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【M&A STORY】理解を深めよう!正しい事業売却の方法とは?

会社が儲かっておらず資金繰りが苦しい時、経営者であれば何を考えどのように乗り切ろうとするだろうか。本記事では事業譲渡(会社承継含む)によって改善を図る方法をご紹介したい。

 

 

会社経営の通常セオリーは、会社が窮地に陥ったとき、売上を伸ばせる余地があるなら営業拡大など積極攻勢に出ることがほとんどだ。

 

守りに入るタイプの経営者であれば、まずは自分自身の給与を含めて経費の削減を考えるかも知れない。もちろんその延長線上には、規模の大きな会社であれば従業員の給与削減、人員整理、製造原価のコストカットといったセオリー通りの方法も一通り試そうとすることもあるだろう。

 

CFOなど金融テクニックや財務の知識に秀でたものがいれば、銀行にリスケ(リスケジュール;借り入れ返済の見直し)を申し入れるか、あるいは手形を使って入出金時期を調整するのも一つの手になる。

 

いずれの方法も、銀行が通常の融資に応じてくれない、もしくは既に信用保証協会融資の枠を使い切っており、借り入れのめどが立たない時などに、恐らく経営者であれば一度は考える方法ばかりである。

 

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1. はじめに

 

では、その全てを使い切ってしまえばどうしたら良いのだろうか。これらの方法あるいは努力を重ねてもなお資金繰りは苦しい。しかし、支払い時期はきっちり暦通りに普通預金口座に訪れ、静かに現預金残高を削り落としていく現実。

 

恐らく最後の手段としては、それが会社の売上に不可欠なものであったとしても、有形・無形の資産を換金していくという方法に着手することを考えるかも知れない。

 

お金になるものは全て売却し、なんとかその間に抜本的な経営の立て直しを図り、当面のキャッシュを繋ぐ、といことである。しかしそれも、もちろん限界がある。そこまでいくと頭を抱え、さすがにほとんどの経営者は手足が止まる。

 

なおここで、少し私自身のお話をすると、私自身、年商50億円を越えるあるメーカーのCFOを務めていた時に、これらのことを全てやり尽くした。

 

縁あって経営を任された会社のターンアラウンドに取り組んだ際のお話だが、容易に経営状態が改善するめどが立たない。売上も伸びずに、なんとか経費削減や財務面での支出の繰り延べに取り組み、換金できる資産は全て換金して、それでも経営の立て直しが見えなかった経験を持つ。

 

元々、大手である大和証券の出身であったこともあり、基礎的なエクイティ(株式)の素養は身に着けていた。そのため、資金調達の方法はデット(銀行借り入れ)だけでなくエクイティにも活路があることは十分に知っている。

 

そして過去、数十億円単位での第三者割当増資による資金調達も成功させていた経験もある。

 

原稿を見ながらマイクの前で話すスーツ姿の人

 

しかし残念ながら、会社の経営が極めて厳しい状況で実施する第三者割当増資による資金調達は、他社の傘下に入ることがまず避けられない選択肢だ。

 

それを素直に受け入れられる経営者であれば、そもそも第三者割当増資など選ばずに、単純に身売りをして事業を畳もうとするだろう。すなわち、素直な形でのエクイティファイナンスを使える方法は無いということだ。

 

この状況で私が最後に採った方法は何だったか。

それは、会社の事業を分割した上で一部を子会社化。

そしてその子会社を売却することでまとまった資金を得て、経営の根本的な立て直しを行おうとする方法だった。大きく言えば「M&Aによる資金調達」と言っても良いだろう。

 

M&Aなんて、とても参考にならないと思われる経営者の方は多いかも知れない。

確かにこの際、私が取り組んだのは10億円規模のディール(取引)であり、街の中小企業になかなか付く売却価額ではなかった。

しかしその後、私は大きなものから小さなものまで数多くのM&Aを経験しているが、もっとも小さなものでは2000万円程度の売却価額のものだ。

年商数億円の事業で、株式会社ですらない街の個人事業主でも十分にありえるディールの規模である。

 

何が言いたいのかというと、M&Aによる資金調達、すなわち事業を売却して資金を捻出することは、実はそれほど特殊な方法でも難しい方法でもないと言うことだ。

それは決して、私が元大手証券会社の社員だったから簡単だと思っているわけではない。

実際に日本では、2000年代に入りスモールM&Aと呼ばれる、数千万円程度のディールが急増してきている。

そしてそのほとんどは、団塊の世代と呼ばれる年齢層の経営者が、後継者を育てることを諦めて会社を売却し、退職金代わりの資金調達に充てたものである。

それほどまでに気軽に、そして簡単に企業や事業は売却できるということだ。

そしてそれは、最後の最後の手段としては、資金調達の有効な手段としても、活用できるということである。

 

この方法を知っているのか知らないのか。

意外に思われるかも知れないがこのことは、経営判断を下す上で一つ、大きな選択肢を持っているのか持っていないのか、ということそのものであり、必ず知っておいて欲しい手法になる。

そしてそれが本当に誰にでも取り組める簡単なものであるという事実もだ。

 

但し、誰にでも取り組むことはできる方法とはイコール、誰にでも十分に使いこなせる方法というわけではない。

やはり、ある程度の基礎知識を持って取り組むことで、その価値を十分に引き出すこともあれば、相手の言い値で売却を余儀なくされることもあり、後から後悔することもあるのがM&Aの偽らざる世界である。

 

そこでこのコラムの目的と、何をお話するために筆を進めているのか、ということだ。

ここでは、私自身が証券マンとして、あるいは経営者として経験した数多くのM&Aを通じて、どのようにすれば中小企業経営者にとって、資金調達の手段としての事業売却を上手く進めることができるのか。

どのようにすれば、損をすることがない納得度の高いディールに取り組むことができるのか。

そんなことを、お話していきたいと考えている。

基本になるお話はCFOとして、年商50億円規模の中堅企業で、ターンアラウンドに取り組んだ際のM&Aが中心になるだろう。

但し、それらの方法は、この規模の会社でしか使えないようなものではなく、エッセンスさえ拾って頂ければ、年商1億円程度の会社でも十分に援用可能なレベルのお話で進めていくつもりだ。

実際の事例として、可能な限り小さなディールのものも含めて、お話していきたいと考えている。

 

