を積み上げる必要があり、また苦労があったのか。

経営者として独立した後に、経営トップとCFOという僅か1段の差が、実はアマチュアとプロほどにも経営者として差があることを思い知らされることになったが、いい意味で役員は、身の程を知るべきだ。

自分がオペレートしている与信は、経営トップであり会社への与信であって、CFOである自分の能力に対する与信など、おそらく自分が思っている1%も含まれていない。

それが与信というものに対する、世の中の現実だ。

 

話がそれたが、ここでお伝えしたかったのは、銀行借り入れですら、それほどお金を調達するのは難しいということだ。

実績を積んでやっと、数百万円程度のお金を借りられるところから始まる。

その返済が終われば、やっと1000万円単位の借り入れが見えてきて、後はそのステップバイステップとなる。

そして保証協会付融資でも、経営トップが会社の連帯保証人になり、万が一返せない事態に陥った場合にはきつい追い込みがある。

毎月返済していく銀行借り入れですら、お金を調達するためには、このような手順を踏まなければならない。

 

その一方で、投資はどうだろうか。第三者割当増資を引き受けた企業や個人が、例えば貴方の会社が発行する新規の株式を3000万円で取得した場合。

貴方はこの投資家に対して、毎月の返済などする必要は全く無い。利息を払う必要もない。

利益が出て、さらに「気が向けば」配当を出せばよいだけだ。

投資契約書などで特別な権利・義務をそれぞれに課している場合はこの限りではないが、基本的に投資家は、出したお金を会社からは返してもらえることもない。

その株式を誰かに譲って換金するくらいしか回収する手段はないが、それとても未上場企業の場合、株式の譲渡には制限をつけていることが多い。

つまり、会社は返してくれない上に、取得した株を勝手に誰かに譲って現金化することすらできないのが、未上場企業の株を巡る一般的なルールだ。

投資家目線に立てば、投資したお金を投資した以上の金額にすることはもちろん、元本の回収すら、融資に比べて格段に難しいという現実を、最初に理解する必要がある。

 

まずは第三者割当増資について、投資家目線からの基本をおさらいした。

その上で、ではなぜ投資家は、確実に利息分だけでも儲かる可能性がある融資ではなく、投資をしようとするのか。

その解説に進みたいが、その前に知っておく必要があるのは、そもそも株式とは何なのか、といったレベルからの再確認だ。

知っているようで、本当に知っていると言い切れないのがこの株式という、会社の大本となる資金の源泉と言って良い。

以下、この点について

・株式とは何か、どう言う理屈で資本金に組み入れるのか

・どのような相手から資金を受け入れるべきなのか。投資家はどこで見つけるものなのか。

・資本を受け入れるメリットとデメリット

の3つの視点から、解説していきたい。

 

2-2.株式とは何か、どう言う理屈で資本金に組み入れるのか

辞書的なおさらいをすると、株式とは会社に出資した証書であり、権利を表す概念だ。

一般的な起業の例を用いながらお話すると、例えば500万円を元手に株式会社を起こした経営者がいた場合。

株式会社という法人に手持ちの500万円を引き渡し、その出資した証である株式を、出資者である経営者が法人から与えられることになる。

株式会社は通常、この株式の持株比率に応じて法人としての意思決定をする権利が与えられているので、100%の株式を保有する起業経営者は、必然的に法人の意志を100%決定できる。

そのため経営者と株主・法人に区別がなく、オーナー経営者などとも呼ばれるが、日本の中小企業は実質的に、ほとんどの会社がこの形だろう。

株式会社とは、その会社の出資者である株式の持ち主、すなわち株主の意思決定で運営される組織ということだ。

この点については、無駄に解説する必要は無いと思うので、この程度で次に進みたい。

 

次に、資本金への組入れの理屈だ。この点については、多少の解説が必要になる。

というのも、資本金500万円で会社を起こした会社経営者は、資本金を500万円にして会社を登記するだろう。

当たり前だ。会社の元手となる資本、すなわち資本金が500万円なのだから、会社の資本金は500万円に決まっている。

しかし実は、この当たり前のことは、当たり前ではない。

例えば貴方の会社に出資したいという投資家が現れて、1億円を投資してくれる事が決まった場合。

新たに株式を発行し、1億円と引き換えに所定の株式を引き渡すことになる。

これが第三者割当増資だが、この場合投資受け入れ後の資本金は、ほとんどの場合、105百万円ではない。

よほど特殊な目的がない場合、55百万円にする会社がほぼ100%だ。

1億円を新たに、資本として受け入れたにも関わらずである。

では、残りの50百万円はどこにいったのか?

それは、特別税として国に盗られる・・・などという理屈ではもちろん無く、資本金ではない「資本準備金」として勘定される事が普通であると、理解しておいて欲しい。

 

なおこのコラムの目的は言うまでもなく、経営者に対してバランスシートのお勉強をしてもらうためのものではない。

そのためその違いについてはバッサリとカットするが、いずれにせよそのどちらも、名前が違うだけで普通に、投資家から投資をしてもらった資本として使うことができる。

ただ、通常は株主から受け入れた資金については、その1/2を資本金に組み入れ、残りの1/2を資本準備金という勘定にするという理屈だけ知っておけば事足りる。

それでも物足りなければ、何かあった時に資本準備金に入れておいた方が、バランスシートのお化粧には便利ですよ、というくらいだ。

それで十分であり、会社を経営する上でそれ以上の知識は、多くの場合必要にならない。

ただ中には、少しでも資本金を大きく見せたいがために、全額を資本金に組み入れる「おかしな」経営者もいる。

1億円以上の資本金を積んだ会社には外形標準課税の適用もあり、資本金が大きくなる事に何も良いことはないのだが、資本金の大きさは会社の与信だという考え方を持つ経営者は意外に少なくない。