やや長文になるかと思うが、本コラムが一人でも多くの経営者にとって新たな選択肢をご提示できるように、経験値に基づいた具体的なお話を進めていきたい。

本稿が、資金繰りに悩み、あるいは広く事業承継の手段としてM&Aを検討している経営者の皆様に僅かでも、お役に立てることがあれば幸いだ。

 

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2. 事業(会社)売却による資金調達の方法と実例

 

具体的なお話を進めていきたい。これからお話するのは、先述のように私が、年商50億円規模のメーカーでCFOをしていた時の実例がメインだ。

 

当時の私の立場は取締役CFO。大手証券会社系のVC(ベンチャーキャピタル)や銀行系のVC、それに事業会社からも出資を受け、IPO(株式の新規上場)を目指していた会社での話だ。

 

当事会社には2つのメインになる事業があり、1つは人材派遣の形態で薄利だが確実に利益が上がるもの。

もう一つがベンチャー要素の強い事業で、先進的な製品を日本で初めて製品化し、マーケットを作りつつあるという状況だった。

 

しかしながら、元々は派遣事業で営々と業歴を積み上げてきた会社だ。

原価管理に通じるものがおらず、いくら製品を作っても利益が出ない。

売上はあるけど利益が出ないという状況にもかかわらず、どこに原因があるのかわからずに経営改善のめどが立たない。

そうこうしているうちに、長年に渡り留保してきた現預金はどんどんと溶け続ける。

私がCFOとして招かれたのは、ちょうどそんな状況だった。

 

まずはこの時点で、世の中の多くのCFOにとっては中小企業あるあるだ。

正直、このレベルで困っているのであればM&Aなどという大それたことまで考える必要はない。

状況に混乱し、狼狽しているかも知れないが、深呼吸をして自分のするべきことをしっかりと見つめ直せば、解決策は必ず見つかる。

 

順を追って話したいので、この段階でまず私がしたことだ。

そしてそれは同時に、世の中の多くの経営者にとって役に立つ知識を提供するものになると思う。

もちろん、そこまで読んで頂いて問題が解決するようなら、M&Aの下りまで読んで頂く必要はない。

 

この状況に際して私が一番に着手したのは、状況の可視化からだ。

月次決算は月末で締めて、集計が終わり役員会の経営資料になるのが翌々月の10日。

つまり、1月の成績が3月10日になってやっと判明するという状況である。

そして3月に、1月の経営状況の反省を行い、翌月以降の行動方針を申し合わせる。

まったくもって意味がない役員会であり、結局何も原因と対策が明らかにならないままに、当月が進行していくという状況だった。

そこでまず着手したのは、月次決算のリアルタイム化だ。

具体的には月次を締めて、10日後には役員会ができるように集計体制を整えた。

 

やや話を前後させるが、実はこの「数字の可視化」自体もM&Aに臨む上で非常に大きな意味を持ち、事業の売却価額の交渉材料になる。

そのため、そういった話の布石になると言う意味でも、注意をしながら読み進めて欲しい。

 

このようなケースでは多くの場合、月次決算を早く締められなくしている大きな要因は、「完璧主義」にある。

つまり

・A事業所の売上結果が届くのは距離の関係でどうしても2週間かかる

・B支店には売掛金が多く確定条件が複雑なので、どうしても半月後でないと正確な数字がわからない

などと言ったような要因だ。

では、これらの要因が会社全体の売上利益の何%を占めているのかと言えば、ほとんどの場合数%であったりする。

仮にこれが15~20%を締めるような数字であったとしても、恐らく前年同期や前月比の数字を仮置きした上で月次を締めれば、全社的な数字の把握には大きな影響を与えない事もほとんどだ。

 

折れ線グラフとペン

 

もちろん、数%の場合であれば、極端に言えば無視しても良い。

特定の事業所や営業所は月次決算の集計から外して、決算の時にだけ締めるという方法をとっても全く問題がない。

少なくとも、全体の数%程度の数字を把握するために全社の経営分析を数ヶ月も滞留させるのは、全くもって不必要な完璧主義という意味である。

もしこのような状況で、「月次決算の即時性が無くて困っている」という会社があれば、今すぐ実利を取って欲しい。

実際にやればわかるが、前年同期比や前月比で数字を仮置きしても、実際の数字に現れる誤差が経営判断に影響を与えるようなことなどほとんどない。

このようにしてまずは、資金繰り(資金調達)を正しく進めるためには、会社の状況を可能な限り、早く把握する努力から着手をして欲しい。

 

次に進めた経営状況の可視化は労務費だ。

正社員が250名、パート・アルバイトを含めると750名という大所帯の会社だったにもかかわらず、タイムカードはアナログ式で、印字するタイプのよくあるものを使っていた。

これは、仮に従業員10名の事業所でも同じ話だが、タイムカードにはコストカット、すなわち資金繰りを改善する多くの答えが詰まっていることが多い。

 

大事なことだが、資金調達と言えば借り入れや資産の売却だけでなく、無駄の切り詰めも十分に立派な資金調達だという発想を持って欲しい。

 

そして、今お話しているケースでは数百名を擁する規模の工場のお話をしているが、これは繰り返すが、10名程度の事業所でも対応するべき原則は、可視化という意味では全く同じだ。

 

そしてやるべきことは、行動を数字に落とすことである。

私がこの際に実施したのは、アナログで印字されていた一人ひとりのタイムカードを全てエクセルに入力し、全員のタイムカードを直近数カ月分、データ化したことだ。

もちろんそんなことは一人ではできないので、間接部門の人員を総動員して3日がかりでやり遂げた。

そして大事なことだが、お金がない会社であったにも関わらずここには僅かな設備投資を行い、タイムカードをパソコンに繋げられるタイプのものにした。

 

なお、無線LANなどで複雑に繋げるようなタイプのものではなく、1ヶ月に1回、タイムカードのところに行ってケーブルでPCを繋ぐタイプのものであれば、このような機器は10万円もせずに購入することができる。

その価格で、数百名程度の従業員の入退出や途中入退出、欠勤などのデータが全てCSVデータで吸い上げられるので、全くもって安い買い物である。

従業員が10名を越えるような事業所であれば、必ず導入する価値があるだろう。

 

では、そのようにして入手したデータをどのように分析していくのか。

問題は何でもそうだが、大きなところから俯瞰することで、小さなエラーを見つけやすくなる。

そのため、全従業員の総労働時間や総就労人数と言ったものを、曜日別や日別に、データ化する。

そしてそれに工場の稼働率、より具体的に把握できるようであれば、生産個数や生産単位と言ったものの数値と重ね合わせると、恐らく非常に興味深いデータが得られるだろう。

なぜならほとんどの場合、適切に労務管理をされていない会社であれば、工場の忙しさ(すなわち生産個数など)と、従業員の総労働時間は一致していないからだ。

 

従業員、とりわけパートやアルバイトが工場で仕事をしたがる原則に少し思いを馳せればわかるのだが、一般に時間で働く労働者は仕事に熱意を持たない。

なぜなら、成果ではなく工場に滞在している時間で給与が決定されるからだ。

つまり、同じ給料であれば楽に稼げる曜日を好み、忙しい曜日を避けたがるに決まっている。

かくして、大して人が必要ない暇な傾向が強い日には就労希望者が集中し、逆に忙しい傾向が強い月末などの集中生産日には、パートやアルバイトが仕事を嫌う。

そしてその穴を、単価が高い正社員が残業代や時間外労働、休日出勤と言った高い単価を使う形で就労することになる。

 

「そんなことは無いだろう」

「いくらなんでも、余剰人員くらい見えている」

と思うかも知れない。

確かに、フロア全てが見渡せるコンビニくらいの大きさで、一度の就労人数が10名以下であれば、誰がどう見ても遊んでいる従業員の状況は把握できる。

しかし、フロアが複数にまたがり、一度に視界に収めることができない広さを持つ工場などで数十名が同時に働くと、断言してもいいが忙しい人間と暇な人間の見極めが非常に困難になる。

もちろん、パートやアルバイトとして働いている人も、あからさまに暇そうな素振りなど見せないので尚更だ。

 

このようにして、同じ生産量であるにかかわらず、工場には半分ほどの人員で生産をしている日と、その倍ほどの人員で生産をしている日などが発生することになる。

そしてこれは、何度も繰り返し断言するが、タイムカードなどで数字に置き換えて可視化しないと、正確に把握することはできない。

かくして、無駄なお金は溶け続け、

「お金が足りない」

「今月の資金繰りどうしよう」

と、経営者は悩むことになる。

 

これは、経営を可視化するべきほんの一部の具体例であり、「経費削減による資金調達」を実現するわかりやすい事例の一つだが、人がたくさん集まって仕事をするところには、このような無駄が山ほど転がっている。

そして、このような問題を解決するだけで、あれほど経営者を悩ませていた資金調達の問題が驚くほど、消し飛ぶことすらあるということだ。

ぜひ、この例はどのような形であっても自社で応用して欲しい。

 

なお、勘のいい人であれば既にお気づきだと思うが、このような会社は事業売却で資金調達をする上で、もっとも大損をする会社だ。

なぜか。

買い手からすれば、労務管理も生産管理もできていないリスクが大きな会社として、当然のことだがその価格交渉ではできるだけリスクを大きく評価して買い叩こうとする。

当たり前だ。その程度のことすらできていない会社であれば、他にどのようなリスクが転がっているのかわかったものじゃない。

 

一方で実は、M&Aに慣れているCFOにとってこの買い物は、ヨダレが出るほどのお買い得物件である。

なぜなら、労務管理や生産管理すらできていない会社であれば、ほんの僅かな投資とテコ入れで、劇的な経営状況の改善が見られる可能性が高いからだ。

売り手側からすれば、もはや何から手を付けていいかわからずに、赤字だから仕方がないと言うことで工場などを不動産価値と同等か、あるいはそれ以下の価格で売却することも余儀なくされる事があるだろう。

しかし、ほんの僅かでも生産管理に通じていれば、事業売却による資金調達では劇的に、事業の評価額が変わることもあるということが、これでよくおわかり頂けるのではないだろうか。

 

なおこの際、私が事業を売却し資金調達に取り組んだのは実は工場の方の事業ではない。

薄利だが確実に利益が上がる派遣事業の方で、そのまとまった資金で工場経営を立て直し、ベンチャー要素の強い会社として改めて、IPOを達成しようと試みたものだ。

 

それでは、工場の経営改善などは派遣事業の売却交渉に影響を与えないではないか、と思われるかも知れないが、それもまた違う。

M&Aの交渉事は、相手の弱いとことを見つけてディスカウントし、また相手が望んでいる目的を見抜いて高値をつける作業の繰り返しでもある。

つまり、会社の資金繰りが苦しければ苦しいほど、早くM&Aを終わらせて現金を手にしたいのだな、という台所事情を見透かされる。

見透かされるだけでなく、実際にやはり、工場の経営状況が悪いままで資金繰りが改善しないとなると、早く別事業のM&Aを完了させて安心したいという心理が交渉にも影響を与えてしまう。

すなわち、M&Aに臨む上ではそれが売却事業であっても無くても、可能な限り会社を健全な状況に近づけ、自社の価値を高める努力をする必要があるということだ。

 

M&A自体が誰でもできる簡単な取り組みであるのかと言えば、結論から言えば誰にでもできる。

もちろん、業種や会社規模、決算の状況等によっては、実際に売れるかどうかまではなんとも言えない。

しかし私自身たまにスモールM&Aマーケットを覗くことがあるが、流通している案件は例えば街の学生服屋さんなどを見かけることも、未だに珍しくない。

言うまでもなく、昭和の頃にはどこの通学や高校にもあった、「制服指定店」のようなお店だ。

一体どのようにして経営を維持しているのか昔から不思議だったが、あのように、夫婦だけで経営し収入源は地域の中学校に指定してもらっているという、ただそれだけの根拠。

しかし生徒も保護者も、そこでしか購入することができずないので、わざわざ足を運ぶお店。

あのような店でも、スモールM&Aマーケットではよく見かけるということだ。

撤退した飲食事業の居抜き跡地なども、良くある話だ。

普通に考えれば、什器備品を現金化してさっさと撤退するのがセオリーだが、いつもスモールM&Aマーケットで見かけるからには、おそらく需要があるのだろう。

 

フリーマーケットアプリのメルカリ上では、トイレットペーパーの芯や空になったペットボトルなども売買されていると聞くが、まさにM&Aにもそれが当てはまる。

時には損切りして撤退することが賢明であることもあるが、それをもったいないと思い、惜しいことするなあと思い横目で見ている人達がいるということだ。

そういった人たちと、売り手を繋ぐのがM&A仲介事業者になる。

とりわけ小さなM&Aを専門に行う会社などは、スモールM&A専業として看板を掲げているところも少なくなく、こう言ったところは税理士事務所が副業で経営していたりすることが多い。