そのため、そんなレアケースを知っておいても、損はないだろう。

 

ところでなぜ、大した意味もなさそうなこの勘定を引き合いに出したのかだ。

それはこの違いを知っておくことで、少しばかり取引先の状況や気になるライバル会社の与信などを知ることができるからである。

それはなにか。

株式会社であれば、言うまでもなくその全ての会社は、法務局に登記をしている。

そして誰でも、法務局に足を運べば任意の会社の登記簿を見ることができ、その会社の発行済株式数と資本金を知ることができる。

ということは、貴方の気になる会社の登記簿を見れば、いつ増資し、その際にいくら資本金が増えたのかを確認することができるということだ。

そしてある時、その会社の資本金が50百万円増えていれば、ほぼ間違いなく1億円の資金を調達したと考えてよいだろう。

なぜなら通常、よほど特殊な目的がない限り、調達した資本の半分だけを資本金に組み入れ、残りは資本準備金にするからだ。

そしてその時の発行済株式数が10000株増えていれば、1億円÷10000株で、一株辺りの株価は1000円であったことがわかる。

そしてこの1000円に、発行済株式の総数を掛けると、その会社の時価総額がいくらであるのか。

投資家がどう判断して、その会社に投資をしたのかが理解できることになる。

 

この情報からわかることは、その会社が投資家から非常に高い評価で増資を受けたのか。

それとも悲惨なくらいの安値で買い叩かれたのか。

あるいは常識的な株価での増資であったのか、と言う事実だ。

通常投資家は、投資をする前にその会社の財務状況や取引先の状況など、あらゆることを調査してから投資を行う。

そのような情報を得た上で、投資家がその会社をどう判断したのか、といった情報を得られることが、実は登記簿の隠れたメリットだ。

但しこの事実は、資本金と資本準備金の存在、その一般的な組入れのパターンを知らないと、理解することができない。

そのため、「株式とは何か、どう言う理屈で資本金に組み入れるのか」というこの段落で、ややその仕組を詳述させて頂いた。

登記簿の使い方を含めて、取引先の会社の与信を気にするCFOなどであれば常識的な知識だが、このような使い方ができることもぜひ知っておいて欲しい。

本論に戻りたい。

 

2-3.どのような相手から資金を受け入れ、その相手はどこで見つけるのか

どのような投資家から投資を受け入れ、またどの程度の持株比率までを、外部の株主に許容するのか。

そのようなことを、長期に渡って計画することを「資本政策」という。

一度資本を受け入れ、株主の地位を得た投資家のポジションは極めて強固だ。

投資契約書などに反する重大な事実でもない限り、一度投資を受け入れた株主に、「お金を返すから株主から降りてくれ」などと言っても、株式会社にはそのようなことを要求する権利はない。

早い話が、一度誤った資本政策は、後からどれだけ頑張っても取り返しがつかないということだ。

 

これは具体的に、どのような実害をもたらすのか。

例えば万が一、反社会的勢力のフロント企業だと気が付かずに投資を受け入れてしまった場合を、想像してみて欲しい。

多くの場合、官公庁は言うに及ばず、一般の取引契約書でも、反社会的勢力と関わりのある会社である事が判明した場合には、一方的に契約を打ち切ることができるという条文を織り込んでいることがほとんどだ。

そしてその契約破棄に伴う実害すらも、反社(反社会的勢力)と関わりがあると判明した会社が負担するのが社会のルールとなっている。

更に言うと、その事実が判明した場合、銀行も確実にその瞬間に、口座を凍結する。

早い話が、このような資本政策の失敗は一発アウトの致命傷であり、確実に会社は飛ぶということだ。

そして反社は、元からそのような目的で投資先を虎視眈々と探し、まんまと株主になった後にその事実を伝え、取引先や銀行にバラされたくなければ・・・という恐喝が始まることすらある。

 

「どのような相手から資金を受け入れるべきなのか」という問いの半分には、この事例だけでほぼ答えになっているだろう。

いくら取引額の大きな相手であっても、その株主構成や経営者の素性がよくわからない会社からは絶対に、資本を受け入れてはならないということだ。

ただの取引先であれば、その事実を知った瞬間に取引を切れば済む。

本当に知らなかったのであれば、ただ取引をしていたという事実を持って直ちに、銀行を始め取引先から一発アウトを宣告されることはない。

しかし、すでに株主になってしまっていた場合には、よほどの事がない限り追い出すことは難しい。

 

結局、投資受け入れを検討するべきは、大手のVC(ベンチャーキャピタル)と呼ばれる投資を仕事にするよく知られた会社か。

あるいは上場企業など、その素性に間違いのない会社か。

取引先であっても、自社に投資をすることに客観的な合理的であり、なおかつ経営者同士の長い付き合いがあって、信頼できる場合に限られるだろう。

ただその場合でも、経営者もしくはその株主構成に変更があった場合には、株式を買い戻す事ができるという投資契約を結んでおくのが一般的だ。

資本政策とは、それほどまでに慎重に立案し、実施しなければならない。

 

では次に、そんな健全な投資家をどこで見つけるのか、ということについてだ。

ただこの点については、本コラムの最終的な目的は第三者割当増資を成功させる経営計画の考え方にある。

そのためここでは、それだけでも1コラム建てられるようなこの話題は大幅に割愛したい。

VC(ベンチャーキャピタル)などプロの投資家は、取引銀行などに相談すれば、いつかはたどり着く。

自社の与信が十分な場合、銀行系VCが投資の相談にのってくれることもある。

上場企業など大手が取引先である場合、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)と呼ばれる投資部門を持っていることもある。関係強化を図りたい場合は、担当者に相談してみればどうか。

という程度に留めておきたい。

それ以外に、仲の良い経営者や未上場の中小企業からの投資を受け入れたい、という点については、責任あるアドバイスをこの極めて限られた分量では、とても記述することができない。