いずれにせよ、売り手候補と買い手候補双方にパイプがある人達が、このマーケットで仲介を営んでいることが多く、彼らの収入のメインは数千万円程度のディール(取引)から上がる手数料である。

 

電卓と人

 

M&Aを仲介する事業者にとっては、ディールを仲介した時に発生する手数料が目当てになるわけだから、なるべく多くの案件を成立させたい。

だからこそ、よほどおかしな会社や反社会的な事業でも無い限り、事業売却で資金調達をしたいという相談を持ちかけて、門前払いをされるようなことはまずありえないだろう。

そのハードルは決して高くないばかりか、正直言って銀行借り入れよりも低いかも知れない。

ぜひ、それが引退する時の退職金として資金を調達するのか。

あるいは資金繰りに困ってなんらかの事業を売却したいという要望があるのか。

どのような動機であっても良いので、まずは身近なスモールM&A仲介事業者に相談してみるとよいだろう。

近年は、団塊の世代の大量引退を受けて、地域の商工会議所などが主催するセミナーでも、定番のネタになっている。

そのため、ツテがないのであればこれら団体に相談をしてもいいし、銀行の担当者と距離感が近いのであれば、銀行も喜んで相談に乗ってくれることが多いだろう。

規模的には、小さな会社であれば地銀クラスの担当者に相談するのが、まずは身近な入り方だ。

そんな形で、まずは選択肢の一つとして気軽に、M&Aの可能性を検討してみて欲しい。

 

では、そのM&Aを進めるにはどれくらいの期間がかかり、またどれくらいのお金も必要になるのか。

正直、興味があってもそれがわからずに二の足を踏んでいる経営者も少なくはないだろう。

次章では、M&Aに必要な費用と時間、それに頼るべき専門家の存在。

その辺りについて詳しく解説していきたい。

 

なお、「急いでお金が必要!」という方には、審査がスピーディーなカードローンの利用がオススメです♪ ネットだけで申し込みでき(スマホや携帯からもOK!)すぐに10万円のお金を借りることが出来るので、お急ぎの方は今すぐこちらの記事をご覧ください。

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3. M&Aの進め方と費用

さて、誰にとっても気になるであろう、M&Aの進め方と費用についてだ。

本稿はおそらく、ほぼテクニカルなことだけに終始したお話になる。

そのため、ややハウツー的な章になるきらいがあるかも知れないが、それぞれの段階で、経営者であれば何に悩みどのようなことを知りたいのか。

私自身の体験に照らし、そのような思いに応える形で筆を進めていきたいのでご容赦頂きたい。

なお話を勧めていく目線は、「売りたい経営者」のものなので、その点だけ、改めて留意して欲しい。

 

 

1.事前段階

まずは売り手と買い手の双方がまだ出会っていない、お互いの存在を知らない段階だ。

この段階でもやるべきことは、いくつかのフェーズに分かれているので順を追って説明していきたい。

 

1-1.パートナー探し

 

最初に、M&Aの成否を直接決めることになる、仲介事業者を選定するフェーズである。

資金調達であっても事業承継であっても、事業や会社を売りたいと考えた場合、やはり自社の規模に応じたM&A仲介会社に相談するのが一番確実な方法になる。

 

なおこの場合、本来であればディール(取引)の規模に応じてそのステージが変わるのだが、その規模は業種や会社の規模によっても変わるために一概には言えない。

そのため、やや乱暴な例えにはなってしまうが、わかりやすさを考えて年商規模で考えてみたい。

 

売却したいと考えている事業や会社の規模が概ね30億円を越えて、経常利益は数億円程度である会社の場合。

これと同等かそれ以上の規模であれば、M&A仲介を専業で行っている大手の上場会社でも十分に扱ってくれる領域になる。

具体的な名前は差し控えるが、「M&A仲介大手 上場企業」などで調べればすぐにヒットするだろう。

 

これらの会社は専門のスタッフを用意し、相手探しから譲渡価額の決済完了まで、責任を持って引き受けてくれる。

いろいろな意味で、必ずしも満足の行く仕事が期待できるわけではないが、まずは利用できるのであれば声を掛けて間違いのない会社だ。

少なくとも、詐欺や乗っ取り、不法行為など余計なリスクを心配する必要はない。

 

しかし、一般にそこまでの事業規模や会社を売却するニーズは、そう多いものではない。

おそらく本稿を参考にしようとしている人も、それ以下の事業である事がほとんどだろう。

この場合、いわゆるスモールM&Aと呼ばれる専業の会社をあてにすることがオススメだ。

2000年代以降、とりわけ2010年代に入ってからはスモールM&Aの数も毎年、うなぎのぼりで増え続けているために、これらの事業に参入した事業者はとても多い。

そのため、「スモールM&A」で検索すれば、恐らく都市圏に近いところにオフィスを構えているのであれば、自社の近くにも複数以上の会社がヒットするはずだ。

仲介会社を見つけること自体は、そう難しいことではないだろう。

ただし、この相手選びには相当に注意を払って欲しい。

なぜなら、一概にスモールM&A専門の仲介と言ってもその経験値には相当なばらつきがあり、また証券会社などのように、事業を営むために直接必要になる免許が存在するわけではなく、業界全体でクオリティが担保されているわけではないからだ。

そのため、会社から近いところ、Webサイトの作り込みがおしゃれで良くできているところ、などという基準では間違っても選ばないで欲しい。

むしろネット上でヒットする情報は、候補が定まった上での補完的な情報収集に使って頂き、パートナー選びには直接使わないことを強くお勧めする。

 

では、スモールM&Aのパートナー候補事業者はどのように見つけ出せばよいのか。

もっとも信頼ができて確実な方法は、取引銀行に相談することだろう。

とりわけ、地方銀行の担当者と距離が近ければ、多くの地方銀行ではスモールM&A仲介事業者にパイプを持っていることが多い。

これには銀行自身の利益が密接に関わっているからだ。

 

先述のように、2000年代以降は団塊の世代が大量に引退を始めた時期にあたるので、事業を廃業するくらいなら僅かでも退職金代わりとして、売却したいというニーズが広く世の中に出現した。

一方で銀行からしてみれば、十分に利益が上がっており、なおかつ技術力や販路がある会社がみすみす廃業する様子などとても見ていられない。

 

法人としても、金持ちの個人としても、上客を一つ失うことになるからだ。

そこで考え出したのが、地域にある他の成長企業の経営者に会社を紹介し、買収してもらうことで事業を存続させるという手段だ。

こうすれば、買い手である企業には一つ色濃い取引関係を作ることができ、場合によっては大きな「恩」を作ることもできる。

また、ものづくりを営む企業に製造業の会社を仲介すれば、すでに稼働している優良な工場を不動産価値とニアリーで提供できるようなお買い得な物件の仲介になることもあるので、買い手にとっての利益も計り知れない。

 

握手をするスーツの男性

 

売り手である会社経営者にとって見れば、信頼できる銀行が仲介事業者を紹介してくれるので、その助言に従って、廃業するしか無いと思っていた会社を売却してお金に換えることができるわけである。

M&Aなどという大それた資金調達など、人生で考えたこともなかった経営者には、その助言に素直に従わない理由はないだろう。

またに、双方にとってWin-Winの解決策となる。

 

一方で、言うまでもないことだがこのディールを成立させることで銀行が手にする利益も非常に大きい。

まず1つには、地域の優良な事業が廃業せずに存続をするわけだから、法人口座を失わずに済む。

また多くの場合、事業の売却資金は銀行が買い手企業に貸し付けるため、ここでも銀行は新たに大きな取引を起こすことができる。

しかもその貸付の担保になるものは、自社が長年に渡り取引をしてきた会社の株式であり企業価値だ。

貸付をしても良いかのリスク判断では、全く困ることはないだろう。

さらに売却価額を受け取った経営者の個人資産だ。

結局、銀行が貸した買収資金は売却側経営者の個人資産となって懐に入り、また銀行の預金口座に戻ってくる。

まさに、銀行は大喜びで仲介をする構図であることがよくおわかりだろう。

だからこそ、地方銀行などは喜んで、スモールM&Aに取り組み、その意志がある会社に信頼できる仲介事業者を紹介するというわけだ。

 

一方で、この段階では一つ大きな注意が必要になる。

それは、引退を前提とした事業承継としての資金調達であればこのディールを素直に相談することに問題はないのだが、資金繰りに困っている時の、資金調達の手段として考えた場合だ。

具体的には例えば、私が50億円程度の年商規模の会社でやった時のように、会社から事業を切り出して子会社化し、その会社を売却しようという取り組みの場合である。

おそらくこのような構造を銀行に素直に、何の前触れもなく相談したら、銀行は飛び上がって驚くだろう。

売却を考えている事業が会社のメイン事業であるならば、下手をしたら融資の回収に走るか、最悪の場合、普通預金口座を凍結されることもあるかも知れない。

当たり前だ。

銀行は今現在の会社と事業の価値を精査して融資を決めているのであり、その一部や主要事業が失われるというのであれば、これは融資の際に締結した契約内容にも反する。

融資の回収や普通預金口座の凍結すらも検討対象になるのは、無理からぬ事であることがおわかり頂けるだろう。

ただ、もはやそこまで資金繰りが悪化しているのであれば、銀行は既にそのことは織り込んでいるかも知れないので、距離感を探りながら相談をするのは一つの手段になるだろう。

いずれにせよ、純粋な資金調達の手段として事業売却(M&A)を活用する際は、銀行との距離感と銀行への情報のディスクローズには相当慎重になる必要があることだけは、覚えておいて欲しい。

 

これ以外に、地域の商工会議所などが主催するセミナーで、講師を務めているスモールM&A事業者の勉強会に参加し、そこから話を聞いてみるのもいいだろう。

一般に、このような組織で講演を委託される会社は、それなりに与信と実績がある会社であることが多い。

また経営母体が税理士事務所であることなども多く、その場合にも一つ与信を判断する上での判断材料になるだろう。

 

このような形で、事業売却による資金調達のパートナー探しを進めて、まずは最初の段階を越えることになる。

 

1-2.マッチング

 

さて、パートナー探しの部分に重きをおいてご説明をしたためにここまで長くなったが、ここからはテンポよく進めていきたい。

パートナーが無事に見つかったら、そこからは要望を伝えて買い手先候補が現れるのを待つばかりだ。

正直、この段階では何一つ努力がない。というより、何をしても仕方がない。ただ、仲介事業者の顔の広さやノウハウに期待して、期待以上の買い手が現れるのを待つことになる。

なおこの段階では、費用を取る仲介事業者はほとんどいないだろう。

近年、仲介事業者は非常に数が増加し、その収益の挙げ方も多様化してきているが、メインになるのはやはりディールが成立した際の仲介手数料だ。

そのため、事前段階で例えば、出会うことを目的としたインターネットサービスのように、買い手先候補の匿名プロフィールを紹介する段階などで、料金を請求するような会社の存在は聞いたことがない。

逆に言うと、そのような費用は対価に見合う効果が疑わしいので、疑問を持つべきだ。

 

最初の段階で必要が発生する可能性があるのは、先方と接触が決まった時になる。

お互いに匿名での会社プロフィールを交換し、それぞれの売却価額・買収予算について予算が合うようであれば、具体的な交渉に入ることになる。

この際に、NDA(秘密保持)契約を締結して初めて、候補先企業の名前を知ることになるのだが、多くの仲介事業者ではこの際に数十万円程度の着手金を要求するのが一般的だ。

大手であればその金額は大きくなるが、スモールM&Aであれば10万円程度が相場だろう。

また、買い手候補からだけ徴収し、売却を希望している会社からは取らない会社も多いなど、このあたりは会社によってそれぞれだ。

いずれにせよ、

・初顔合わせの際に最初の費用がかかることがある

・その金額はそれほど大きなものではない

という程度で覚えておけば十分な知識と言って良い。

 

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2.着手段階

 

お互いの会社紹介が終わり、それぞれの事業内容や買収・売却の金額についてある程度の規模感が一致すると、ここから具体的なディールがスタートすることになる。

実質的なスタートラインと言ってもよく、買い手は売り手の事業や会社を十分に調べ、売り手はそれに誠実に応じて話を勧めていくことになる段階だ。

この段階では、仲介事業者はしっかりと報酬を定めていることが多く、売り手も買い手も、真剣にディールを進めていくことが実質的に求められることになる。

 