そのためこの程度でご容赦願い、改めて機会があれば解説したい。

 

2-4.資本を受け入れるメリットとデメリット

最後に、外部から資本を受け入れるメリットとデメリットだ。

この点については、辞書的な理解で箇条書きにすれば事足りるものであり、難しいものではない。

簡単に触れた上で、実際に資本政策を預かっていた立場での現場感を加えた上で、さらっと流していきたい。

 

まずはメリットからお話したい。

おそらく「外部株主 メリット」あたりで検索すると、教科書的なことを解説するページは山のようにヒットするだろう。

そしてその内容は(見ていないが)きっと、経営に緊張感が出る、第三者の冷静な意見を元に経営判断ができるというような、現実離れした現場を知らない素人が書いたような意見が並んでいるはずだ。

 

だがこれらの意見は、言うまでもなく的外れだ。

そもそも、外部株主がいなければ経営に緊張感を持てないような会社であれば、第三者割当増資など受けられるような会社でもなければ経営者でもない。

そんな緩い会社に、外部株主の資本を預かり経営するような資格もなく、存在すること自体が疑わしい、第三者割当増資の実例と言っても良いだろう。

これらの仮定は、上場企業のように雇われ経営者がトップを務める会社や、多くの株主と利害関係を持つケースであれば、多少は当てはまるかも知れない。

しかし、中小企業のオーナー経営者が外部から、僅か数%の投資を受け入れたところで緊張感が増すなどということは、絶対にありえない。

そして上場企業の経営者などは決して、「外部株主 メリット」で検索するようなことはありえない。

 

更にもう一つの方だ。

外部株主を受け入れることで第三者の冷静な意見を元に経営判断ができるのか。

これも同様に、上場企業の経営者であればそのようなこともありえるだろう。

しかし、本当にそのメリットを知りたいと考えているような中小企業経営者の疑問に、全く答えるようなものではない。

その理由は、もしこのコラムを読んで頂いているのが経営トップ本人なら、説明など要らないだろう。

あなたは、たかだか数%程度の持ち株比率分のリスクしか負わない株主の言うことなどを本気で参考にして、経営判断を下すことはありえないからだ。

もし聞く耳を持つ気があり、そのメリット狙いなら、外部株主ではなく経営コンサルに相談するべきである。

そしてその場合も、結局最後は、聞く耳を持たないだろう。

 

読んで頂いているのが、CFOなど中小企業の役員であれば、更に答えは簡単だ。

あなたの会社の経営トップは決して、持株比率で数%程度の株主の言うことなど本気で聞かないことを、役員である貴方がよく知っている。

つまり、「外部株主 メリット」という意味では、会社や経営者の判断に対して何らかのオプションが期待できるワケがない、というのが結論だ。

 

では、本当のところは何が期待できるのか。

それは株主に対し、株主になったことに対する責任を、本気になって迫れるということだ。

これは、VCなど投資を専業にしている株主に対して特に有効だが、例えば取引先や販路を広げたい場合。

株主の系列企業や取引先に、自社にとって魅力的なそれら候補先があった場合には、私は常にそこに繋ぐよう、本気で迫り続けた。

そして担当者が労を渋り、あるいは動きが遅い場合には、本気で怒った。

なぜなら、

「貴社は、当て物で投資業をしているのですか?」

「投資をした会社から、確率論でどこかが上場すればいいと考えているのですか?」

と、その怠慢に対し本気で怒ることには、筋が通るからだ。

株主責任を果たす気がなく、当て物のつもりで株主になったのなら、今すぐ降りろと本気で迫る。

 

株主とは、株式会社が最高の意思決定を下す際の構成員である。

つまり、取りも直さず会社経営そのものだ。

だからこそ、外部の人に株主になってもらうということは、自社の経営に対して本気になることを強制できることに他ならない。

未上場の中小企業経営者からすれば、外部リソースを本気で使い尽くすためのツールを手に入れたと言ってもよいだろう。

それが、外部の人に株主になってもらう最大のメリットだ。

 

一方で、デメリットのほうだ。

正直、こちらは経営トップに確固たる意志があり、何があっても最後まで会社の全てに責任を持つ覚悟があるのであれば、特に大きなデメリットは感じない。

あくまでも未上場企業のケースを前提にお話しているが、極論すれば創業経営者が経営トップをしている会社の場合。

持株比率が仮に外部株主が99%になっても、経営の主導権を経営トップから奪うことは容易ではない。

なぜなら、外部株主が「じゃあ貴方、クビです」と経営トップに言うことなど、ほぼ不可能だからだ。

外部株主にとっては、創業経営者がその会社の多くの価値を占めていることなど、嫌という程わかりきっている。損得勘定から言っても経営トップの挿げ替えなど、賢明な株主にはまず俎上に上がってこない選択肢だ。

そのため、未上場の中小企業にとっては、持株比率=発言権では決して無い。

だからこそ、経営トップが腹をくくり全てに責任を持つ覚悟があれば、外部株主の言うことなどに一喜一憂することなどありえないということだ。

だから、デメリットなどおおよそ見当たらない。

敢えて言うのであれば、事業の売却や会社を身売りするような、経営者であることを諦めるような選択肢を考える場合だろうか。

この場合は、100%の持ち株オーナーである場合と、外部株主がいる場合では、法的に求められる手順も、実際に果たすべき義理と言う意味でも、やらなければならないことは尋常ではない量になってくる。

 

確固たる意志を持ち会社を経営する中小企業の経営者にとって、外部株主を受け入れるデメリットとは事実上、その程度のものである。

逆に言うと、覚悟があるのであれば、しっかりと自分の力量と「約束できること」を照らし合わせ、積極的に外部株主を受け入れ、資金調達を行うべきだとアドバイスをしたい。

 