あくまでも一つの形ということでご理解を頂きたいが、この際に締結する契約書は「基本合意書」などの名前が付されることが多い。

取引について、基本的に双方が、成立を目指して努力をしていきましょうという約束事だ。

そしてここでももちろん費用がかかることになるが、多くの場合、ディールが成立した際に予想される金額の10%などが設定されていることが多い。

この金額は定額のこともあり、また最近ではこの段階でも費用を徴収しない仲介事業者もあるようだが、個人的には買い手事業者が生半可な気持ちでディールに臨むことを防止する上でも、費用を徴収するべきであろうと考えている。

 

またこの際にかかる費用は、ディールが成立した際には成功報酬の一部に充当するという仲介事業者も多いが、一方でディールが成立しなかった場合でも返却はしないという約束事にしていることも多い。

そしてこの費用は、売り手でも買い手でも、どちらにも課せられるのが一般的だ。

すなわち、事業を売却したいと考えている会社にとっては、予想されるディールの規模が1億円である場合には1000万円程度がかかってくることになる。

仲介事業者によってケースバイケースとは言え、いずれにせよこのフェーズを越えると、安易な気持ちで後戻りだけはできないという段階という覚悟だけは、持ったほうが良いことになる。

 

そして基本合意書を締結すると、買い手企業は様々な調査に本格的に着手をすることになる。

DD(デリューデリジェンス)と呼ばれる工程で、わかりやすい日本語に直せば、事業の精査とでも言えるだろうか。

この段階は大きく2つ、法務DDと財務DDに分けられ、法務DDは多くの場合弁護士が。財務DDは多くの場合公認会計士が担当する。

実施する作業は、買収予定先企業の財務内容が正確に会社の状況を反映しているのかどうかを調べ、バランスシートに記載のある資産の確認はもちろん、そもそも売上や利益は適正に記帳されているのか。

 

売掛金や買掛金に実態はあるのか。

長期貸付金などは本当に回収が可能なのか。

 

工場の土地は取得時の簿価のままで放置されていないか、などを見ていく。

法務DDでは、その会社が締結している契約書に法的リスクは存在しないか。簿外の債務に繋がる恐れがあるような不適当な契約は存在しないか。

あるいは逆に、締結されるべき契約が締結されていないことで簿外債務に繋がる恐れがあるような項目はないか、などが調べられるが、もちろんこれらに限らない。

 

電卓と人

 

なお雇用契約書等はこのもっともわかり易い例で、法律で締結が義務付けられている雇用契約書を結んでいない会社の場合、それだけで残業手当などが既に、積年の簿外債務に繋がっているリスクが有るなどの理由で、評価額を下げられることがある。

資金調達の手段として事業を売却しようとする際には、この辺りの義務もキレイにしておく必要があるということだ。

 

ところで、この際にかかる費用である。

M&Aの際にかかる弁護士費用や公認会計士費用は、一般に数百万円を下回る事はありえない。

どれだけディールの規模が小さい場合でも、500万円以上からとしている事務所もあるなど、非常に多額の資金がかかるフェーズだ。

但し、このDDはよほどの特約や特殊事情がない限り、売り手だけが負担をし、買い手はただその調査に協力をするだけのことが多い。

 

また、スモールM&Aの場合にはこの費用負担に耐えられないことから、あるいはディールの規模に見合わないことから、弁護士ではなく司法書士に。公認会計士ではなく税理士に。それぞれ簡易なDDを依頼するケースも多くなる。

ただその場合、事前に明らかになるリスクが限定的になるので、そのリスクをどちらが負担するのかについて、売り手はしっかりと交渉をしていく必要があるので、留意が必要だ。

わかりやすく言えば、M&Aが終わってから3年後に、

「こんなところで思わぬ瑕疵が見つかった、回復に協力して欲しい」

などと言われた場合、それに対して義務を追う内容にするのか、あるいはより短期間だけの義務に留めるのかなどである。

 

DDそのものは買い手の費用負担で実施されるものの、そこから明らかになる、あるいは明らかにならなかったリスクをどちらが負担するのか。そしてその期間はどれくらいと定めるのか。

これは言うまでもなく、調達した資金をどれだけ留保しておく必要があるのか、といったことに直結するので、売り手側は十分に気をつけなければならない。

 

このようにしてDDを終えたら、最後の段階になる。

 

3.最終交渉段階

 

この段階は、特段の難しい説明は必要ないだろう。

DDで明らかになった事業価値に基づき、最終的な買収・売却価額の交渉をすることになる。

多くの場合、散々に重箱の隅をつつかれて事業価値を減算される結果になることが多いが、スモールM&Aの場合、両社のスムーズな協力関係を築いていくことを目的に、余りゴリゴリした交渉にならないことも多い。

但し、私が経験した10億円規模のディールの場合、そもそも取引相手が一部上場企業であった事もあり、条件の戦わせ合いをゴリゴリ行った。

それは数字だけでなく、数字以外の雇用や人事制度と言ったところにまで及ぶこともある。

あるいは多くの人にとって記憶に新しいかも知れないが、シャープが台湾の企業、鴻海精密工業に売却された際のような交渉である。

いずれにせよ、スモールM&Aの場合そのようなことになることはほぼ無いので、まずは誠実に話を進めていくことを心がければよいだろう。

 

そして、ディールがまとまった際に必要になる費用だ。

これもまた、スモールM&Aから数億円規模のディールまで、仲介事業者によってまちまちであり、一般論として示すことは正直難しい。

ただ、一つの例として良くあるレンジをスモールM&Aで挙げておくと、

2000万円の売却価額の場合・・・300万円~1000万円

5000万円の売却価額の場合・・・500万円~2000万円

1億円の売却価額の場合・・・800万円~2500万円

などの範囲に収まるのがほとんどだ。

なおこの数字では、少ないほうがスモールM&A専業に頼んだ場合。多いほうが、スモールM&Aであるにも関わらず、無理をして大手の仲介事業者に頼んだ場合を想定している。

 

あくまでも一つの事例として、参考にして欲しい。

以上が、M&Aの進め方と必要になる費用についてのお話だ。

 

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4. 自社で本当に活用できるのか

 

さて、ここまでお話してきた事業売却と資金調達の方法についてのコラム。

最後の段落でお話したいのは、本当に自社でも活用できるのか、といったことだ。

結論から言うと、どんな会社であっても事業売却による資金調達には、取り組むことはできる。

しかし、有効に活用するには、やはり壁があるというのが正直なところだ。

では、有効に活用するためにはどのような事に留意をしなければならないのか。

以下、3つの段落でお話していきたい。

 