3. 第三者割当増資の目的、投資家種類別3パターン

とはいえそれでは、中小企業経営者は外部株主から資本を受け入れても、その目的や心情を理解せずに会社経営を進めても良いのか。

それがNGであるのは、冒頭のイントロダクションで何度も、太めの釘を刺させて頂いたとおりだ。

会社経営者は、自分で経営の全てに責任を持つ覚悟を持ちながらも、株主の利益を実現させる鉄の意志を持たなければならない。

それが、新たな会社のファンを生み、新しい協力者を次々に呼び込み、物心両面での会社の発展に繋がっていく事になるからだ。

真剣な投資家の真摯な期待に対し、それ以上に真剣に取り組み、真摯な努力を重ね、そして結果を出した経営者こそが、外部株主の「資本金」を預かることができる本当の経営者になることができる。

 

では、そんな経営者になるためには、投資家が何を期待し未上場の中小企業にリスキーな投資をするのか。

そのことを正確に理解しておく必要があるということだ。

以下、その点について、

・VC投資家の狙い

・同業他社などに投資をする会社の狙い

・従業員や役員

の視点から、お話をしていきたい。

 

3-1.VC投資家の狙い

この点は単純明快だ。VC投資家の会社の経営方針にもよるが、投資で利益を出そうとする職業投資家が未上場企業に投資をする思惑は、キャピタルゲイン(売却差益)の獲得ということに尽きる。

ただ、VCによってはファンド資金の運用先を純粋に求め、必ずしもIPO(株式の新規上場)を要求しているわけではないことも多い。

特に、ファンドの運用報酬で経営が成り立っているような会社の場合にはこの傾向が強いが、これは投資を受けるほうが知っておく必要がない知識なので、割愛したい。

細かくお話していけばいくら分量があっても足りないので、ここでは最大公約数のコラムニーズに応える内容だけを記しくことで、ご容赦を頂きたい。

つまり、VCとはキャピタルゲインを得るために、未上場企業に投資をする存在であるというもっとも一般的な前提の上での、お話だ。

 

このVC投資家。

大きくは「独立系」「金融機関系」「CVC」という3つに分けられるだろう。

独立系とは、例えばジャフコや日本アジア投資のような有名どころがその代表的な存在だ。

いずれの大手金融機関や証券会社から、経営に直接の影響を受けず、投資を専業として会社を運営する。

ファンドの運営報酬と言う収益もあるが、その前提を無視させて頂くのは前述の通りとすれば、投資先が成長し、何らかの形でキャピタルゲインを得ることで経営を成立させているので、その投資判断と投資先にたいする姿勢はシビアだ。

合理性があると思えば、時に強引なほどにIPOを実現させるべく、自社の取引先や証券会社などに投資先を売り込む。

正直、ジャフコからまとまった投資を受けることができ、さらにその担当者や経営者を本気にさせたなら、IPOへの距離は相当縮まる。

取りも直さずそれは、自社が成長する上での非常に多くのオプションを手に入れることができるということだ。

そう言った意味では、「カネの付き合い」という意味では、合理性を前提にした上で最も信用できるパートナーだ。

IPOに向けた現実的な経営計画をたて、着実にその結果を出し続けていれば、最大限の力を貸してくれるだろう。

逆に言うと、もはやIPOの可能性が感じられない体たらくに成り下がった場合には、冷淡というレベルではないほどに相手にされなくなる。

 

例えるなら、利益が出ている会社に対する銀行の対応に似ている。

経営が順調であれば、銀行はいくらでも融資の話を持ってきて、取引先の斡旋もしてくる。

しかし、一度経営が傾き、あるいは与信を失う事態になれば、直ちに回収に走り、場合によっては口座凍結すら躊躇せずに抜き打ちで行ってくるだろう。

なぜなら銀行は、貸し出しの焦げ付きこそが、取引先として最悪の結果だからだ。

独立系VCにとっては、それが、IPOの可能性の消滅と考えれば、ニアリーイコールになる。

独立系VCと呼ばれる会社から投資を受ける際には、この事実をシビアに理解し、その期待に応える覚悟を保つ必要がある。

 

3-2.同業他社などに投資をする会社の狙い

これについては、非常に一般的な投資の形でありながら、正直一般化する話の特定がやや難しい。

中には、取引先であると言うだけでまとまった投資をしてくれる経営者や、逆に投資を欲しがる経営者もいる。

経営者同士のノリでお互いの株を持ち合うなど、小規模なものを含めると無意味なものもあり、些細なものを含めるととてもすべてを解説し切る自信がない。

その上で、未上場の中小企業経営者が資金調達を主目的として、同業他社などから投資を受ける際に知っておくべきことは何か、という観点に絞った上での話としたい。

本コラムの目的はまさにそこなので、目的に照らして外れるケースの話を例外として扱うことについては、お目溢しを頂ければと思う。

つまり言い換えれば、同業他社などから資金調達を目的とした投資を受ける際に、経営者が知っておくべき相手の事情や目的という段落ということだ。

 

しかしそれでもなお、その目的は必ずしも絞りきれない。

具体的に今、私の頭の中には何がよぎっているのかということを少し詳しくお話ししたい。

話はある、誰でも知っているある冷凍食品の大手だった会社のことだ。

その会社は、M&Aに非常に熱心で積極的であったこともあり、最初の一歩として1億円程度の投資であれば、同業他社に数え切れないほどの投資を行っていた。

その目的は、大きくは自社を中心とした業界の秩序やピラミッドを作ることにあった。

さらに下世話なことをいうと、創業経営者個人を中心にした、「息のかかった」会社や経営者を少しでも多く作り上げることにあった。

そして私は、同業他社で取引先であったこともあり、この会社からCFOとして、ある会社で2億円近い投資を受けたことがある。

その結果、経営者個人のお祝いごとや会社の節目に必ずパーティーに出席することを求められるなど、妙な付き合いが求められることになったが、これもまた投資の目的の一つだ。

善意で解釈すれば、その会社を中心とした新しい業界秩序の構築を目論むものであり、悪く解釈すれば、ただの経営者個人の自己満足と言っても良い。

 

そしてこのような同業他社は、正直「おいしい」投資家だ。

ほとんどの場合、あまりうるさいことを言ってこない上に、余りうるさいことを言うと、業界内での名声を失い、主導的立場を失うことになりかねない。

そう言った意味では、投資を受け入れることを積極的に考えるべき相手であることは、間違いがない。

無意味で退屈なイベントも、仕事と割り切ればいくらでも笑顔で出席することができる。

 

ところでなぜ、私がこんな極端な話を先に持ち出したのかについてだ。

そんな「個人的な極論」を例示で出されてもわからないと思われるかも知れないが、その解釈は間違っている。

なぜなら、多かれ少なかれ同業他社や取引先に投資をしようと考える経営者の考えることは、突き詰めればここに行き着くからだ。

この事例は、そんな経営者が行き着くところまで行き着いた一つの形に過ぎない。

 

あるいはまだわかりにくいかもしれないので、箇条書きにまとめて説明してみたい。

同業他社にまとまった資金を投資するほどにキャッシュに余裕がある会社経営者や会社の考える事についてだ。

その目的は概ね、以下のようにまとめることができるだろう。

 

・仕入先を安定的に確保したい

・販売先を安定的に確保したい

・より有利な条件で取引を進めたい

・経営者個人と個人的な信頼関係を深めたい

・投資先の経営に一定の影響力を持ちたい

 

他にも、ノウハウの仕入れ、技術や販路の提携、もしくは最初から乗っ取りを目的としていることなどもあり、細かいことを挙げていけばキリがないが、それらは全て最後の「経営に一定の影響力を持ちたい」で包含していると解釈して欲しい。

それでもなお、これらが全てであるとは言わないが、概ね80%程度の事例は抑えられているのではないかという仮定で、話を進めていく。

 

その上で、これらのことが目的なのであれば、その究極の形は、自社を中心とした業界の秩序を作り上げようとする先の事例の企業そのままだ。

時には、経営者個人のイベントにも参加を求め、その忠誠心を試すこともあるだろう。

意味のわからない業界団体を立ち上げ、ルールを作る側に回りたがるかも知れない。

そのための投資として、第三者割当増資を引き受けるということも、あるということだ。

 

これは経営者個人ではなく、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)という形であっても、それほど大きな違いはない。

未上場企業に投資をし、その売却益で経営を成り立たせようとする純粋なVCと違い、事業が主体である同業他社の場合は、投資の目的がキャピタルゲインだけではない可能性が極めて高いということだ。

その場合、VCと異なり投資家の本当の目的を見極めることは、時に会社を失うことにすら成りかねない、重大な意志を含んでいることもあるだろう。

逆に、シビアな考えなどまるでなく、業界内で名士と讃えられたいという、極めて安い「投資」であることすらあるのが、この同業他社投資だ。

そのあたりはケースバイケースであり、個別のケースでしっかりとシミュレーションするべきだが、概ね上記の5つの目的に集約されるのではないだろうか。

「タダほど高いものはない」という格言以上に重い、「タダで貰ったお金ほど重いものはない」という、有り得べからざるリスクにまで思いを馳せた上で、同業他社からの投資を受け入れて欲しい。

 

3-3.従業員や役員

ほとんどの会社経営者にとって、余り想定していない観点ではないだろうか。

従業員や役員という「投資家」の存在である。

 

経営者の中には、取引のある証券会社から勧められ、従業員持株会制度を敷いている会社もあるかも知れない。

あるいは、少しでも経営者意識を持ってもらおうと思い、もしくは少しでもリスクを共にしてくれた社員を思って、会社立ち上げ初期からのメンバーにSO(ストックオプション)を付与する経営者も少なからず存在する。

その志は、リーダーとしてはとても素晴らしいものだ。だが私は、同じ会社経営者としてであれば、このような施策を導入する経営者の感覚を疑う。

なぜなら、コストと結果が全く釣り合わないだけでなく、場合によっては会社組織にとっても取り返しのつかないダメージになりかねないと考えるからだ。

 

まず、前提として、そもそも従業員持株会やSOは、未上場企業の従業員や役員にとって、インセンティブになりえる、という間違った仮定についてだ。

どう考えてもなるわけがない。

私自身、東証一部上場の01銘柄(業界を代表する会社)の大手金融機関に新卒で入社し、従業員持株会にも参加していたが、この半ば強制的に給与からカットされる制度は、ストレスでしか無かった。

なおかつ、株価は自分の意志とは無関係に上がったり下がったりするのである。

自分の努力が及ばないことに一喜一憂するのはバカのすることだと思っている私は、もはや従業員持株会で引き落とされるお金は捨てたものとして諦めていた。

そして実際、退職する時には、積み立てた資金は6割くらいまで目減りしていた。

まして、未上場の中小企業の従業員持株会は、いわば「積立詐欺」だ。

お金は引かれるが、実際に株がリアルタイムで割り当てられるわけではない。

このコラムは従業員向けではなく、おそらくその事実を知っている経営者層向けなので、これ以上の説明は余りいらないだろう。

誰がその状況で、やる気になるというのか。

 

さらに「理論倒れ」が甚だしいのは、SO制度だ。

簡単に説明をしておくと、ストックオプションとは、1株10000円の自社株を、例えば100円で100株買うことができる権利である。

自社がまだ未上場であり、客観的に1株100円の価値しか無い時に、一定の条件や期限を定めて、1株100円で100株購入する権利を、役員や従業員に与える権利と理解して欲しい。