1.仲介事業者は味方ではない

 

ややショッキングなタイトルを付けさせて頂いたが、これもまた一つ、事業を売却する側であれば覚えておく必要がある事実だ。

但し、1億円以下のようなスモールM&Aでは、このことを肌感覚で感じることはほとんどないだろう。実害も皆無であると言って良い。

スモールM&Aでは、会社の規模が小さく、その後の両社の融和が最大の課題となるため、売り手にとっても買い手にとっても満足度の高いディールに収める必要がるからだ。

 

どちらかにとって、とりわけ売り手にとって不満ばかりが残る結果になったディールの場合、M&Aがまとまっても、その後の会社や事業の引き渡し、事業の融和段階で感情的な理由で仕事が進まないという恐れが出てくる。

そのため、スモールM&Aでは売却価額や売却後のサポートも含めて、仲介事業者は売り手・買い手双方に対し十分なケアを心掛けていることが多い。

 

逆に言うと、その程度のこともできない事業者であれば、安心して体を預けることは止めたほうが良いとも言える。

 

ではどんな時に、仲介事業者が必ずしも味方ではない存在になるのか。

それは、一般にディールの規模が億で言うと二桁を越え10億円あたりを越えてくるような、やや規模の大きな事業売却の場合だ。

一般的に、M&Aにおいては事業の売り手は仲介事業者にとって、1回きりの取引相手になることが多い。

それも当然であり、会社や事業を2回も3回も売るケースというのはまず想定できないからであり、つまり売却側と仲介事業者の付き合いというのは1回きりで終わるのが普通ということだ。

 

一方で、買い手側は少し事情が異なる。

一般にM&Aなどを繰り返し事業を大きくしようとする会社は、自社にとってプラスになるディールであれば積極的に買収に取り組み、事業の成長を図ろうとしていることが多い。

つまり買い手の企業は、仲介事業者にとって繰り返しの顧客になる可能性が高いということだ。

なおかつ、それら企業に繰り返し事業の買収に取り組んでもらうためには、成功だったと言えるような案件を持ち込み、喜んで貰う必要がある。

 

どうにもならないような案件で、仕方なく買収はしてみたが結局のところ大損に終わり、最悪損切りにまで追い込まれてしまうようなディールを仲介してしまえば、下手をすれば出禁になるだろう。

つまり仲介事業者は基本的に、買い手の企業を見て仕事をしているということだ。

優良な案件を好ましい条件で仲介できたなら、繰り返し仕事が貰えるのだから当然である。

 

このような風潮を強く否定する仲介事業者もいるかも知れないが、繰り返しになるがスモールM&Aを専業に行う会社であれば確かに、総合的にみた買い手の利益に繋がらないので、双方にとってバランスの良いディールに落とそうと努力する事が多い。

しかしながら大手のM&A仲介事業者の場合、個人的な経験では何度も、買い手の企業側に立ちディールをまとめようとする担当者にイラつき、ケンカになることが多かった。

その姿勢は露骨に買い手企業に寄ったもので、行事役を期待できるものではなく、むしろ最初から、仲介事業者も交渉相手の一人であると認識したほうが恐らく仕事が進めやすいことになるだろう。

このことはぜひ、大きな注意点として覚えておいて欲しい。

 

では具体的に、どのような不利益誘導を受けることが多いのか。

そのことについても少しだけ、お話しておきたい。

細かな交渉の誘導であるとか、「一般的な相場」として例示される数字など、ありがちであっても個人の感想に過ぎないレベルのことは、参考になりそうにないので省略させて頂きたい。

その最たるものとして挙げられるものはやはり、「先任仲介条項」だろう。

 

先任仲介条項とは、M&Aにおいて仲介事業者が、ほぼ100%要求してくる契約上の特別な約束だ。

簡単に言うと、自社が仲介に乗り出したら、その間に他の仲介事業者はもちろん、他の会社との事業売却交渉を禁じる特約である。

つまり事業や会社の売り手側は、仲介事業者が連れてくる会社の言いなりになり会社を調べられ査定されて、その結果を示されて最終買収額の提示を受けるというプロセスを受け入れざるを得ないということだ。

この過程に足りないもの。それは価格交渉である。

 

もちろん価格交渉は、最後の条件が提示された際にできないことではない。

しかし一般的に言って、事業を売りたい側は買いたい側に比べ追い詰められていることが多い。

だから事業売却によって資金調達をしようとしているわけだから、当たり前だ。

そのため最初から、一方的に強い立場と一方的に弱い立場が、1対1の価額交渉を強いられることになるのである。

このような状況はフェアではない。

ではどうすればいいのか。

それは、可能であれば先任仲介条項を受け入れず、複数の会社によるビット、つまり競争入札方式を採用して事業を売却することである。

 

一般的に、どうしても売りたいという売り手に対して、どうしても買いたいという買い手が複数現れれば、確実に交渉は対等の土俵になる。

もちろん、売却価額そのものは1対1の時に比べ大きく上乗せになることが多い。

考えても見て欲しい。

先に例示したシャープと鴻海精密工業の事例でもそうだったが、このM&Aにおいては最後まで、鴻海と日本の産業革新機構が激しく条件を戦わせて、条件の上積みを繰り返した。

そしてその競り合いの結果として、シャープの売却条件は飛躍的に良くなり、株主たちはセカンドベストな結果を得ることに成功している。

 

このようなことから考えても、そもそもM&Aが先任仲介で行われるという前提がおかしい。

普通はビットで行われてしかるべきだ。

一般人がレアアイテムを売却する時でさえ、ヤフオクで競争入札を行える時代に、1対1の条件で価格交渉を強いられるのは余程特殊な事情がない限り、納得できるものではない。

しかし、多くのM&A仲介事業者は最初から、

「M&Aは先任仲介で行うのが常識です」

「先任仲介を呑んで頂けないのであれば仲介できません」

と、それがさも常識であるかのように説明する。

 

そして、当然のことながら人生で最初で最後のM&Aに臨む経営者は、

「まあ、プロが言うのだからそういうもんだろう」

と、深く考えずにこの条件を受け入れ、かくしてM&Aはいきなり、売り手側に大きなディスアドバンテージを背負わせた状態からスタートすることになる。

 