この権利を持っている場合、例えば5年後に自社が上場し1株が10000円になった場合。

10000円✕100株=100万円の新株を、100円✕100株=1万円で購入できるのだから、ボロ儲けである。

実際には、SOはもっと大きな単位で与えられることが多いので、IPOを果たした会社の社員によっては、ただ古くからいると言うだけで1億円のキャピタルゲインを得ることになる社員も珍しくない。

 

余り多くを語るつもりはない。

これは、会社の資本政策として適切だろうか。

そもそも、資本の仕組みや、なぜその報酬が自分に入ってくることになったのかを十分に理解できない従業員にとって、幸せをもたらすだろうか。

多くの場合、自分が生み出した付加価値から極端に掛け離れた収入があると、人は長い目で見て確実に不幸になる。

なぜなら、仕事や会社を舐める者がいることはもちろん、収益の源泉である顧客すらも舐めるからだ。

このような不幸に陥らずにSOを受け取り、正しく理解できる社員など、そもそもが労働の対価を現金だけではないと考えている役員や社員に限られる。

さらに、それがたまたまのめぐり合わせで自分の口座に入金されたに過ぎず、存在しないものとして無視できる意識を持つ役職員だけだろう。

これとは別に、ヘッドハンティングなどで獲得したい役員クラスの人材への報酬として使うことを考えても、私は極めて疑わしいと思っている。

なぜなら本当に優秀な人間は、自分の能力だけでグリップできる努力の範囲外で「運が良ければ得られるかも知れない」鼻ニンジンの収入など絶対にアテにしないからだ。

結果にコミットできるなら、現金での報酬を要求する。

結果にコミットできるうえで、経営者の夢に共感し、その実現に自分の夢を乗せることができる、優秀な人材であれば、そもそもSOという鼻ニンジンは必要ない。

つまりあらゆる意味で、SOが機能すると期待できる局面は少ないということである。

 

要するに「外部株主」、つまり経営トップ以外の株主構成を考える上で、少なくとも従業員のインセンティブとして株主構成を検討することには、相当に慎重であるべきということだ。

少なくとも、大手金融機関、中堅・中小企業CFO、創業経営者というステップを踏んできた私にとっては、このような自己満足の「福利厚生」は全くオススメができない資本政策である理由をいくつも挙げることができる、極めつけの愚策である。

 

4. 資金調達を成功させる事業計画書の具体例

前置きが長くなってしまったが、ここからが、第三者割当増資を成功させる事業計画・経営計画を策定するための、具体的なお話だ。

なお、直前の従業員持株会やSO(ストックオプション)についても、第三者割当増資とは、言うまでもなく無縁の段落ではない。

なぜなら、投資家が嫌うことの大きな要素の一つに、「潜在株」というものの存在があるからだ。

潜在株とは、今はまだ存在しない株主だが、将来のどこかで株主になる可能性が極めて高い存在のことを意味する。

 

その最たる例が、このSOであった。

これら権利の持ち主は、今はまだ存在しない株主だが、いずれ権利を行使し新株の発行を求め、タダ同然の株価で株式を取得することになるだろう。

わかりやすく、少し極端な数字で説明したい。

例えば発行済株式総数10000株の会社で、SOの権利で5000株の新株が予約されていたとする。

そして自社の税引後利益が例えば3億円の場合、一株辺りの利益、すなわち株価にとって非常に大きな指標となるEPSは表向き30000円となる。

ところがこの会社は、いずれSOの権利が行使されて、二束三文の「増資」で、発行済株式総数が1.5倍に増えることがほぼ100%と断言しても良い。

少なくとも、投資家はそう考える。

であれば、この会社の一株辺りの利益は30000円ではなく20000円と計算するのが当たり前の、投資家の考え方だ。

当然、株価は単純に、2/3程度に落ち込む大きな要素となる。

そのようなことも含めて、第三者割当増資による資金調達は、あらゆる要素を計算して考える必要がある。

 

話をこの段落の目的に戻し、第三者割当増資を成功させるために必要な、事業計画書、経営計画書の作り方についてだ。

その要素は非常に多いが、プライオリティで絞り、以下の3つの観点からお話していきたい。

 

・成長性の提示

・収益化計画

・一番大事なことは、大風呂敷を広げないこと

 

まずはこの3つの中で、投資家が最も重視する成長性の計画と、その具体化についてだ。

 

4-1.成長性の提示

投資家の種類により若干の濃淡はあるが、株主になろうとするものが最も重視するのは、やはりこの成長性という要素だ。

職業投資家であるVCや、自社の役職員であれば言うに及ばず、ただ単に取引先として持ち株を持とうとするだけの経営者でも、結局はここを重視する。

成長性とは言い換えれば将来性であり、将来性のない会社に投資をしたいと思う投資家や取引先はいない。

役職員であればそれどころか、転職すら考えることになるだろう。

 

実際に、第三者割当増資の際の株価を決める計算式では、DCF方式(ディスカウントキャッシュフロー方式)と呼ばれる株価算定法が、一つの指標として用いられることが一般的だ。

その専門知識を知っておく必要はないので、いつか使うかも知れない予備知識として断片的に、

「当社は極めて近い将来、いくらの現金を稼ぐ能力があるのか」

という仮定に基づき、株価の算定を行うということだけ、知っておいてもらいたい。

 

ここで一つの生データを紹介したい。

以下は、私が実際に、ある会社のCFOをしていた際に作成した、資金調達を目的とした経営計画の1ページめだ。

適宜、データがどこの会社を指すのかをわからないように少し手を加えているが、エッセンスだけを抜き出してもらいたい。

1ページからはまず、何よりも、過去に当社がどのようなヒストリーを歩み、今回資金を必要としているのか。

そのストーリーから話し始める構成にしていた。

シンプル・イズ・ベストであり、時候の挨拶や社交辞令は必要ない。

表紙をめくった1枚めがこれである。

 

個人のお見合いや会社の就職面接に例えれば、わかりやすいだろう。

最初から、自分の学歴や職歴を語り、何に頑張り、そしてどのような結果を出してきたのか。

いきなり本筋から入るほうがわかりやすい。

自分を無意味に飾り立てて相手を「勘違い」させても、結局不幸になるのが結婚であり就職だ。

第三者割当増資による資金調達も、会社と株主の結婚であり、採用試験である。

であれば、まずはここからシンプルに始めるのが筋だ。

きれいにまとめる必要はない。ただ正直に、自分を理解して欲しいという思いのもとに、真摯に話を進める。

それ以上の必勝法など無い。

分量の都合もあるので、いろいろと端折りたい。

概ね、次に必要になるものは自社の現在と将来だ。

なぜなら、先に示したのは当社の過去の姿と結果であり、現在と未来の姿ではない。

熱に浮かされた恋愛結婚ならまだしも、お見合い結婚や婚活パーティーでは、一流の会社に勤務しているというだけでは十分ではないだろう。

その会社でエリート街道に乗っているのか、あるいはもはや隅っこに追いやられたドロップアウト組なのか。

そんな「知りたい」に応えてあげる必要がある。

会社も同様であり、

「これまでのことはわかった。で、今とこれからはどうなの?」

という興味に、論理的にエビデンスを持って、答える必要がある。

 

上記はその一例で、当社の各事業部と子会社が横軸に。

環境の変化、業界に対するニーズ、当社に対するニーズといった予測変化のマトリックスを縦軸に置いている。

正直少しカッコつけてレイアウトを工夫しているが、こんなことをする必要はない。

「今はどうなのか」「将来をどう考えているのか」

その2つに、シンプルに説得力を持って応え無くてはならない、という本質だけを拾ってもらえれば十分だ。

 

これ以外にも多くの資料があり、ページ数はあるが、結局のところ投資家のその要求に答えるための資料に過ぎない。

そのため、無駄に資料を重ねるつもりはないのでこの程度に留め、エッセンスだけを拾って欲しい。

 

これがまず、「第三者割当増資を成功させる」経営計画の掴みだ。

 

4-2.収益化計画

次に必要になるのは、収益化計画である。

誤解を恐れずに言えば、上記のマトリックス画像はインチキだ。

何がインチキか。それは何一つ定量的なデータを示していない、主観だけで作成されたお手盛りの資料だからである。

こんな適当な作文で、マネタイズ計画も示さずにお金を出してくれるほど、投資家は甘くない。

 

婚活パーティーでは、「給与明細を見せろ」とまでは言われないかも知れないが、第三者割当増資では絶対に要求される。

そして投資家候補からは、「貴方に将来性があるというご自身の主観は理解できた。では具体的に、何歳でどのポストに昇り、どのような収入になり、何歳で家が建てられるのか。」といったシビアな計画までも出すよう、要求されると置き換えて欲しい。

いや、正確には要求はされないが、自ら示さない限り、魅力的な結婚相手は口説けないということだ。

相手が知りたいと思うことを自らディスクローズすることが、勝敗の分かれ目になることは、増資であろうが結婚であろうが、大学生の合コンでも同じだ。

それが、「一緒になること」の真理と言って良い。

素性の良くわからない相手とは、ノリで一晩を共にすることすら、恐怖でしか無い。

その意味で、現金と資産、すなわちP/L(損益計算書)と、B/S(貸借対照表)くらいは、将来予想をできるようになっておくことをお勧めしたい。

本当はこれに、CF(キャッシュフロー)計算書もつけたいところだが、最低限、上記の2つがあれば、後は勝手に投資家側が計算し、将来予測をする。

そもそも、どれだけ精緻で細かい予想を立てたところで絶対に当たらない。

その上、投資家はこの2つさえ渡しとけば必ず、付随するいろんな将来予測を勝手に計算して、自分で裏付けを取る。

そう言った意味では、P/LとB/Sの説明さえしっかりとできるようになっておけば、後は相手が勝手に動いてくれるということだ。

経営者は、事業を回すことが本業である以上、資金調達は手段であり目的ではないのだから、無駄な作業は極力するべきではない。

 

この資料を作った時の私のように、CFO専業の人間を採用しているなら、徹底的に細かな資料作りと、あらゆる質問に耐えられる計算式づくりを、経営トップとして要求してもいいだろう。

ただしそんなことをしても、結局は第三者割当増資を成功させる上では、数%程度の成功確率を上げる効果しかないだろう。

なぜなら、どれだけ精緻できれいな数字を伴う経営計画書を作り上げたところで、そんなものが絶対にあたらないことは、投資家であればよく理解しているからだ。

誤解を恐れずに言えば、経営者ですらその当否は正直わからない。

ただ、そのようになるよう努力はする。

だから、この段落のエッセンスは、

「自分には何が見えているのか」

「その結果、どうなると予想しているのか」

を定量的に表す、おおよそのセンスを証明するだけでいい。

もちろん、上場企業ともなればそうは行かない。

絶対にあたらないという事実には違いはないものの、その結果には経営者として、ある意味理不尽ではあるが定量的な責任を背負うことになる。

そのため、このエッセンスは中小企業、とりわけアーリーからミドルにある売上高50億円以下の会社を想定して頂いて読んだほうが良いだろう。

ただ、断言するが、このコラムをここまで読み進めて頂き、何かを得たいと思って頂いている貴方の会社は高確率でこのレンジに入るはずだ。

だから私も、少しでも役に立ちたいと思い、更に筆を進めていきたい。

 