正直に言えば、先任仲介条項には全くメリットが無いというわけではない。

ただし、それによって生じるデメリットが無視できないということだ。

この構図については、それを受け入れるかどうかはともかくとして、知識として必ず、記憶の片隅にでも置いておいて頂ければ幸いだ。

 

但しスモールM&Aの場合、そもそも仮に先任仲介条項を拒否したところで、複数の買い手企業が現れる可能性が極めて低いという現実が、一方ではある。

規模が小さく、また事業がありふれたものであればあるほど、その傾向は高くなるだろう。

また先述のように、スモールM&Aにおいて仲介事業者は、売り手・買い手双方の満足度を最大化することに留意する傾向が強くなるので、そう言った意味でも無理に、先任仲介条項を外させる意味は薄くなる事が多い。

あるいはここで、大した根拠もなく無理な交渉をしたら、それこそ余計な不利益を誘導される可能性すらあるだろう。

 

大きなディールの場合には注意してほしいが、1億円を切るようなスモールM&Aの場合には、それほど神経質にまでなる必要はないということだ。

そう言った位置づけの知識として、しかし大事なポイントなので、留意して貰えれば幸いだ。

 

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2.事業の整理と可能な限りの下準備

 

これも、事業売却による資金調達を進める上で大事になってくる心掛けだ。

先にさっと触れた部分ではあるが、買い手企業によるDD(デューデリジェンス)が始まってから多くの指摘事項が溢れ出て、また工場の生産管理は全くできていない状態が明るみになる。

リアルタイムで月次決算すら把握できていない。上がってくる数字はそもそも正確なのかもわからない、という状況が買い手によって明らかにされれば、やはり交渉は不利になることは避けようがなくなる。

 

しかも買い手は、事業が整理されていないことからリスクを無限定に評価し買収価額を引き下げる交渉をするが、その実では僅かなテコ入れで数字が改善する手応えを感じていることも多く、知らぬうちに損をすることも多い。

それであれば最初から、可能な限りの経営状況の可視化と整理に務め、ある程度の状況がきれいに把握できる状態を作って置かない理由など無いだろう。

もちろん、そのような整理を行う過程でそもそも、経営状態が改善されて評価額が上る可能性もあるのだから、ますます取り組まない理由はない。

 

また、古い付き合いだった経営者に貸しっぱなしで、既に回収不可能なことが確実な長期貸付金なども、予め消し込むことが大事であろう。

他にありがちなのは、ゴルフ会員権や細かなものでは電話加入権などの、既に無価値であるにも関わらず資産として計上されているものである。

こういったものも、「こんな簡単なものが整理できてないのであれば、他に何があるかわからない」などの理由で、無意味に交渉を不利にする材料になりかねないものだ。

 

事業売却によるM&Aを有効に使いこなす上で、事前準備と事業の整理は必須になることを、強く意識して欲しい。

 

電卓を使っている手

 

3.良い相談相手を確保すること

 

やはり、人生で最初の経験であることが多く、また最後の経験になる可能性が高い事業の売却だ。

そう言った意味では、最初であるがゆえにしっかりと取り組めない、後から思えばこうしておけば良かったという後悔が走ることも珍しくないだろう。

そういうリスクを僅かでも減らすためには、この際ある程度の費用を負担してでも、M&Aに通じたアドアイザーを確保するなどして、客観的な意見を聞き続けることを強くお勧めしたい。

スモールM&Aでディールの規模が小さな場合であれば、たとえ顧問税理士でも良いので何か少しでも迷うことがあればまずは相談し、考えを整理することだ。

 

とはいえ、顧問税理士がさすがに、M&Aに通じていることはそう多くない。

しかし、相談をするという行為そのものが経営者の考えをまとめ、納得度の高いディールに繋がるきっかけになるものだ。

もちろん、数字の専門家として税理士が、思わぬアドバイスをくれることもある。

決して独善的に考えずに、話を進めようということだ。

あてにならないネットの知識ばかりを求めるようなことはせずに、周囲に存在する頼れる人間からの客観的な意見を求めることも、忘れないようにしよう。

 

これもまた、事業売却による資金調達を成功させる上で、大事になる考え方の一つだ。

 

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5. まとめ

 

長文にお付き合いを頂いたが結局のところ、事業売却による資金調達では、表面的なテクニックでリカバリーできることはそれほど多いというわけではないこともまた、一つの真理だ。

本稿に興味を持って読み進めて頂いた方にとって、事業売却による資金調達が切羽詰ったものであれば、きっと差し迫った問題に焦りは募るばかりだろう。

 

だがそう言った時にこそ、どうか呼吸を整えて、まずは足元の整理から着手することを強くお勧めしたい。

焦りばかりが先行する事業売却は、結局あらゆる観点から上手く行かずに、失敗する可能性が高くなるからだ。

下手をしたら現状をさらに悪化させることにもなりかねないので、冷静に取り組んで欲しい。

 

また事業承継の手段として事業を売却し資金を得ようという経営者であれば、1にも2にも、良いパートナー(仲介事業者)を見つけることが、唯一と言っても良いほどの、成功の秘訣だ。

余りテクニックに走ることを意識せずに、自然体で臨んでもらえれば幸いだ。

 

いずれにせよ、M&Aというとどうしても難しいもので大企業の領域で行われているものだと、恐らく多くの人が思っているだろう。

しかし事業を売却すること、そこから経営に必要な資金を得ることや引退後の生活資金を得ることは何も難しいことではない。

むしろますます、スモールM&Aマーケットは拡大を続け、多くの経営者にとって有力な選択肢の一つになっていくはずだ。

日常では、特段意識する必要がある手法ではないだろう。

しかし、非日常の時には、あるいは必要になる局面が発生するかも知れない手法ということだ。

その時に備え、一人でも多くの経営者の知恵として、本稿がお役に立てれば、幸いだ。

 

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大学卒業後、証券会社に勤務。その後、縁あってIPOを目指す製造業やサービス業、IT業の会社でCFOを務め、資本政策や資金調達など財務畑の責任者を担当してきました。 その間、買い手・売り手の双方で繰り返しM&Aや事業承継を主導し、また債権の係争で訴訟に訴えるなど、財務とリーガルに関する法務的な立ち回りも求められ、一定程度の総務・法務の現場経験有り。 その後独立を経て、現在は記事ライティングや専門知識の提供を行い活動しています。

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