4-3.一番大事なことは、大風呂敷を広げないこと

第三者割当増資を目的とした経営計画の立案で、ある意味でもっとも重要な教訓だ。

特に未上場企業で第三者割当増資をしようとする会社は、より多くの資金を、より小さな持株比率の放出で得ようとして、将来収益を大きく見せようとする傾向がある。

しかしそれは、絶対にやってはならない。

この図は、私が実際にCFOとして第三者割当増資に際し、作成を余儀なくされた資料だ。

役員会での決議を経て、やむを得ず策定し私の名前で外部に配布さえしたが、冷静に考えて実現可能な数字かどうかは、子供でもわかるだろう、

仮に単位が千円であったとしても、18万円しか売れていないものを、4年で1700万円にすると読める。

さらに単位は千円ではなく、それよりも遥かに大きな数字だ。

ある製品の売上を4年で100倍にするなど、そもそもCFOの立場でなくとも、CF(キャッシュフロー)が追いつかないことは容易に理解できるだろう。

仕入れ先に対する与信も追いつかず、物量の融通もしてもらえるはずがない。

ロジスティックスも回らず、どうやってそんな物量を輸送するのか、といった問題もある。

 

投資する側にとって魅力的な事業計画書の作り方は、以下の記事も詳しく解説しているのでご覧いただきたい。

 

関連記事:【2019年完全保存版】事業計画書の書き方100%ガイド!担当者に必ず響く事業計画書の作成方法&テンプレート

 

しかし、第三者割当増資に成功する時の会社の空気というものは、投資家を含めて少し異常なものがある。

そのため、こんな資料でも正直通ってしまうことがあるのが実情だ。

日本の投資家と言われるような連中はアホなんじゃないかと、正直数字を理解している立場から言えば本気で戸惑うこともあったが、しかしそれでも、こんな経営計画で調達した資金は、長続きしない。

極めて近い将来、更に言うと1年目から計画は破綻し、

「説明して下さい」

と、CFOが槍玉に挙げられることになる。

そして、CFOが防波堤になることができるのは、計画が無茶であればあるほどすぐに限界が来る。

上記のような無茶なものであれば、CFOで食い止められるのはせいぜい1年だ。

それ以上は、どう考えても定量的な説明と達成見通しなど示せるはずがなく、

「社長を出せ」

となり、社長自身が何も説明できない追い込まれ方をするようになり、やがて経営トップは、本来やるべき仕事が何一つできなくなる。

資金調達は手段であり、株主は応援団であるはずなのに、その資金調達をした事実に会社は忙殺され、経営トップは株主対応に追われる会社が、成長できるわけがないではないか。

そして会社は、確実に破綻へと向かっていく。

 

正直、より少ない持株比率の放出で、より多くの資金を得たいという経営トップやCFOの気持ちは痛いほどよく理解できる。

というよりも、私自身、20~30代の頃はそうやって資金を調達してきた。

しかしそれは、長い目で見れば「信用」や「信頼」というかけがえのない資産とのバーターであり、何一つ得をしていなかったことに、いつか必ず気がつくだろう。

むしろ、未上場の中小企業のうちから応援してくれるような投資家には、多めにカネを握らせるべきだ。

それは取りも直さず、「控えめな経営計画」であり、有限実行、確実な約束の履行である。

結局、長い目で見ればその方が、

「あの会社と社長は信頼できる」

「あのCFOの予測なら、きっと数字が上振れするはずだ」

といった期待値となり、数字に現れない非常に大きなプラスに繋がるだろう。

ぜひ、というよりも絶対に、この点は強く心掛けて欲しい。

 

まとめ

この原稿を依頼されているメディアから、最後は「まとめ」という段落を作るよう要請されているので一応、段落を設けた。

しかし、言いたいことは概ね言い尽くした。

ネットで調べれば誰もわかるような、安っぽいまとめ記事を書くよう要請するメディアであれば、

「以上、貴方もお試しになってはいかがでしょうか~(うふっ♪)」

とでもまとめたいところだが、あいにく私はそんなセンスを持ち合わせていない。

なによりも、このメディアは私の体験談を求めるくらい変わりものの会社なので、そんな締めは期待していないだろう。

そのため、何もまとめずにこのまま終わりとしたい。

 

敢えて最後にお伝えするのであれば、結局はテクニカルなことなど、真摯な思いと正直な経営姿勢の前には、全く敵わないということだ。

もし貴方が尊敬されるような経営者であり、大きな付加価値を生み出す可能性のある会社を経営しているなら、銀行や証券会社、証券代行と言った会社の連中が決して放っては置かないだろう。

極論すれば、例え経営者本人が損益計算書や貸借対照表が読めなくても、その程度の知識を持ち合わせた人材など、いくらでも連れてきてくれる。

それが、銀行や証券会社の利益につながるからだ。

 

大事なことは、自分と自社は誰の期待に対して、どのように応えるのかという本質に過ぎない。

第三者割当増資はその一つの手段であって、最後の最後にはテクニカルな事がその成否を左右することもあるかも知れないが、本質は経営者の経営姿勢であり、会社そのものが審判を受けるということだ。

だからこそ、このコラムを参考にしてもらうことがあっても、真に受けないで欲しい。

エッセンスを抽出して、一つの小話として「なるほどね」と思ってもらえることがあれば、幸いだ。

 

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大学卒業後、証券会社に勤務。その後、縁あってIPOを目指す製造業やサービス業、IT業の会社でCFOを務め、資本政策や資金調達など財務畑の責任者を担当してきました。 その間、買い手・売り手の双方で繰り返しM&Aや事業承継を主導し、また債権の係争で訴訟に訴えるなど、財務とリーガルに関する法務的な立ち回りも求められ、一定程度の総務・法務の現場経験有り。 その後独立を経て、現在は記事ライティングや専門知識の提供を行い活動しています。

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